「ファントム」 郵便配達は午前二時にベルを鳴らす

DVD(映画)「ファントム」1922年 ドイツ 監督:F・W・ムルナウ 脚本:テア・フォン・ハルボウ 製作:エーリヒ・ポマー 出演:アルフレート・アーベル フリーダ・リヒャルト リル・ダゴファー リア・デ・プッティ 上映時間119分 無声映画 モノクロ 日本語字幕 DVD発売・販売・購入:紀伊國屋書店 定価5670円 DVD仕様:字幕翻訳:小松弘 小川佐和子(特典) 伴奏音楽:ロバート・イズレイル 特典映像:「『ファントム』への招待状」 封入:解説リーフレット
2011年9月13日(火)鑑賞

DVDのパッケージの文章などは全く読まないまま、面白そうだという勘だけで購入してみた。定価5670円。「ファントム」というタイトルから、ファンタジーかホラーじゃないかと予想したのだが、犯罪メロドラマとでも言うべき作品であった。でも、なかなか面白く楽しく観ることができた。傑作と言っていいと思う。ただ、超ド級の傑作「裁かるるジャンヌ」を再見したばかりなのであれと比べるとさすがに見劣りする。
所謂「枠映画」である。冒頭、窓辺で憂鬱そうな表情の男が佇んでいると、女性がやってきて、回想録を書くように勧める。その言葉に従って、男は文章を書き始める。そこで先ほどの女性は男の妻であり、男はかつて懲役したことが明かされる。いかにも犯罪など起こしそうにないこの繊細そうな男はいかなる罪を犯したのか。ここから回想に入り長い話が始まる。という滑り出しは、いかにも観る者の興味を引きそうな巧いシーンである。

男は、市役所勤めの事務員。本好きで文学にかぶれ、自分でも詩を書いている。どこの国でもいつの時代にもいそうな典型的文学青年であり、夢想家である。そんな彼が、ある日、走ってきた馬車と接触して道に倒れてしまう。そこに現れたのは、その馬車に乗っていた若い女性。彼は、彼女を見た途端に恋に落ちてしまう。そこから、彼の人生の歯車は狂い出していく。

今風に言えば、ストーカーだろうか。ひと目見ただけの女性に恋い焦がれ、役所は無断欠勤して、女性をつけて行き、しまいには彼女の両親に彼女と結婚したい旨を告げる始末。彼女の両親の答えが秀逸である。
「一年後に来てください」
それを聞いた男は、結婚を許されたと思い込み喜び勇んで立ち去り、祝杯を上げるために高級レストランに赴く。ところが、そこで彼はひと目ぼれの女性にそっくりの女性に出会い、またしても恋のとりこになり、その女の家まで押し掛けて行ってしまう。
まさに常軌を逸した話である。やっぱり、馬車と接触したときに頭でも打ったのではないか。どう考えても男が狂っているとしか見えない。普通のラブストーリーかと思ったら、どんどん話がねじれて来るのが面白い。

ただ、この映画の面白さは、そういうストーリーの面白さだけにあるのではない。男が、次第次第に狂気への道を歩んでいくと同時に見る幻想がさまざまな形で表れてくるのが実に面白い。色々な特殊効果、特殊撮影を駆使しての幻想シーンは観た甲斐があった。勿論、今から89年前の作品だから、幼稚と思えるようなものも見受けられるが、とにかく持てる技術を使って映画ならでは魅力を出そうという心意気にこちらも感動する。小説で美術でも表現できない、これぞ映画だ、というものがある。
例えば、クライマックスの刑務所の門のシーン。構図の決まり方といい、カメラの捉え方といいまさに映画でしか表現できないシーンだ。

不満もいくつかある。男が一目ぼれした女性、その女性にそっくりな女性、この二人を一人の女優が演じているのだが、この役が今一つ膨らまない。女性の二面性を表現したかったのだろうがもう少し出番が欲しかったところだ。
ストーリーがかなり無理やりなのは眼をつぶるとしても、どう考えても午前二時に郵便配達はやってこないだろう。どこの国いつの時代でもそんなに仕事熱心で迷惑な郵便配達人は存在しないと思う。

無声映画の演技って本当に独特だ。トーキー(発声映画)とは違うし、勿論演劇とはまるで違う。物凄く違和感があるのだが、観ているうちにあまり気にならなくなるから不思議。でも変なのは変。オーバーアlクションだし、目の演技が特に目立つ。
もうひとつ。無声映画ってどうして最初から最後まで伴奏音楽が流れるのか。前半の時点ですでにウンザリして、消音にして観ていたら、今度は睡魔が襲ってくるし、どうしたらいいのか。まあ、最後にはなんだか慣れてしまったけれど。
これからもっと無声映画を観てみたい。



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