完璧な卵

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zoom RSS 「ツレがうつになりまして。」 病みは闇なり

<<   作成日時 : 2011/10/29 08:45   >>

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マンガ「ツレがうつになりまして。」2006年 細川貂々著 幻冬舎文庫 2009年4月30日初版発行 2011年11月1日19版発行
2011年10月29日(土)読了

この前観た映画版が面白かったので原作を買って読んでみることにした。
買った文庫本の裏表紙にはコミックエッセイと書いてあった。最近、色々と見かけるジャンルのマンガだ。マンガ家の個人的な体験をエッセイ風に綴ったもの。
このマンガもその典型でギャグマンガ風の絵柄で「うつ」をエッセイ風に描いている。エッセイ風なのでストーリー性といったものはあまりない。登場する人物もマンガ家(女性)とその夫(うつになった人)にほぼ限られ、他の登場人物たちとの人間ドラマといったものもない。
これを読むと、いかに映画版はストーリー性を持たせ、他者との関係性を描こうと腐心していたかが良く分かる。そういうものが欠如したこの原作からよくぞあれだけ膨らませることができたものだと脚本家(青島武)の力量に感心する。
映画版に出てきた夫の会社の人々や「できないさん」、同じうつの患者といった印象的なキャラが当然ながらこちらには全く出てこない。映画版を先に観てしまうとその辺が何とも味気なく物足りなくも感じるが、原作と映画は別物と割り切ればこれはこれでまた別種の面白さがある。

このマンガの面白さはやはり「うつ」という病気を分かりやすく知らしめるところにある。その辺がマンガというジャンルの強みでもある。実写映画にして役者が演じると生々しくなるが、こちらの可愛い絵柄だとどこかほんのりした雰囲気になりとっつきやすい。「うつ」という深刻な病をこういうふうに描けるというのはまさに「コロンブスの卵」である。マンガがどんなことでも描ける非常に懐の広い表現形態であることを示唆している。

先に書いたように登場するのは夫婦二人に限られているので所謂「外部」は排除されている。それがまたこの「うつ」という病気の特徴でもあるのかもしれない。手術とかリハビリとかの外部からの関与ができず、妻の看病もまた他の病気と微妙に違ってくる。その辺の妻の側のつかず離れずの対応法がユーモアを交えて描かれているのが興味深い。多少、自虐的な描写も含みつつ、夫への不満もありつつも、それでも妻が夫をいかに愛しているかが強く伝わってきて、深刻な話なのにとても後味がいい。
また、夫の短いコラムも時折、挿入されているのも効果的。「うつ」患者の側からの視点があることによって話に膨らみが出ている。この夫もなかなか文才があり、非常に聡明で文章に説得力がある。妻よりは生真面目と言う印象を受けるが、患者本人だからか。この人単独の体験記といったものも読みたくなった。

全体的には闘病記ではあるのだが、「うつ」になった人の観察日記といった趣もある。そのあたりは、マンガ家の業のようなものも感じる。今はほとんど死滅した日本の私小説の伝統がこのようなところに残っていたのか、とも思う。
昔の私小説の書き手は男が多かったが、今はこういうものを女性が書くことが多い。これも時代か。
妻の夫への愛と同時に対象をきちんと見つめる冷静沈着な視線がある。それが少し怖い。
ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)
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細川 貂々

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