「PERFECT BLUE」 完璧な青

映画(アニメ)「PERFECT BLUE」1998年 日本 アニメーション制作:マッドハウス 監督・キャラクターデザイン:今敏 脚本:村井さだゆき 原作・企画:竹内義和 キャラクター原案:江口寿史 声の出演:岩男潤子 松本梨香 辻親八 大倉正章 上映時間82分
2011年9月3日(土)鑑賞 京橋フィルムセンター 13時の回 入場料500円

何年ぶりだろうか、フィルムセンターに行ったのは。
ちなみに今、フィルムセンターでやっている企画は「特集 逝ける映画人を偲んで 2009-2010」である。ラインナップを見ると、この2年間でいかに数多くの貴重な映画人が亡くなったかを痛感する。功なり名を遂げて長寿を全うされた方もいるが、溢れんばかりの意欲を持ち、まだまだこれからだった方もいる。その若すぎる死があまりにも惜しい、という思いでいっぱいである。
今敏監督もその一人である。もうまもなく一周忌だそうだ。
今敏作品は、「千年女優」と「パプリカ」しか観ていないのだが、その独特の世界に魅力を感じていた。今回、未見の「PERFECT BLUE」が上映されると聞き、重い腰を上げ、観に行った。
残念ながら、観客の入りは半分くらいか。せっかく、500円の低料金で観られるのにもったいない話である。何年も来ていない僕がいうことではないか。

さて、「PERFECT BLUE」である。先頃、アメリカ映画「ブラックスワン」が公開された際、その類似性を指摘する声が上がったのを記憶していたので、どんなものかなと興味があった。
観終わった印象から言えば、確かに似ているところはあるが、とりたててパクリとか言うほどのものではない、と感じた。「ブラックスワン」がヒントにしたとか影響を受けたというのはあるだろうが、それで「ブラックスワン」の価値が下がるほどではない。それでも、エンドクレジットの末尾に今敏監督に「スペシャルサンクス」を掲げるくらいはしてほしかったが。
そういえば、「ブラックスワン」のナタリー・ポートマンのラストのセリフに「PERFECT」という単語があり、非常に印象的だったが、あれはこの作品へのオマージュを表したものだったのか。アメリカ人の愛情表現はストレートだな。

「PERFECT BLUE」そのものの出来栄えだが、かなり面白く観た。サイコスリラーとして傑作だと思う。作中で「日本のサイコスリラーってどうしてああなっちゃうんだろう」という自虐的なセリフがあったが、幸いああならずに済んでいる。
「ブラックスワン」がヒロインをクラシックバレエのバレリーナに設定していたのにこちらのヒロインはアイドルから女優に転身する若い女の子である。芸術ともてはやされることもあるバレエに比べて、どう考えても低く見られる芸能を扱っているところが実になんともショボくていい。

霧越未麻(声:岩男潤子)は、あまり売れていない三人組アイドルの一員だったが、テレビの連続ドラマ「ダブルバインド」に脇役で出演するのを機にアイドルを辞める。女優の道を歩み始めた未麻だったが、彼女の周囲で次々に異常な殺人事件が起きるようになる。それらは未麻の女優転身を阻止しようとする熱狂的オタクの仕業なのか、それともアイドルへの未練と女優への不安にさいなまれる未麻自身がやっていることなのか。未麻は次第に現実と妄想の区別がつかなくなって行く。

いわゆるB級アイドルとそれを取り巻く人々(マネージャー、社長、アイドルオタク等々)が、辛辣で底意地悪いユーモアと愛情をこめて描かれていて面白い。アイドルイベントに来るオタクたちも一枚岩では全くなく、ただ騒ぎを起こしたいだけの奴、熱狂的な奴、冷笑的な奴と色々と描かれているのが興味深い。作り手が、この世界に相当の愛憎を抱いているのが窺える。
アイドルだったけど今はマネージャーになり見る影もない女性、という設定も怖い。(後半になると、この女性自身が怖くなる。)一人抜けて二人組になったアイドルが、オリコン風のランキングで新曲が83位(!)に入ったので祝杯をあげるあたりも怖くて残酷なシーンだ。

それに比べると、テレビ業界の描写は通り一遍か。
サイコスリラードラマ「ダブルバインド」の撮影進行中に現実にも連続殺人が進行し、ヒロインの精神も正常ではなくなって行く、というストーリー展開は、今となってはさほど新鮮味はないが、色々怪しげな現象を起こし、ネタが割れないように色々工夫しているので飽きずに観ることができる。
ただ、これがファンタジーやホラーじゃなくてミステリとしてみるといささか困ってしまう。結局、●●が●●●を使って犯行を繰り返していたということでいいのだろうか。未麻の精神錯乱の意味は?そもそも、●●は何をどうしたかったのだろうか。未麻になり変って未麻になりたかった?それとも、単に未麻にアイドルに戻ってほしかった?
そのような分からないところ、辻褄が合わないところも見受けられるが、それらが重大な欠点にはなっていない。混沌もまたこの作品の魅力である。

PERFECT BLUE [DVD]
ジェネオン エンタテインメント
2003-12-21

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by PERFECT BLUE [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック