「NHKスペシャル 水玉の女王 草間彌生の全力疾走」 宇宙に果てはあるのか

テレビ(ドキュメンタリー)「NHKスペシャル 水玉の女王 草間彌生の全力疾走」制作:NHKエンタープライズ 制作・著作:NHK ホームルーム 語り:吹石一恵 ディレクター:松本貴子
2012年9月28日(金)22時~22時50分放送・鑑賞 NHK総合テレビ

草間彌生、83歳。職業、前衛芸術家。

このところNHKでは、高倉健(80歳)や山田洋次(81歳)といった80歳を超えてなお現役で仕事をしている「表現者」を取り上げたドキュメンタリーを放送している。そこにいかなる意図があるのかわからないが、後世に残す貴重な資料になることは間違いない。
番組を観る一視聴者としては、こういう高年齢者がいまだに矍鑠として活動していることに勇気づけられることもあるし、その個性的な生き方に魅了させられることもある。
ただ、今回取り上げられた草間彌生に関しては個性的にもほどがある特異な人なので、「勇気をもらった」とか「その生き方を尊敬する」といった紋切型の美辞麗句がまったく通用しないところが実に興味深い。

壮絶な人生である。長い間、精神病と付き合いながらひたすら絵を描き続けた人生。誰も真似できない、真似しようと思わない、いやそれどころか理解することもできない。
番組では、草間彌生を「前衛芸術家」と呼ぶ。美術家でも絵描きでもない。もう古くてカビが生えそうな「前衛」という言葉が不思議にピッタリ似合っている。

1960年代、ニューヨークでハプニングと呼ばれる前衛的芸術活動によって注目されるが、同時に激しい誹謗中傷、罵詈雑言を浴びせられる。その後、日本に帰国するが、そこでもさらに倍増した罵詈雑言にさらされる。
そこで終わってしまったら、単に一時期、世間を騒がせた奇を衒った「自称芸術家」だったろうが、見事に復活する。というか、本人よりも周りが変わったというべきか。
この番組を観ていると、83歳の今が草間彌生の絶頂期であると思われる。描く絵はことごとく高値で売れ、世界巡回する美術展も開かれる。かつて、失意のうちに立ち去らねばならなかったニューヨークでも大歓迎される。
「長生きも芸のうち」という言葉は本当なのだと思う。

前衛芸術がその作品のみならず、それを生み出した前衛芸術家ともどもビジネスになるというのも時代の皮肉である。単に絵を売るということにとどまらず、ファッションブランドと提携し、バッグなどの商品にも草間彌生の水玉模様が用いられるという。
全裸の男女に水玉を描いていたハプニングの時代と遠く離れたようにも見えるし、案外いまの展開こそがハプニングの実践なのかもしれない。
草間彌生は、芸術一筋なのかと思ったら、ここでの発言を聞いているとちゃんとしたビジネスの感覚を持っているし、そのビジネスの成功が自分の芸術を自分の死後に残すことにつながることも熟知している。頭のいい人である。

頭がいいことと精神病はまた別の話で、草間彌生は40年近く精神科に通い、精神科の病室で寝起きしているという。日常的には、精神科の病室と外にある自分のアトリエの二か所を行き来する生活だそうだ。
病室の本棚におかれた本がとても興味深かった。83歳でこういう本を読んでいるんだ!という驚きもあった。
全部は書ききれないが目についたタイトルを書いておこう。

「宇宙に果てはあるか」
「見えない宇宙」
「ホーキング 宇宙の始まりと終わり」
「ブラックホールを見つけた男」
「素粒子の宴」
「がん患者」
「死ぬ準備」
「ガン免疫力」
「生き方の選択」
「マンモグラフィってなに?」
「不整脈はこれで治せ!」
「95歳へ!」
「関係する女 所有する男」
「宇宙は本当にひとつなのか」
「山本五十六」
「妻を看取る日」
「宇宙への秘密の鍵」
「栄養と料理 特集 脳梗塞を防ぐ」
「ゴーマニズム宣言 新天皇論」

健康に関する本と宇宙物理学の本が同居しているなかで「山本五十六」と「ゴーマニズム宣言 新天皇論」が異彩を放っている。83歳にしてこの知的好奇心には恐れ入った。




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