「シミュレーションズ」 ヘアースタイルは日本のコケシふう。

アンソロジー(SF)「シミュレーションズ ヴァーチャル・リアリティ海外SF短篇集」SIMULATIONS:15 TALES OF VIRTUAL REALITY 1993年 アメリカ ケアリー・ジェイコブスン編 浅倉久志・他訳 ジャストシステム 1995年8月10日初版第1刷発行
2011年5月19日(木)読了

サブタイトル通りヴァーチャル・リアリティをテーマにしたSF短編を15作品収録したアンソロジー。
残念。あまり面白くなかった。ヴァーチャル・リアリティものって案外パターン化していてありきたりになりがちだ。仮想世界と現実世界のギャップとか今さら語られても…という感じ。まあ、新刊ではなく18年前の本だけど。
面白くない上になんだか分かりにくい話も多いし、長編小説の抜粋を二作載せるというのもなんだかなあ。
それでも全部が全部ダメなわけではなく、いくつかはそこそこ楽しめたのでそれらについて短く感想を書いておく。

「草原」レイ・ブラッドベリ
1950年発表の作品。古典的傑作。ヴァーチャル・リアリティものの基本形。何度読んでも面白い。「ゼロアワー」を始めとしてブラッドベリはこの手の「恐るべき子ども」の話が実に上手い。「ひきこもり」という現象について61年前に触れている先見の明に感心する。このころのブラッドベリは天才だ。

「ヴァーチャル・リアリティ」マイクル・カンデル
ある日、帰宅した夫は妻が見知らぬ男とベッドにいるのを発見した、という出だしのエロティックコント風SF。これはなかなかの傑作で、オチも愉快だ。こういう下世話な話は大好き。

「ドッグ・ファイト」マイクル・スワンウィック&ウィリアム・ギブスン
対戦型ヴァーチャル・リアリティゲームの話。「シンシナティキッド」とか「ハスラー」とか昔からある勝負ものの定石にのっとった作品で手堅い出来栄えで面白く読んだ。ちょっと苦い結末にするあたりも割とパターンだが、結構気に入った。ヒロインの設定もいい。親によって「貞節ロック」なるものをかけられてセックスがらみのことができない少女というのがいい。ただ、「ヘアースタイルは日本のコケシふう」(141ページ)と表現されるのには首をひねった。コケシふうのヘアスタイルっておかっぱ頭のことか。よく分からない。作者が何を思ってこう書いたか分からない。アメリカ人の読者はきっともっと分からなかっただろう。

「凍った旅」フィリップ・K・ディック
ヴァーチャル・リアリティものと言えばやっぱりディックでしょう。仮想世界と現実世界、本物と偽物について初期作から執拗に描いて来ただけあってこの作品も他の人とは格が違う。傑作。
宇宙飛行中の冷凍睡眠からどういうわけか意識を取り戻してしまった男を描くいかにもSFらしいアイデアストーリーだが、狂気をにじませる実に恐ろしい作品に仕上がっている。ディックは天才だ。

「ヴァーチャルな死へのガイド」J・G・バラード
バラードはとかく前衛的とか言われすぎるのだが、ディック同様に奇抜なアイデアを溢れんばかりに持ったSF作家だと思う。
この作品は、ある国のある都市の一日のテレビ番組表を提示したものだが、アイデアがいいし、辛辣なユーモアもいい。リアリティ・ショーとかいうテレビ番組を先取りしている先見性に驚く。バラードは天才だ。

「幸福な男」ジェラルド・ペイジ
勘の鈍い僕でも途中でオチに気づいてしまったが、こういう定石通りのストーリーは嫌いじゃない。1963年発表の作品というから古臭く感じるのもやむを得ない。それでもスリーパーとウエイカーの関係性とその逆転の顛末はなかなかよく出来ている。

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