「あたりまえのこと」 希望を捨ててしまった

評論(文学)「あたりまえのこと」2001年 倉橋由美子著 朝日新聞社 2001年11月1日第1刷発行 2001年11月30日第2刷発行
2011年11月7日(月)読了

初出誌 小説論ノート 『波』1977年8月号→1979年7月号 小説を楽しむための小説毒本 『小説トリッパー』1996年冬季号→1998年春季号(1997年冬季号をのぞく) あとがき 2001年

倉橋由美子の文芸評論というかエッセイというかそういうもの。軽く分かりやすく書かれているようでその実、結構重く難しいところもある。毒舌というか辛口というかそういう発言で楽しませてくれるし、真摯な発言で読んでいて思わず姿勢を正したくなるところもある。初めの「小説論ノート」とあとの「小説を楽しむための小説毒本」では間に20年近い時間が過ぎているのにちっともそれを感じさせない。倉橋由美子のぶれない文学観の表れだ。

「ああ、面白くてしかもためになるいい本だった」という感想で終わればハッピーなのだが、単行本発行の際に書かれた「あとがき」を読むと一気に悲しい気持ちになる。

「小説が書けなくなった理由はそれに必要な健康状態を失ったということに尽きます。目下、飛行機でいえば、四つのエンジンのうち三つまで止まり、超低空でダッチロールを続けているような状態にあります。機長自身が希望を捨ててしまったので、ぜひともどこまで飛ばなければとか、それまでにこれとこれを片づけなければ、といった妄執に悩まされることもなくなりました。」(220ページ)

頭脳明晰で素晴らしい感受性と想像力と文学的才能に恵まれた倉橋由美子の晩年の言葉がこんなにも悲しいものであるとは。「希望を捨ててしまった」とはっきり宣言してしまう倉橋由美子の「強さ」がかえって心をうつ。

     
     
あたりまえのこと (朝日文庫)
朝日新聞社
倉橋 由美子

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