「キルトの家 前編「初めての人たち」」 何という長い間、僕らは魂の話をしなかったのだろう

テレビドラマ「キルトの家 前編「はじめての人たち」」脚本:山田太一 本木一博 出演:山﨑努 杏 三浦貴大 織本順吉 佐々木すみ江 正司歌江 緑魔子 北村聡一朗 上田耕一 根岸季衣 品川徹 新井浩文 余貴美子 松坂慶子
2012年1月28日(土)21時~22時15分放送・鑑賞 NHK総合テレビ

山田太一脚本による新作テレビドラマ。まだ前編だけなので詳しい感想は来週の後編を待ってからにしたいと思うが、とりあえずいくつか心に浮かんだことを書いておきたい。

山田太一が老人を扱った作品というと、「男たちの旅路」シリーズの「シルバーシート」を思い出す。1977年の作品、35年前だ。現在、山田太一は77歳だから、42歳の時のものである。ちなみにリアルタイムで観ていた私は20歳で、非常に感銘を受け、忘れ難いドラマであった。
今回の「キルトの家」は、本当に久々に老人を扱ったドラマになっている。勿論、中年だった山田太一が77歳のいま、書くのだから当然ながら昔とは違うものである。なんというか、老人の実感というものが伝わって来る。老人であることの喜びと悲しみが観ている私にもしみ込んで来る。
私自身ももう20歳の若者ではなく、54歳の立派な(?)中年男であり、82歳の父と78歳の母と同居している身なので身近に老人という存在を日々感じながら生きているのでこのドラマを感慨深く観ることができる。

前編のタイトル「はじめての人たち」というのが意味深に思えた。単純に考えれば、新たに団地に入居して老人たちと触れ合うことになる若いカップル(杏と三浦貴大)のことを指しているのだろうが、私はここに出て来る老人たちも「はじめての人たち」ではないか、と思った。誰しもが老人になるのが人生においてはじめてのことなのだ、という意味で。
そういえば、先日、母が法事の帰りに乗った電車で席を譲られた、と言って驚いていた。
母「私が年寄りに見えたのかな。こんなことはじめて。」
私「誰が見たって十分年寄りだよ。78歳だもの。」
母はまだ自分が老人であることに慣れていない。もっとも、私も自分が54歳の中年男であることに慣れていない。

老人という存在をひとくくりにはできない、という山田太一の考え方に共感する。老人が誰もが弱くて誰もが助けを求めているとは限らない、だから、あえてこのドラマの山﨑努のような役柄の老人を設定したのだろう。
こんなにも変わりものでいて魅力的な老人。若者から「面白い」と評価される老人。芝居っ気たっぷりで、サングラスが決まっていてパイプをふかすのがさまになっている老人。山﨑努だからこそ演じられるのであって現実にはまず存在しない老人。「天国と地獄」のあの青年が死刑にならなかったらこんな老人になっていたのかもしれない。

山田太一作品の根底にあるダークなものも垣間見せながら観るものを惹きつけてやまないのはさすがである。後編も楽しみ。

(追記)前編の冒頭で三浦貴大が品川徹に突き飛ばされ、「バカヤロー」と罵倒されるシーンがあり、ラストではまたも三浦貴大が今度は山﨑努に「バカヤロー」と罵倒される。つまり最初と最後が呼応している。何というかこういういかにも律儀な構成が面白い。山田太一が楽しみながら書いているのが窺えてこちらも楽しい。(1月29日 記)


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