「ジェンダーの神話 [性差の科学]の偏見とトリック」 科学者のヒマつぶし

評論「ジェンダーの神話 [性差の科学]の偏見とトリック」MYTH OF GENDER 1985年 アメリカ アン・ファウスト・スターリング著 池上千寿子 根岸悦子訳 工作舎 1990年5月10日発行
2012年3月20日(火)読了

性差というものを研究した科学が今までいかなる偏見と誤謬に満ちた「神話」を生み出してきたか、を厳しく追及した本である。科学用語が頻出していささか難しいところもあるが、題材が興味深いのでなかなか面白く読むことができた。著者は結構怒り心頭という感じなのだが、ユーモアを交えてその怒りを抑えているように思える。また、訳文が「です、ます」調なので幾分かは柔らかく読みやすくなっている。

著者は、大学の生物学・医学部の教授であるが、同時に1950年代以来の公民権、反戦(ベトナム)、ウイメンズ・リブ運動に参加した政治的活動家だと自ら名乗っている(24ページ)。いわゆる筋金いりの左翼といったところだし、フェミニズムの信奉者でもある。その辺を堂々と表明している潔さはアッパレ。
とはいえ、ここで取り上げられていることは、とりあえずはイデオロギーの問題ではない。もっと単純な話。
科学者たち(の一部?)が、いかに科学的でもなく客観的でもなく、先入観からくる思い込みに囚われてとんでもない間違いに嵌り込んでいたか(いるか)を具体的に個人名を挙げてその研究に対して異議を唱えている。もちろん、その科学者が男だろうが女だろうが容赦はない。

「男と女とでちがう特性を探し求め、人間の脳のすみずみ、姿かたち、大きさと角度などを測るのは、一世紀以上も続いている科学者たちのヒマつぶしです。」(63ページ)

このくだりを読んでいたのは電車の中だったが、思わず人目をはばからず笑ってしまった。

女性のほうが知性において男性よりも劣る。
もう既にこれが決めつけなのだが、そこから科学者は考えをめぐらす。

「まずは、男の脳は女の脳より大きいことを発見、女の知性が劣るのは脳が小さいためだと結論しました。しかし、この論理は、「ゾウの問題」につきあたります。もし、脳のサイズが決め手なら、ゾウとクジラに軍配があがるはず。そこで、脳のサイズを体重で割り、この体重比がきわめて重要だとうまくかわそうとしたものの、この測定では女性のほうが「優位」になることが分かり、ご破算。」(63ページ)

話は脳だけにとどまらず、遺伝子やホルモンについての話になり、月経前症候群や強姦といったところまで取り上げられる。そのいずれもが実に刺激的で面白くためになる話である。
科学者たちの間違いをただ上げつらっているだけではなく、どうすればそのような間違いに嵌らないようにすればいいのか、をも示唆してくれる。

それにしても、人間について、あるいは男について、女について分かっていないことがいまだにたくさんあるものなのだ、ということがよく分かった。


ジェンダーの神話―「性差の科学」の偏見とトリック
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