「ハヤカワミステリマガジン 2012年2月号」 アジア・ミステリへの招待

雑誌「ハヤカワミステリマガジン 2012年2月号」早川書房 2011年12月24日(土)発売 2011年12月25日(日)購入 くまざわ書店アリオ西新井3F 定価920円
2012年1月4日(水)読了

この前、「SFマガジン」全ページ読破というのをやってみたら、案外楽しかったので今度は「ミステリマガジン」を久しぶりに買ってきて、全ページ隅から隅まで読んでみた。今さらだけど、本当の雑誌名は「ミステリマガジン」じゃなくて「ハヤカワミステリマガジン」なんだな。気付かなかったな。ちなみに「SFマガジン」も正確には、「S▶Fマガジン」だということを知らなかった。やっぱり雑誌は隅から隅まで最初から最後まで一字一句見逃さずに読まなければいけないな。

今号のメインの特集は「アジア・ミステリへの招待」で93ページにわたっている。雑誌全体の約3分の1。こちらの方面については、全く無知なので初めて知ることばかりで非常に興味深い特集であった。
[資料と研究]と[アジア各国ミステリ事情]で各国のミステリの歴史と現状、および日本語で読めるミステリの紹介とが、非常に分かりやすくまとめられていて勉強になる。日本のミステリがアジアにどのような影響を及ぼしたかも理解できる。アニメ・マンガ・アイドルなどの所謂オタク文化が日本からアジアに波及したか、というのは過去に読んだことはあるが、ミステリに関してというのは本当に珍しい。

「なお、二十世紀末から二十一世紀初頭にかけては、『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』が東アジア中を席捲したということも注記しておく。中国や台湾ではこれらに影響を受けた推理作家が誕生し、韓国では金田一少年の人気がその後の金田一耕助ブームにつながるという逆転現象も起こっている。」(16ページ)

評論に加えて、[短篇競作]として各国の実作3作が掲載されている。
インドは、サニー・シンの「待つ人」。インド・パキスタン戦争において捕虜にされ、戦争が終わって30年たっても捕虜収容所に入れられたままの軍人とその帰りをひたすら待つ妻の話。いまの日本人から見れば特異としか言いようがない設定が興味深い。ただ、ミステリ要素はあまりない。
タイは、ミトラン・ソマスンドゥルムの「計算機」。タイのバンコクで開かれている国際暗算競技大会に出場するはずの男が失踪し、その男を探すように依頼された探偵「わたし」がバンコクの街を駆け巡る。
探偵ものの王道である「人探し」を題材にし、名前のない「わたし」が時に軽口をたたきながら、時に推理を働かせながら行動する、という毎度お馴染みのパターンだが、やっぱり舞台がバンコクというのが変っていていい味出している。誰かが殺される、といった物騒な展開もなく、割とのんびり楽しめる。なかなかの傑作。この作者の他の作品も読んでみたい。
韓国は、ソン・シウの「親友」。男出入りの激しい女が殺され、彼女と交際していたと思しき男二人が浮かぶが手掛かりがない。そこで警察は、女の飼っていた犬をその男二人と対面させ、犬がどちらに反応を示すか試そうとする。
アイデアはなかなか面白い。犬にふたりのうちどちらが女と交際していたか「証言」させる、というのは愉快。ラストのオチも軍隊のある国である韓国らしいオチになっていて上手い。ただ、全体をその犬のかかりつけの獣医の視点から語っているのが失敗で上手くいっていない。

特集以外では、
トマス・H・クック「彼女がくれたもの」が傑作。主人公の男が、夜のバーで出会った見知らぬ女は、危険な女だった。彼女の誘われて、家までついていった男は、彼女から意外なことを告げられる。
エロティシズムとロマンティシズムに満ちた妖しい作品。実に怖いのだが、こんなことを体験してみたい気もする。
スティーヴ・ハミルトン「四人目の空席」もなかなか面白い。ゴルフ場で起きた殺人をめぐる男たちのささやかなやり取り。登場人物がみんな「悪」なのがいい。

「今月の書評」では、「特捜部Q キジ殺し」と「シンドロームE」と「転落少女と36の必読書」が読んでみたくなった。
「迷宮解体新書」では、相沢沙呼という作家が取り上げられている。インタビューを読んでいるとこの作家への関心が増し、作品が読みたくなる。「午前零時のサンドリヨン」と「ロートケプシェン、こっちにおいで」か。覚えておこう。


ミステリマガジン 2012年 02月号 [雑誌]
早川書房
2011-12-24

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