「ウォルト・ディズニー ━創造と冒険の生涯━」 妄想の王国

評伝「ウォルト・ディズニー ━創造と冒険の生涯━」WALT DISNEY:AN AMERICAN ORIGINAL 1976年 アメリカ ボブ・トマス著 玉置悦子 能登路雅子訳 講談社 1983年1月25日第1刷発行 1992年9月30日第6刷発行
2012年5月13日(日)読了

「闇の王子ディズニー」「私のパパ ウォルト・ディズニー」に続いて3冊目のウォルト・ディズニーの伝記を読んだ。
「ディズニーはFBIのスパイだった!」と大風呂敷を広げながら具体的事実に乏しくて胡散臭く信憑性に欠けた「闇の王子ディズニー」、ディズニーの娘が書いてもいないのに娘の一人称で書いて成りすまし、しかも巻頭でその事実をばらしてしまうことにより胡散臭く信憑性に欠けた「私のパパ ウォルト・ディズニー」に比べるとこれはディズニー社公認のお墨付きであり、変なハッタリも装飾もなくある程度安心して読める。
ディズニー側の取材拒否にあって内部資料に近づけなかった「闇の王子ディズニー」と違ってこちらはディズニー側の協力のもと内部資料、関係者のインタビューからウォルト・ディズニーの私信までも駆使しているので中身の充実度が高い。
もっとも、「公認」ということは、ディズニー側に都合の悪いことは書けないということになり、いかにもディズニー寄りのきれいごとに終始していると危惧される。事実、そういうところは見受けられるのだが、意外にもディズニーのダークサイドのも結構踏み込んでいるのである。それは日本人である私とアメリカ人の感覚に違いがあり、あちらはダークサイドとは思っていないのかもしれない。
しかし、「公認」伝記でウォルト・ディズニーの精神病歴を明かしていいのかね。重篤ではないにしても。あるいは、彼が保守的で反共主義者であると何度か本の中で強調しているのは問題にはならないのか。他の人ならともかく、世界中の子供たちに夢を与え続けるウォルト・ディズニーなのに。まあ、いいと判断したからこういう本ができたのだろうが。
1941年のストライキもウォルト・ディズニーの対応にも誤りがあったときちんと書いてある。その辺は割合好感をもって読むことができた。

同じ人物の伝記を3冊も読むと当然ながらダブるエピソードも多い。「その話、知ってるよ」といいたい気分になる。その本が悪いのではないが。
3冊に共通するのが、いかにディズニー社が経営難であったかの、お金の話。アニメ作りがどれだけ金がかかるかを3冊でいやというほど知ることができた。とりわけ、今回読んだ本は一番具体的な事実が詳細に書かれていて非常に説得力がある。
「白雪姫」が大ヒット、「ファンタジア」は大コケ。戦争中は他の映画会社が空前の売り上げをあげている中、ディズニーのみ大赤字。戦後も「シンデレラ」はヒットしたが、「ふしぎの国のアリス」は批評的にも興行的にも惨敗。そのほか、主だったアニメ、映画の製作費と興業の成否がみんな書いてあって面白く読める。
もうひとつ、3冊読んでみて感じるのは、ウォルト・ディズニーの個人的な交友関係への言及の少なさである。何十年もハリウッドで仕事と生活をしていながら、俳優や監督といった人たちとのエピソードがまるでない。ましてや女性がらみの艶っぽい話など望む方が無理か。一応、批判的スタンスの「闇の王子ディズニー」にもほとんど見当たらない。人づきあいが苦手だったようだ。
プライベート関連のエピソードでは、鉄道オタクだったことが目を惹いた。あまりに好きすぎて自宅敷地に鉄道を敷き、列車を走らせたというのだからすさまじくもどこか微笑ましい。ディズニーという人が好きになる。
人づきあいが苦手で鉄道オタクでしかもアニメの仕事しているってもう絵にかいたような典型的人物である。

この本は、ディズニーの仕事について一番詳しく書いている。そう、ディズニーの仕事というのが外部からはよくわからないのである。脚本や監督にクレジットされているわけではないし、第一、アニメーターですらない。(注1)どんなことをやっているのかがこの本を読むとそれなりにつかめる。あくまでもそれなりではあるが。
つまりすべてを統括し、いろんなところに口出しして指示を与え、叱咤激励し、何かいいアイディアを捻出する、という仕事らしい。うーん、わかったようなわからないような・・・。

30年もの間、経済的苦難と闘ってきたディズニー社が戦後、テレビへの進出およびディズニーランドの開業によってやっと成功を収める、というサクセス・ストーリーも興味深いのだが、経営を度外視しても理想(妄想?)の王国ディズニーランドを作り上げることに執着したウォルト・ディズニーの姿に素直に感動する。確かに後にも先にもこんなことをやった人はいない。驚くべき人物である。

他にもたくさん興味深いところはあるのだが感想はこのへんで。

(注1)ウォルト・ディズニーのアニメーターとしての仕事は、ディズニー・スタジオ創設からわずか半年くらいで永遠におしまいになったようだ。1924年5月末、初期のアニメ「アリスコメディー」のころでウォルトは23歳。従って1928年生まれのミッキーマウスはウォルトが描いたものではない。同僚のアブ・アイワークスが描いたのである。この本には、ご丁寧にもミッキーマウスを描くアブ・アイワークスの姿を収めた写真が載っている。
ただ、ミッキーマウスのモデルはウォルトのようだ。初期ミッキーと若きウォルトの顔がよく似ている。
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