「相棒 元日スペシャル シーズン10 第10話 ピエロ」 小さな僕の革命

テレビドラマ「相棒 元日スペシャル シーズン10 第10話 ピエロ」脚本:太田愛 監督:和泉聖治 出演:水谷豊 及川光博 斎藤工 遠藤雄弥 大橋のぞみ 吉田栄作 目黒祐樹 川原和久 大谷亮介 山中崇史 六角精児 山西惇 片桐竜次 小野了
2012年1月1日(月)21時~23時30分放送・鑑賞 テレビ朝日

傑作。いまの日本に漂うある種の空気を巧みに作品世界に取り入れて見応えのある話になっている。ひとむかし前なら「社会派」と謳われていたであろうが、頭でっかちにならず、エンターテインメントとしても面白く出来ているところがいかにも現代の作品である。

いま、発売中の「SFマガジン2012年2月号」に載っている十文字青の「小さな僕の革命」と共通するものを感じた。閉塞したいまの日本の状況を打破するためにネットを利用した「革命」を企てる若者の話だ。もっとも、革命といっても単なるネット上の「祭り」で終わるしょぼいレベルなのだが、そこに思わぬ便乗犯が現れる、という展開が面白くなかなかの傑作であった。

このドラマでは、草壁(吉田栄作)という男が出て来る。自衛隊のエリートであったが、周囲との齟齬をきたし、組織に限界を感じ自衛隊を辞め、外人部隊に加わり各地を転々として来た男だ。いかにも典型的なキャラではあるが、元トレンディ俳優の吉田栄作に演じさせているのがズバリ嵌っている。どこか爽やかな好青年の面影をいまだ持ちつつも挫折して頑なな思想を抱くようになった暗い影を持つ男にまさに適役。「マネーの虎」で資本主義の弱肉強食な一面を見過ぎたのもその暗さの原因だろう。
草壁は理想家、もしくは妄想家である。国を愛するあまり、現在の日本の状況に苛立ち、決起した男である。それは大いに評価されるべきなのだが、悲しいかな理想(妄想)を実現するための現実的行動が、あまりにも理想(妄想)と乖離している。国家および国民に対しての声明文を出すためにまず、幼児・児童の乗ったバスを乗っ取り、彼らを拉致監禁するとは何事か。子供を盾にとっちゃいけない。一番、国民の支持を得られない方法である。
また、残念ながら人望もない。集めた同士というか部下にあっさり寝首を掻かれる始末。指揮官として軍人としては、失格だ。
憂国の士であっても愚かなものは生き残れない、というシビアさがいい。外人部隊のつわものが、素人同然の連中にやられるという意外性も上手い。

もうひとり、速水(斎藤工)という男がいる。一応、草壁の指揮下で動いていた男だが、草壁とは全く違う思想を持ち草壁を利用し、さらに草壁の計画を書き変えるのである。このちょっと得体の知れない男を斎藤工が好演している。この人が時折見せるダークな側面がたっぷり見られて嬉しい。ただ、この速水という男の本当の目的が明かされるあたりになるとやや腰砕け。斎藤工が悪いわけではないが、「犯罪者にも事情あり」という話のもっていきかたはどうも感心しない。ちょっと「泣かせ」がはいるのもなんだかなあ、という感じ。
草壁とは違う理想を速水は抱いていた、と対比させる狙いなのだろうが、どうせなら、速水を何の目的もなく理想もない空っぽの男にした方がテーマがくっきりと出たのではないか。

ストーリー的には、二転三転する展開で飽きさせないし、細部もよく考えられている。ただ、日本でテロリストもしくは犯罪集団による犯罪行為を描くとどうしても絵空事になりがちで、このドラマもその例外ではない。アメリカの「24」とか「ダイ・ハード」に比べるといかにも作りもので、しかもしょぼいという感じが拭えない。まあ、そのしょぼさがいかにもいまの日本らしいともいえるが。日本のドラマとしては精いっぱい頑張っているほうだとは思う。
杉下右京(水谷豊)がちゃんと捜査して犯人の動機を推測し、その心情も汲み取ってあげる親切さも日本ならではだろう。ジャック・バウアーだったら、幼児・児童を拉致監禁した悪人など何の躊躇もなくぶち殺しているに違いない。(ドラマのジャンルが違うか)。
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