ディズニー・レアリティーズ 短編傑作選 限定保存版」 萌えの原点

DVD(アニメ映画)「ディズニー・レアリティーズ 短編傑作選」1923年~1962年 アメリカ 製作:ウォルト・ディズニー 
DVD仕様:二枚組 本編324分 映像特典 日本語字幕版 日本語吹き替え版(一部)
2012年6月3日(日)鑑賞

1923年から1962年までに公開されたディズニーの短編アニメ31編を収録したDVD。なんと324分というヴォリュームである。さすがに一気には観られなかったので数日かけて観た。
有名人気キャラのミッキーマウスやドナルドダックもの、あるいは「シリー・シンフォニー」シリーズなどは含まれずそれ以外の作品から選ばれている。それでも残り物という感じはしなくて非常にヴァラエティに富んだ作品群になっている。これを観るだけでもディズニーの凄さがよくわかる。
簡単に個々の作品の感想を書いておこう。まずは二枚組DVDのディスク1から。

1「アリスの不思議の国」(1923年)
ディズニー・プロの記念すべき第1作。正確に言うとディズニーが地元にいるときに手がけて未完に終わっていた作品をハリウッド進出を機に完成に漕ぎつけたいわくつきの作品。
主人公のアリスは実写。それをアニメと合成させるという手法で今観ると陳腐に思えるし、絵も稚拙だが、下手なりに一生懸命やっているのは伝わる。まだこのへんの作品は、ウォルト・ディズニー自身がアニメーターをやっていたころのものであるので貴重と言える。
少女アリスを演じるヴァージニア・デイヴィスのかわいさが何と言っても一番の魅力。アリスが、アニメスタジオを訪問してアニメーターのおじさんたちにいろいろお話を聞く、というのも多分に身内ネタだが、好感が持てる。
その日の夜、夢でアリスはマンガの国に行き、そこでライオンに襲わる、とストーリーは単純だが、むしろその単純さが面白い。

2「アリスズ・ワイルド・ウエスト・ショー」(1924年)
ヴァージニア・ディヴィスのかわいさをより一層打ち出した作品。カウボーイスタイルの彼女は、西部劇ショーの花形役者アリス。それを見物するのは、同い年くらいの少年少女たち。その中に悪ガキどもがいてショーの邪魔をするのに対して敢然として立ち向かうアリス。ついにはガキ大将と取っ組み合いのけんかの末やっつける。この辺りは実写で描かれている。ただかわいいだけではなく、戦う強い女の子というキャラ設定が上手い。
アニメ部分は、実写アリスを合成させ、西部での活躍を描く。襲来するインディアンをバンバン殺しちゃったり、金庫泥棒との銃撃戦があったりとここでも戦うアリスが見られる。アリスが葉巻をくわえていたりするのは今だと「教育上よろしくない」とクレームが付きそう。
この「アリス・コメディ」シリーズは、56本も作られたそうでディズニー最初のヒット作と言っていい。その主役がアニメキャラではなく実写の女の子だというのはのちのディズニーを思えば皮肉な話である。いま観ると一種の「萌えアニメ」に見えてしまうというのも皮肉。
何となく、ヘンリー・ダーガーの残した作品に似た感触がある。少女のイラストなどをいろんなところから持ってきて張り合わせ合成させたダーガーのやり方とアニメの中に実際の少女をあてはめ合成させたディズニーとのやり方。ダーガーはこの「アリス・コメディ」を観ているかもしれない。

3「アリス・ゲッツ・イン・ダッチ」(1924年)
授業中に女の先生に怒られたアリスは居眠りをして夢を見る。夢の中で鬼のような先生にアリスは宣戦を布告する。ここでもやんちゃな女の子アリスが見られる。

4「アリスズ・エッグ・プラント」(1925年)
アリスは養鶏場の経営者。猫のジュリアスは管理人。ある日、養鶏場に外部から一羽の鶏が潜入し、メンドリたちを扇動してストライキを行うように仕向ける。その結果、メンドリたちは卵を産むことをボイコットする。困ったアリスは、ある奇策で卵をゲットすることを思いつくのだが・・・。
子供向けアニメに「組合」だの「ストライキ」だのが出てくるというのが実に奇異に思える。いかにも反共主義者ディズニーらしいとも言えるが、アニメのネタに窮して時事ネタを持ってきただけかもしれない。謎の潜入鶏が、ロシア、モスクワと書かれた鞄を持ってたりするところはいかにもである。
この作品の16年後、他ならぬディズニー・プロでストライキが決行されるのを思うとこの作品はずいぶん皮肉なものに写る。ウォルトもアニメーターたちもまさか自分たちが当事者になろうとは夢にも思わなかったに違いない。
アリス役は、ヴァージニア・デイヴィスが降板し、別の女の子になっている。この後も何人か交代していく。てこ入れなのかジュリアスという猫のアニメキャラが登場するがさほど個性的ではない。

5「アリス・イン・ザ・ジャングル」(1925年)
タイトル通りアリスがジャングルでさまざまな動物と遭遇する。絵がまだまだ稚拙。デフォルメというと聞こえがいいが、動物が下手すぎる。話もさして面白くない。ただラストで象に風船をつけたら象が空中に浮かび、耳を羽ばたいて空を飛ぶというシーンがあり、「あっ」と思った。「ダンボ」の原型ではないか。

6「アリスズ・ミステリアス・ミステリー」(1926年)
犬の学校にいた犬たちが何者かに誘拐される事件が勃発、探偵アリスと助手のジュリアスは捜査に乗り出し、意外な真相にたどり着く。なんと犬たちはソーセージ工場の地下に監禁され、次々にソーセージにされようとしていたのだ。
ダークなユーモア炸裂の一編。犬をソーセージにするという発想がなんとも極悪。実際に処理室に入れられた犬がソーセージになって運び出されるというシーンもあり。アニメだからできる話である。
後年のディズニー・アニメ「三匹の子ぶた」における「パパはソーセージ」というギャグの原型か。

7「アリス・ザ・ホエーラー」(1927年)
アリス・コメディ末期の作品。何代目のアリスかわからないが、もうこの辺りになるとアリスはアニメの本筋とは関係なくただ踊っているだけみたいなことになっている。明らかに作り手のヴォルテージが下がっている。
今見れば捕鯨船を舞台にしているところが歴史的価値があるが話はほとんどない。厨房で下働きするネズミキャラが目立つ程度でアニメとしても面白くない。
以上、「アリス・コメディ」7編収録。すべてモノクロでサイレント(無声)で音楽つき。
アニメの技術的に見れば拙いところは多々あれど、いろいろな工夫がされていて飽きさせない。若きディズニーの情熱が詰まっている。
56編すべて観たくなった。



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