「SFマガジン 2012年2月号」 ふりだしに戻る

雑誌「SFマガジン 2012年2月号」早川書房 2011年12月24日(土)発売 2011年12月25日(日)購入 くまざわ書店アリオ西新井3F 定価940円
2011年12月31日(土)読了

先日の「文藝春秋」(月刊)の全ページ読破に気を良くして、今度は「SFマガジン」(月刊)を隅から隅まで読んでみた。「SFマガジン」を買うのも久しぶりだし、こんなふうに全ページをきちんと読むのはおそらく初めてではないか。雑誌というのはどうしても飛ばし読みしてしまうものだから。でも、考えてみればおかしな話である。いわゆる小説などの本は文字通り一字一句を逃さず全ページ読んでいくわけで、飛ばしたりしたらわけが分からなくなる。雑誌が例外なのはヘンだ。それに第一、貴重なお金を払って買ったものを全部は読まないで済ませるというのはもったいない話である。こういう非経済的なところは改めなければいけないな、とつくづく思う。

「SFマガジン」を初めて買って読んだのは1970年3月号で発売日は1970年1月25日だった。私は、12歳で小学校六年生。そして、今、54歳で独身の中年男。ずいぶん遠くまで来てしまったなあ、と思うが、またここらで気分一新して「ふりだしに戻る」のも一興かもしれない。

さて、「SFマガジン2012年2月号」である。2月号は毎年恒例の「日本作家特集」で、まだその慣習が続いていることに驚く。どんなものかと読んでみた。
(グラビアページ)上田早夕里「リリエンタールの末裔」チャイナ・ミエヴィル「都市と都市」以上2作品の紹介。いずれも早川書房刊。つまり自社の宣伝。両方とも面白そう。これは買って読んでみたい。マガジン・レーダー。CD、イベント、本、マンガの紹介。本は「科学の栞 世界とつながる本棚」(瀬名秀明 朝日新書)、マンガは「モンスター[完全版]」(エンキ・ビラル 飛鳥新社)

宮内悠介「ヨハネスブルグの天使たち」二段組み24ページ。「まもなく幾千の少女らが降った」というくだりに度肝を抜かれる。内戦状態の近未来の南アフリカを舞台にした主筋の話との絡みも上手い。
十文字青「小さな僕の革命」三段組み26ページ。閉塞した近未来の日本にネットを利用して「革命」を起こそうと画策する少年の話。合言葉は「殺せばいいと思うよ」。いまにも起きそうなリアリティーがあり面白い。
片理誠「不思議の日のルーシー」二段組み22ページ。ある夏の日、少年は少女に出会う。毎度お馴染みパラレルワールドテーマの作品。嫌みなく爽やかに仕上がっている。
倉数茂「真夜中のバベル」二段組み19ページ。言語に関する特殊能力を持つ少年と幼馴染の少女の悲しくせつない話。しんみり。
しんみりはいいのだが、ちょっと待てよ。以上4編、揃いも揃って少年少女が主人公の話ってどういうこと?おっともうひとつ、巻末の
瀬尾つかさ「ウェイプスウィード」〈前編〉二段組み18ページ。でも少女が重要な役で出て来る。「本誌初登場の俊英五人による読切」(編集後記より)がこんなふうになるというのは今の流行りなのだろうか。みんなどうしてこうも少年少女にこだわるのか。「俊英」だったら冒険して老人を描いた話でも書かないものかな。いずれもなかなか達者で駄作は一つもなく、そこそこ面白いのだが、「俊英」にそこそこ面白いものなど求めたくない。もっととんでもないものが読みたい。読者は欲張りなんです。

池澤春菜「SFのは、ステキのS 第19回 春菜粛々と、いつか河を渡る」エッセイ。祖父母および父親が文学者という美人声優が、小説を書くことへの葛藤と願望と覚悟を綴って感動的な一編。早く池澤春菜の小説が読みたい。祖父の書いた「福永武彦戦後日記」も読んでみたい。

映画紹介(鷲巣義明)。「ダーク・フェアリー」と「パーフェクト・センス」いずれも面白そう。1月公開。
アニメ紹介(小林治)。「モーレツ宇宙海賊」と「輪廻のラグランジュ」これまた面白そう。1月から放送。
書評。(香月祥宏 タニグチリウイチ 卯月鮎 細井威男 三村美衣 笹川吉晴 千街晶之 牧眞司 長山靖生 森山和道)SFのみならずファンタジーやホラー、ノンフィクションに至るまで取り上げられている。その視野の広さは実に参考になる。「完全読本 さよなら小松左京」(徳間書店)「夢違」(恩田陸 角川書店)「のばらセックス」(日日日 講談社)あたりが気になる。

夢枕獏・寺田克也「十五夜物語」十四章
椎名誠「椎名誠のニュートラル・コーナー 海浜自由生活者はいまどこをさすらうか」
 
山本弘「輝きの七日間 連載第十回」 ある日、宇宙から飛来した新粒子によって地球上の全生物は「聡明」になった、といういささかクラシカルな設定の作品。全人類が自分の未来のある日を見てしまう「フラッシュ・フォワード」やほとんどの人類が宇宙からの流星群を見たために失明する「トリフィド時代」などを思い出す。これは完結したら是非まとめて読んでみたい。
梶尾真治「怨讐星域 第二十一話 七十六分の少女」怨讐とかおどろおどろしいタイトルだが、今話は梶尾真治のロマンティックさが良く出た作品。泣かせる。

宮野由梨香「現SF作家論シリーズ 連載第13回 星新一 なぜ一〇〇一話なのか?」非常に興味深いところもあるのだが、何だかこじつけくさくもあり、今一つピンとこなかった。
立川ゆかり「是空の作家・光瀬龍」(新連載評伝)光瀬龍の伝記的事実については全く知らなかったので面白く読んだ。光瀬龍の詩的なセンスが若いころからあったというのに特に心ひかれた。久々に光瀬龍作品を読んでみたい。

というわけで全体的には面白く読めた「SFマガジン」だった。でも、SFってやっぱり少年のものなのだな、と思う。54歳の私も再び12歳の少年になって読むのが一番ふさわしい読み方なのかもしれない。
「今月の執筆者紹介」を見るかぎりでは60代が、梶尾真治と椎名誠のみ。あとは50代以下。SFは送り手も受け手も高齢者ではダメなのか。高齢者SF、読んでみたい。でも、とりあえず筒井康隆の「銀嶺の果て」くらいしか思い浮かばない。

追記)「今月の執筆者紹介」ではなぜか年齢が書かれていなかった夢枕獏も60代。1951年1月1日生まれだそうで、今日が61歳の誕生日。(2012年1月1日 記)

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