「自衛隊だけが撮った0311~そこにある命を救いたい~」 これが実態だ 

テレビ(ドキュメンタリー)「自衛隊だけが撮った0311~そこにある命を救いたい~」制作・著作:フジテレビ 構成:田代裕 総合演出:吉澤健一 ナレーション:遠藤憲一 協力:防衛省 統合幕僚監部 海上自衛隊 陸上自衛隊 航空自衛隊
2012年3月9日(金)21時~22時52分放送・鑑賞 フジテレビ

東日本大震災における自衛隊の活動を克明に追ったドキュメンタリー。傑作である。
二時間枠を使って大々的に自衛隊をとりあげる、こういう番組は意外に珍しい。どうしても右の人とか左の人とかからいろいろ注文がつくことが予想されるので作るのが難しいのだろう。今回のものも如何様にも捉えて批判したりすることが可能ではあるが、私は別に右でも左でもないのでただ単純に面白く観た。
再現ドラマの挿入の仕方などに多少の不満があるが、それらは些細なことだ。

エンドクレジットで「協力」として防衛省を始めとして各自衛隊の名前が並んでいるが、このドキュメンタリーは決して自衛隊におもねって美辞麗句を並べ立て礼賛したものではない。むしろ自衛隊がよくこういう内容のものに協力したな、と思わせる部分もある。その辺の自衛隊の懐の深さがさすがである。

2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災発生。
まずそのとき東北地方の自衛隊基地はどのような事態に遭遇したかが生々しい映像で捉えられている。自衛隊自らがこういう映像を記録としてたくさん残していることが凄い。しかも決してそれらの映像が自衛隊にとって名誉なものばかりではないのだ。
航空自衛隊・松島基地では地震により非常用電源を含む全電源喪失、無線も使えず孤立する。さらに津波により航空機やヘリなど28機水没してしまう。隊員は避難した屋上からなすすべもなくその様子を見ているしかなかった。
陸上自衛隊・多賀城駐屯地では地震直後、災害派遣のための準備を進めていたが、津波の到来により災害派遣車両や乗用車約400台が水没してしまう。事前の被害想定では津波が駐屯地まで来ないはずだった。
情報は錯綜し司令部は大混乱という様子もきちんと映像に記録されている。
有事の際に最も頼りになるはずの自衛隊がこんなふうな事態に陥ってしまったというのは、いかに未曽有の災害であったかがよく分かる。
そして、ここでも想定外、である。一般人も政府も自衛隊までもが想定外だった。まさか津波がこれほどの猛威をふるうとは誰も考えなかった。あとになって色々と批判する人もいるが、もうこれはどうしようもないことだろう。人間の想像力には限界がある。そして、最悪の事態はだれしも考えたくない。いま、盛んに取りざたされている首都直下地震がもし起きたら、また誰も考えもしなかった想定外の事態が起きるに違いない。

基地が壊滅的被害を受けたのをきちんと公表している自衛隊の姿勢は素晴らしい。まあ、厳しくいえば、国民の税金から捻出された金で買った車両やヘリなどを喪失してしまった責任があるのだから公表は当然ではあるが、自らの失敗を出来るだけ隠蔽しようとする個人や組織も多いだけにこれは評価できる。
右からも左からもこの件で自衛隊批判が上がったという記憶もないのでこれはこれでいいのだろう。もっとも、次はこうならないための対策は当然必要だが。
津波被害に対応する救助のための備品が圧倒的に不足していて隊員たちが自費で購入していた、なんてのは美談でもなんでもない。こういうところにもっと金と知恵をつぎ込まなければいけない。

このドキュメンタリーの構成が上手いのは、このようにまず前半で自衛隊の苦境を見せておいて、それから奮起して災害救助に向かう姿を描いているところである。まるで良く出来たハリウッド映画のようだ。
災害救助のさまざまなエピソードが被災者の証言も交えて語られるのが実に感動的である。特に自らも津波に巻き込まれながらも二人の被災者を助けた隊員の話、屋上にいる500人を夜間に救出した隊員たちの話などが心に残る。、
ただ、ハリウッド映画的な爽快感はない。これだけ多くの人が亡くなり、また行方不明になっているのだからとうていハッピーエンドにはなりえない。どこかやるせない。

また、原発事故関連のエピソードになると、さらにやるせない。こちらも現在もなお進行中の危険事態であるからだ。
ここでは自衛隊による放水作業が描かれているのだが、作業を計画した人々と現場の人々の齟齬もあり、どうにも混乱の極みといったところが映し出される。これも自衛隊の大成功と言い難いのによくこうやってテレビでやったものだと思う。
ところどころに入っている若い自衛隊員の肉声が意外にざっくばらんでいかにも今時の若者らしいのが微笑ましい。どうも謹厳実直というイメージが強い自衛隊員だが、やっぱり素は普通の人の感性の持ち主なのだ。なんとなく安心する。

クライマックスは、原発から3キロ圏内の無人の街に隊員たちが入って様子を映したエピソード。非常に不謹慎ではあるが、これまたハリウッド映画の破滅ものを思い起こさせるシーンがいくつも見られる。
壊されたATM、倒壊した建物、ひび割れた道路、飢えてさまよう犬たち、群れをなし田畑をかける牛たち・・・。
極めつけは隊員が死んだ馬だと勘違いしたが、実は衰弱死した牛であった、というシーンだ。恐ろしい。

ラストは隊員が埋めたひまわりの種が実を結び、見事なひまわりの花が咲いた、というところで終わる。心いやされるささやかだが良いシーンだ。

ナレーションの遠藤憲一も絶品。惚れ惚れする。

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