「青春舞台2012 もしイタ ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の『イタコ』を呼んだら」

テレビ(ドキュメンタリー&演劇)「青春舞台2012」語り:貫地谷しほり
2012年9月29日(土)15時~17時放送・鑑賞 NHK Eテレ

2012年8月8日から12日まで富山県で開催された「第36回 全国高等学校総合文化祭」のなかの演劇大会の模様を二部構成で放送する番組。去年の大会もこのブログで取り上げて感想を書いたことがある。あれから早くも一年か。

前半の一時間はドキュメンタリー。全国大会に出場する12校の演目の簡単な紹介、およびそのうちの2校を取り上げていかなる悪戦苦闘の末に作品が出来上がったか、を密着取材したもの。
2校というのは、岐阜県立岐阜農林高等学校と大阪府の大谷高等学校である。
岐阜県立岐阜農林高等学校の作品は、「掌(たなごこころ) ~あした卒業式」。農業高校ならではの内容で興味を惹かれる。東日本大震災も重要なモチーフ。主役を演じる部長で三年生の福富朝希(ふくとみ あさき)さんの練習する姿をカメラが追いかける。純粋無垢な美少女の福富さんは将来女優を目指しているのだという。一生懸命な努力家のようなので夢がかなえられればいいな、と思う。
大阪府の大谷高等学校は、「はみーご!」という作品。去年は「逝ったり生きたり」で大会の優秀賞を得ている。去年の番組でもドキュメンタリー部分で練習風景が取り上げられたので今回は二度目。部長で二年生の高田若菜さんや同じく二年生の大岩本琴美さんも顔に見覚えがある。去年の作品の主役。美少女は忘れない。一年たって後輩もできたが、それでも一年生と二年生合わせてわずか五人の少人数(中等部はいくらか人がいるが)。
今回の作品は、高田さん、大岩本さん、それに同じく二年生の都倉美貴さんと一年生の山本美優さんの四人による学園ドラマで、クラスからはみだされてしまった女の子たちの話。
合宿までして猛練習するのだが、どうしても二年生と一年生のコンビネーションがうまくいかない。その辺の苦労をカメラがとらえている。
両校の様子はかなり時間を費やして描かれ、観る方も感動し、応援したくなる。ところがここまで盛り上げておいて肝心の作品はほんのちょっぴりダイジェストで数シーン映されるのみ。こりゃあありえないよ。番組構成上おかしんじゃないか。メイキングを見せて期待を煽っておいて本編は見せません、というのは不合理だろう。
特に大谷高等学校は、去年もドキュメンタリー部分で取り上げておきながら、「逝ったり生きたり」を見せなかったので二年連続である。ダイジェスト版があるということは本編も丸ごと撮影している可能性があるので是非何かの機会に「逝ったり生きたり」と今回の「はみーご!」は放送してほしい。もちろん、「掌 ~あした卒業式」もやってほしい。

で、番組の後半の一時間は、この大会で最優秀賞を獲得した作品をまるごと放送する時間である。受賞作品は、青森県立青森中央高等学校の「もしイタ ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の『イタコ』を呼んだら」。
前半のドキュメンタリー部分ではまったく取り上げられなかった学校の作品だが、作品的にはやっぱり圧倒的に面白い。去年あたりから話題にはなっていたものだが、期待以上の出来栄えである。いかに判官びいきといえどもこれほどのものを見せられては納得だ。超高校級演劇というべきで、いますぐドラマや映画にしても問題ない。
この作品の作者は、高校の教師であり、プロの劇作家であり、演劇ユニット「渡辺源四郎商店」の主宰である畑澤聖悟。青森県立青森中央高等学校のホームページを見ると演劇部の「顧問」となっている。
ちなみに畑澤聖悟作・演出の「渡辺源四郎商店」の作品では、「背中から40分」をこまばアゴラ劇場で6年前に観ている。山内健司、森内美由紀ほかの出演。
今回の作品は、アイデアは奇想天外で面白いし、ストーリー展開もベタなところと意表を突くところがともにうまくかみ合って一時間の上演時間を全く飽きさせない。だが、この作品の良さはそういうところにあるのではない。
この作品では、一切の舞台装置、小道具を使わない。照明や音響もない。役に合った衣装もなく、みんな同じようなTシャツ姿。
舞台上にあるのはただ人間のみ。青森県立青森中央高等学校演劇部の二十数人の肉体のみ。
彼らが様々な役を演じ、効果音もBGMもすべて自ら作り出し、実に変幻自在な演劇を見せてくれる。変幻自在ではあるが、これこそが演劇の原初の姿ではないかと痛感させられる。
先にドラマや映画にしても問題ない、と書いたが確かに問題ないし面白いものもできるだろうが、同時にゴテゴテと余分なものがくっついたものになってしまう気がしてきた。
今回、テレビで観た、というのが唯一悔やまれることである。やはりこれは生の舞台で観てこそその本質的な魅力を享受できるものではないか。テレビでも十分面白いし感動したがそれでもこれは別物だろう。

面白おかしいストーリーに東日本大震災の話題を組み込んでくることにいささかのあざとさも感じるが、逆に考えれば今の時点で東北の高校演劇で震災を取り上げない方が不自然か。

出演者全員好演だけど特に主人公の女の子を演じた須田栞さん(三年生)が可愛くて演技も上手い。スマイレージの竹内朱莉(たけうち あかり)にちょっと似ているような気がする。


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