「いかしたバンドのいる街で ナイトメアズ&ドリームスケープスⅠ」

小説(短編集)「いかしたバンドのいる街で ナイトメア&ドリームスケープス」NIGHTMARES&DREAMSCAPES 1994年 アメリカ スティーヴン・キング著 永井淳他訳 文藝春秋 2000年2月10日第1刷 
2012年8月26日(日)読了

スティーヴン・キングの短編集「ナイトメア&ドリームスケープス」の前半部分を本にしたもの。11編収録。二段組み358ページというボリュームだが、面白く読むことが出来た。「ナイト・フライヤー」「ポプシー」「スニーカー」は、雑誌やアンソロジーで既読だったが、再読に耐えうる面白さだった。

「ドランのキャデラック」(小尾芙佐訳)
妻をギャングのボスに殺された小学校教師がボスに復讐する話。ありきたりの話ではあるけれど、主人公の執念と用意周到な復讐計画の一部始終がよく描かれ、臨場感があって読ませる作品。広大な土地を持つアメリカならではの話ともいえるし、「本当にそんなにうまくいくかな?」という疑問も湧くのだがそれでも面白い。

「争いが終わるとき」(永井淳訳)
いつになっても犯罪や戦争の絶えない人間たちを変えようとした天才の実験が、人類絶滅につながっていくという実に皮肉な内容の作品。某有名作も彷彿とさせるあたりもキングの遊び心が感じられる。ただ、ある部分は物議を醸すかもしれない。珍作にして怪作。

「幼子よ、われに来たれ」(小尾芙佐訳)
ある日、小学校の女性教師は一人の男子生徒の顔が何かに変わるのを見てしまう。そしてそれはその子一人だけではなかったのだ。
子供=モンスターという話はホラーでは人気のある話だが、これも面白かった。本当にモンスターなのかそれとも教師の妄想だったのか、余韻を残すオチも上手い。

「ナイト・フライヤー」(浅倉久志訳)
セスナ機に乗って犠牲者狩りに赴く吸血鬼というアイディアが秀逸。
あと、このくだりが好き。

「ぼんやりと心のなかで思った━おれが見ているのは吸血鬼の立小便だ。」(138ページ)

吸血鬼は鏡に映らない。だから男性用小便器に血のように赤い小便が放出されることだけが見えるだけだ。
よくまあ、こんな変なことを考えるものだ。ただ、これが笑いを誘うのではなく、怖い。傑作。
映画化されているが残念ながら未見。小便のところどうなってるかな。

「ポプシー」(山田順子訳)
こちらも吸血鬼もの。「ナイト・フライヤー」の吸血鬼と同一人物(同一怪物)か?
翻訳文のラスト七行の情景描写の美しさと怖さは絶品。この話は映像化されていないが、ここは記憶力の悪い私でも文章だけで鮮明に脳内映像化されている。名作。

「丘の上の屋敷」(白石朗訳)
ホラーを期待するといささか外される作品。それでもいかにもキングにしか書けない作品。キングの「序」によるとこの短編集で最も古いものだそうだ。

「チャタリー・ティース」(永井淳訳)
タイトルのチャタリー・ティースとは訳注によれば、「ぜんまい仕掛けでカタカタ動く歯のおもちゃ」だそうである。そういえばそんなおもちゃ見たことがあるな。で、そのおもちゃが襲ってくるという話。キングに手にかかるとなんでもホラーのネタになっちゃうのには感心する。

「献辞」(吉野美恵子訳)
母親の息子への愛を描いた感動編ともとれるけど、なんかキングお得意の下ネタ話で下世話な感じがぬぐえない。これはあまり好きじゃない。

「動く指」(永井淳訳)

「洗面台の排水孔から一本の指が突きでていた。
人間の指が。」(254ページ)

今度は指。誰のものとも知れない指が突然現れて襲い掛かってくるという荒唐無稽な話。キングって何でもアリだな。ただ、指が襲ってくるというのは結構古典的アイディアではあるけどね。「ゲゲゲの鬼太郎」にもあったし、モーパッサンにもあった気がする。ただ、キングの場合は指が長い。

「それは今や長さが優に七フィートにも達し、しかもまだ長くなりつづけていた。」(274ページ)

笑えると同時に怖い。今後、洗面台を見るたびに指が排水孔から出てこないか、気になりそうだ。傑作。

「スニーカー」(吉野美恵子訳)
トイレ怪談。男性用トイレの個室に古ぼけたスニーカーがあり、それにはハエの死骸が重なっている、という話。
内容的には、恨みを残して死んで成仏しきれない亡霊という極めて古典的な怪談。
トイレっていうのも結構怪談によく出てくる場所ではあるのだけど、あえて気にせずに自分流の話に持っていくところはキングならでは。

「いかしたバンドのいる街で」(白石朗訳)
自動車で旅行中にとんでもない街に着いちゃいました!というのは、作中にも出てくるように「トワイライトゾーン」(「ミステリーゾーン」)を当然ながら思い出させて新鮮味がないのだが、この作品の不幸な主人公カップルがたどり着いたのは、その名も「ロックンロール・ヘヴン」という街で、そこにはとうの昔に亡くなったロックンロールの歌手たちが住んでいるのだ。この辺はいかにもキングらしい悪乗りぶり。いいのかなあ、実在した歌手を実名でこんな風にホラーに出演させちゃって。遺族が怒らないのかな。
ちなみにロックンロール・ヘヴンの町長は、エルヴィス・プレスリー。
珍作。
いかしたバンドのいる街で―ナイトメアズ&ドリームスケープス〈1〉
文藝春秋
スティーヴン キング

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by いかしたバンドのいる街で―ナイトメアズ&ドリームスケープス〈1〉 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック