「コクリコ坂から」 少年愛の美学

映画(アニメ)「コクリコ坂から」2011年 配給:東宝 監督:宮崎吾朗 企画・脚本:宮崎駿 プロデューサー:鈴木敏夫 声の出演:長澤まさみ 岡田准一 竹下景子 石田ゆり子 柊瑠美 風吹ジュン 内藤剛志 香川照之 上映時間91分
2011年7月16日(土)公開
2011年7月17日(日)鑑賞 TOHOシネマズ西新井スクリーン8 10時の回 座席C-19 入場料1300円(前売り券)

普段はあまりこんなことは考えないのだが、映画を観ている最中に、「この映画、どんな年齢層を想定して作っているのだろうか」とか「そもそも誰に見せようとしているのか」という思いに支配されていた。スタジオ・ジブリの新作ということで楽しみにしてきた少年少女たちはどう思ったのだろうか。満足したかな。
53歳の僕は、非常に拍子抜けしてしまった。「風の谷のナウシカ」の公開時から映画館で律儀に宮崎駿作品を追いかけてきたが、もういいかな、という気になった。

これは不思議なアニメ映画である。何を描こうとしているのか、さっぱりわけが分からない。ちなみに原作のマンガは未読なのであくまでもこのアニメに関してではあるが。
作中に出て来るカレンダーや東京オリンピックのポスターから時代は1963年だということが分かるので、「ALWAYS 三丁目の夕日」のようなノスタルジー映画かと思うとなんだか違う。ノスタルジーといってもかなり特殊なノスタルジーで普遍性があるようにはとても思えず、ちっとも作品の中に心が入って行かない。
話の中心は、ある高校の学生寮「カルチェラタン」の取り壊しをめぐる高校生たちの反対活動にある。そこで描かれる抗議集会のくだりなんかは思い入れのある世代にはあるいは感慨深いのかもしれないが僕にはまるでピンとこなかった。まあ、ピンとこないけれど、それなりの見せ場ではあるし、そのあとのみんなでお掃除のところはいかにもアニメチックな楽しさがある。伝統ある学生寮を残そうと粉骨砕身努力する、というのは別に文句をつける筋合いではない。ただ、その行動が、その学校の理事長でもある財界の大物の鶴の一声で決着してしまう、というのはあまりに単純すぎて非常に物足りない。もっと紆余曲折があり、ハラハラドキドキさせてもいいだろう。これで解決するならそれまでの展開はなんだったのか。拍子抜け。
しかもこの財界の大物がいかにもモデルらしき人物が想像できるところがなんとも脱力させられる。作中では、徳丸という名前で、徳丸書店という出版社を経営していると来たら一目瞭然だ。しかも社内には、「アサヒ芸聞」という雑誌が飾られていたり、社長室に「少年愛の美学」が置かれていたりする。こういうしょうもない楽屋落ち的ギャグはジブリ作品としては珍しいのではないか。似合わないよ。徳間書店の「少年愛の美学」(稲垣足穂)は僕の愛読書だっただけに妙に意気消沈した。

もうひとつの話として、ヒロインの女子高生と主人公の男子高校生の恋愛話がある。女の子の方は、幼いころに父親を亡くしているという設定があり、男の方はかなり複雑な出生の秘密がある。メロドラマ的にいかようにも面白く盛り上げられそうではあるのだが、作り手はメロドラマに興味がないのかさして盛り上がらないのだ。何だかやけに醒めている。何より問題なのは恋したり、悩んだりする若者の心のときめきがなんにも感じられないことだ。
クライマックスも盛り上がらない。男子高校生の出生の秘密を知る人物に事情を聴くために主人公カップルが赴くという展開なのだが、別にここで今まで出てこなかった意外な新事実が出て来るわけではなく、単なる確認に終わってしまうのも拍子抜け。

つまり、学生寮の話も恋愛話も拍子抜けでまるで気が抜ける。で、結局のところ、このアニメが何を言いたいのか、何を表現したかったのか、さっぱり分からないということになる。
昔は良かった、と言いたいのか。いや、工場から黙々と上がる煙をやけに強調しているから一概にそうとも言えない。この時代の負の部分も暗示しているようだ。

歌の挿入の仕方が面白いと思った。冒頭ではてっきりこれはミュージカルアニメになるのかと勘違いしたほど。むしろそうした方が新機軸だったかも。
ただ、坂本九の「上を向いて歩こう」は使い方が今一つ生きてこない。

エンドクレジットでスタッフキャストの名前だけ出すのは疑問である。誰がどんな役割を担っていたのかをハッキリと明示すべきだろう。この作品に関わった人すべてが、自分の仕事に誇りを持っているはずだ。それなのに世の人々にどんな仕事をしたのか示さないというのは絶対におかしい。それをやるなら、冒頭にクレジットされた監督 宮崎吾朗や企画・脚本 宮崎駿も同様にすべきである。
プログラムを買ってスタッフ・キャストの仕事と名前を確認しようかと思ったが、プログラムに載ってなかったら無駄なので買わないことにした。










脚本 コクリコ坂から (角川文庫)
角川書店(角川グループパブリッシング)
2011-06-23
宮崎 駿

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 脚本 コクリコ坂から (角川文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック