「FBI捜査官 証言:これがアメリカの犯罪最前線だ!」 謎のヒマワリの種

ノンフィクション(犯罪)「FBI捜査官 証言:これがアメリカの犯罪最前線だ!」ON THE EDGE 1992年 ウィリアム・E・オライリ著 貞元国勝訳 光文社 1992年12月20日初版第1刷発行
2012年5月17日(木)読了

「FBI捜査官」というタイトルに惹かれて買って読んでみた。
なかなか面白い本ではあるが、このタイトルはいささか正確さを欠く。全部で300ページの本なのであるが、前半の150ページが著者のロス市警の警官時代の話で残り150ページがFBI捜査官時代の話になっている。比重は半々、面白さはタイトルと裏腹に警官時代のほうが勝っているのが皮肉なことだ。
著者のウィリアム・E・オライリは、プロの作家ではなく、訳者の貞元国勝に勧められて書いたのがこの本だということが「訳者あとがき」に書かれていた。日本主導の企画で出版もアメリカ版よりも早く日本版が出たそうである。
ちょっと珍しいケースだと思う。
そのような経緯があるので訳者も気合が入っているのはわかるのだが、訳文をかなりくだけた調子で書いているところが見受けられいささか辟易する。11ページなんかはよく意味が通らない文章になっている。
第四章の小見出しに、「ロス版“阿部定”事件」とあるのだが、本文には一言も阿部定なんて出てこない。要するの男のペニスを女が切断したというだけの事件でそれを阿部定と銘打つのはかなりセンスが悪い。
訳者や編集者がいろいろ頭を絞って読者の興味を引こうと悪戦苦闘しているのは理解できるのだが、残念ながらあまりうまくいっていない。
まあ、そういう気に入らないところはあるのだが、中身のほうは結構いろいろなエピソードが詰まっていて飽きずに楽しく読むことができる。

第一部 ロス市警時代(1966年~1970年)
ロス市警のなかでも犯罪多発地域に配属された新米警官であるオライリが目撃したり体験したことがおよそ日本では考えられないことばかりで衝撃的であり、面白い。ここに出てくるような事件は映画だけのことかと思ったら現実にあることなんだと再認識できる。
ハンバーガー屋の主人は、制服警官たちにただで食事を提供する。何故か。警官が店で食事していれば犯罪者もおいそれとは店を襲えないから。抑止効果である。もちろん、これは立派な賄賂だ。
銃撃戦で一人の警官が射殺され、犯人も死んだ。だが、警官たちは犯人の死体に向けて何発もの銃弾を撃ち込む「儀式」を行う。著者は、その行為を「暗黙の了解事項」と言い、「インスタント報復」と言う。(49ページ)これも明らかなる違法行為、警官としてあるまじき逸脱した行動である。退職後とはいえこういうことを書いていいのかと他人事ながら心配になる。

著者はパトロール警官から犯罪科学研究所の爆発物処理班に転属になる。そこで彼は、あの有名なチャールズ・マンソン事件とロバート・ケネディ暗殺事件と関わりを持つことになる。
前者は、シャロン・テート殺害の現場検証を担当している。さらにマンソンたちの秘密のアジトも訪れている。そこで出会った一人の少女のエピソードが興味深い。少女はその十年後、ジェラルド・フォード大統領暗殺未遂事件を引き起こすこととなる。
後者では、事件後ではなく事件前に現場を訪れている。爆弾処理班としてホテルに爆弾が仕掛けられていないか調べるために。爆弾はなかった。だが、皮肉なことにそのホテルで銃によってロバート・ケネディは暗殺されてしまう。それは著者の前をロバート・ケネディが通り過ぎて行った数秒後だった。

第二部 FBI時代(1970年~1988年)
爆弾処理にかかわったことに目をつけられFBIからヘッドハンティングされ捜査官になった時代の話。第一部よりは面白くない。まあ、それは当然なのである。パトロール警官や爆弾処理班といった直接犯罪者と対峙し、命懸けの戦いを強いられる立場と違ってFBIのほうは案外地味である。身分を隠しての犯罪組織への潜入捜査、国際的詐欺団を摘発するための各国との交渉、等々。即断即決の警察の仕事とは真逆で、長い期間がかかるものが多い。そこで面白くない、と評したのだが、言葉を言い換えよう。面白さの質が違う、と。これはこれでじっくり描けば結構いけるものになる話である。第一部と比較してしまうのがいけないのだ。
マフィアを裏切り、FBIのスパイになった男カクタス・ジャック。彼のおかげでマフィアの幹部が捕まった。だが、マフィアそのものはなくなりはしない。カクタス・ジャックはまだマフィアと付き合い続けているという。この複雑な男を描いたくだりが心に残る。

著者は、自動車の中で監視したり、ホテルで待機したりするときにヒマワリの種を食べるのが好きなようで何度かそういう描写がある。(238、240、247ページ)
なぜ、ヒマワリ?

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