「南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで━特殊用途愛玩人形の戦後史」

ノンフィクション(ラブドール)「南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで━特殊愛玩人形の戦後史」2008年 高月靖著 パジリコ株式会社 2008年4月26日初版第1刷発行 2008年6月10日初版第2刷発行
2012年5月26日(土)読了

南極観測隊のための特殊用途人形、「南極1号」は実在したか?
ダッチワイフ開発に賭けた男たちが挑んだもうひとつのプロジェクトX。綿密な取材により、その進化と変遷をあますことなく描いた異色のノンフィクション。(帯より)

タイトルに心惹かれて買ってみた。
「南極1号」という言葉に秘められたいかがわしさと甘酸っぱさ・・・。
そういえば私はいつ、「南極1号」という言葉を知ったのだろう。ずいぶん遠い昔から知っていたような、それでいてそれが実在するものなのかただの噂に過ぎないのか、調べようとする気がなかった。だが、ついにこの本を読むことによってすべての謎が解決する日がやってきたのだ。
読んでみた。
謎は一部しか解決しなかった、というか実に曖昧にお茶を濁された感じ。
そもそも、この200ページ余の本の中で「南極1号」関連の文章はわずか4ページにすぎない。しかも、

「結論からいってしまえば、公式に認められていないが実在を裏づける当事者の証言がいくつか残されている。」(26ページより引用)

とあって関係者の書いた本や雑誌の記事が示されるだけ。そういう特殊用途人形は存在したようだが、それは現場では「ベンテンさん」と呼ばれていて、あいにく誰も利用しなかったという。それがどうして「南極1号」と世間で呼ばれるようになったのかはまでは掘り下げられていない。うーん、こんなものなのか。なんとなくガッカリ。
ガッカリついでに言うとタイトルにある「戦後史」も割合大雑把で冒頭の30ページほどの分量しかない。ダッチワイフが登場したマンガ(手塚治虫「やけっぱちのマリア」ほか)や映画の紹介もあっさりおしまい。

でも、このあとの170ページのほうがじつは著者が力を入れているところなのである。帯にある「ダッチワイフ開発に賭けた男たちが挑んだもうひとつのプロジェクトX」というキャッチコピーが実に的確に表現している。そう、これはエロい期待を胸にして読むと当てが外れるが、未知の分野に果敢に挑戦した人たちの姿に胸を熱くして読むべき感動編なのだ。

ダッチワイフというとどうしてもかつて岩谷テンホーが4コママンガで描いていたような空気式のビニール製のものを思い出してしまうが、今は進化してラブドールと呼ばれる新しい人形たちの時代になっている。そのへんが、「素材革命 ━風船からシリコンへ」という章で詳しく書かれていて勉強になる。ラブドールの素材だけとってもシリコン、ソフトビニール、ウレタン、等ありそれぞれの製造工程も長所短所も違い、実に興味深い。
さらに次の「開発者の苦闘と喜び」では、業界の代表的な会社4社を取り上げ、それぞれの会社の試行錯誤、悪戦苦闘の様子を当事者へのインタビューという形で自ら語らせている。ここがこの本で一番読みごたえがある。
つくづく思うけど、日本の製造業者の創意工夫というものは本当に世界に誇れるものだ。
ちなみに4社とは、オリエント工業、ハルミデザインズ、4woods、LEVEL-Dである。この本は4年前の出版のものなので今はどうかな、と検索してみたら4社ともホームページを見る限り健在の様子、というか4年の間にラブドールたちはさらに成長しているように見受けられた。

私も製造業の一員なのでジャンルは違えど製造業の苦労のほどは実感としてよくわかる。

ラブドールの強度の問題があり、ラブドールの下半身に穴が二つ開けられないというのは初めて知った。つまり、ヴァギナを作ってしまうとアナルが作れないということになる。その辺のジレンマ。
同様に口もいろいろ難しいようだ。ずっと開けっ放しだと昔のダッチワイフのようで滑稽だが、閉じれば当然ながら「挿入」できない。これもジレンマ。苦労は尽きない。

それにしてもラブドールのヴァギナが規制によりリアルに作れないというのは驚き。子供が使うものではなく大人が使うものものなのだから、お上がそこまで関与してくるのは本当にどうかと思う。

私はラブドールを買ったことがないし使用したこともない。ただ、以前「裏モノナイト」というイベント(新宿ロフトプラスワン)を見に行ったら、ゲストでラブドールを持ってきた人がいて間近で見て触らせてもらうことができた。かわいかった、そして肌が柔らかかった。ちなみにその人はラブドールを車椅子に乗せて街を散策してさまざまなところでラブドールを撮影するのが趣味の人だった。イベントではそれらの映像が公開されていて、ラブドールが町によく馴染んでいたのが印象的。

この本の巻頭のカラーグラビアのラブドールの写真が凄い。ここまで作れるというのが凄い。何人かのラブドールはまるで生きてるみたい。どこか儚くさびしげな表情の子もいて抱きしめてあげたくなる。彼女は自分が人形だと知っているからこんなにさびしげなのだろうか。
先にも書いたように現在のより成長した彼女たちはホームページで見ることができる。
アニメキャラは2次元、アイドルの女の子は3次元、ではラブドールは何次元なのだろうか。

タイトルにはいささか裏切られたが、ラブドールへの理解が深まり、愛情が芽生えるきっかけとなったのでこの本はとても素晴らしい本だと思いました、ありがとう。

南極1号伝説
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ダッチワイフからラブドールまで 高月靖 バジリコ発行年月:2008年04月 ページ数:205p サイ


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