「死体を探せ! バーチャル・リアリティ時代の死体」 謎のアルバイト

評論「死体を探せ! バーチャル・リアリティ時代の死体」1993年 布施英利著 法蔵館 1993年7月15日初版第1刷発行 1993年9月30日初版第3刷発行
2012年4月30日(月)読了

布施英利(ふせ ひでと)の本を読むのは初めて。19年前に出版された本。
冒頭に、

「私は医学部の解剖学教室で助手をしている。」(5ページ)

とあり、そのあと、「死体洗いのアルバイトはないか?」という問い合わせの電話があったというエピソードを紹介する。昔から噂される「謎のアルバイト」なのだが、著者は、

「はっきりいって、そのようなアルバイトはない。いま募集していないだけではなく、これまで一度もなかったし、これからもない。」(6ページ)

と完全に否定している。そして、この噂の源泉は、大江健三郎の小説「死者の奢り」か、植原和郎(人類学者)の著書「骨を読む」だろうと推察している。「死者の奢り」は有名だし、私も読んだことはあるが、後者のほうは初めて知った。

日常的に死体と密接にかかわっている職業への興味で読み始めたのだが、上記のような文学作品や美術、映画などへの言及も多く、楽しく読める本になっている。

「解剖とは、肉体労働なのだ。
臭い(におい)との戦いもある。」(16ページ)

25ページに写真が載っているプラスティネーションという死体標本が衝撃的。人体の輪切り状態なのである。

美術に関しては、「レオナルド・ダ・ヴィンチはなぜ死体解剖をしたのか」という章が面白かった。

「レオナルドのまなざしは、冷たい。それは「画家」と「解剖学者」の目を同時に持ってしまった者のみが見ることのできる、冷たい美の世界だ。」(66ページ)

こういう視点からダ・ヴィンチの絵を論じたものを読んだことがなかったので目から鱗だ。

映画では、ピーター・グリーナウェイの「ZOO」と「コックと泥棒、その妻と愛人」、デビッド・クローネンバーグの「戦慄の絆」が大きく取り上げられている。
本の後半になるにつれ、具体的・現実的な死体より、バーチャル・リアリティの中の死体に話が傾いてしまうのはユニークだが、もっと著者の実体験も読みたかったところだ。
それでもこれは非常に面白い本であった。

「ところで余談だが、ヒトの首(動物でもよいが)を切り落とすのに、大きな斧やノコギリなどなしに、小さなメス一本で間にあうのはご存じだろうか。(中略)解剖学的な構造を頭にいれて作業すれば、メス一本で、腕力などほとんど使わずに、首から頭部を切り離すことができる。メスの動きは、皮膚を傷つけたり、毛を剃ったりするだけではない。首も手首も、小さなメス一本で切り落とせるのだ。」(92ページ)
機会があったら試してみようか。いやいや、やはりこういうのは専門家にお任せしておこう。



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