「谷崎潤一郎マゾヒズム小説集」 温かい軽蔑の心

小説(短編集)「谷崎潤一郎マゾヒズム小説集」1910年~1927年 日本 谷崎潤一郎著 集英社文庫 2010年9月25日第1刷
2011年4月3日(日)読了

短編6編収録。

「少年」(明治44年・1911年)
今からちょうど100年前に書かれた作品。10歳から13歳くらいの少年少女の話。子どもらしいいじめや悪ふざけが段々エスカレートしてSM的プレイにまでなって行くまでを描いた感動作。ラストでは少女が女王になり、三人の少年を奴隷のように扱い、オシッコを飲ませるということまでやってしまう。2011年発行のSM雑誌に載ってもおかしくないような内容で谷崎潤一郎の先見性に感服する。傑作。
あとこれは当然かもしれないが、明治時代の子どもたちの間にもいじめがあり、貧富の差があったのだということが今さらながら認識できたのが興味深かった。

「幇間」(明治44年・1911年)
兜町の相場師から幇間に職替えした男のマゾヒスティックな生き方を描いた作品。自堕落で卑屈なダメ男なのだが、どこか憎めないところがある。前向きなマゾヒストとでも言うべきか。作中の単語を借りれば、Professionalと言うべきか。面白い。

「麒麟」(明治43年・1910年)
中国ネタの話。中島敦や芥川龍之介の作品にもあるのだが、どうして中国ネタの小説を書きたがる日本人作家が昔は存在していたのかよく分からない。僕に教養がないせいかどうにもその面白さを感じることができない。この作品もピンとこなかった。

「魔術師」(大正6年・1917年)
幻想小説。浅草公園という実在の場所をモデルにして、そこがこの世ならざる奇跡の起きる幻想世界に変容していくさまを描いていく。この手の作品はどれだけ作者の想像力もしくは妄想力が発揮されるかが鍵なのだが、これはかなり面白く読んだ。日本風味は極力なく、魔術師に代表される西洋風の趣向が効果をあげている。

「一と房の髪」(大正15年・1926年)
大正12年・1923年9月1日土曜日の昼に発生した関東大震災。ちょうどその時に一人のロシア人女性を巡る三人の男の悲劇的事件が起きていた、という話。
実際に起きた大震災を舞台にこのようなメロドラマティックな愛憎劇を書くのはやはりあざといと思わざるを得ない。何でも小説にしていいものだとは思わない。
平成23年・2011年3月11日金曜日の午後に発生した東日本大震災からまだ一カ月もたっていないこの時期にこの作品を読んだのはバッド・タイミングとしか言いようがない。あるいは震災前に読んでいたら別の感想もあったかもしれない。

「日本に於けるクリップン事件」(昭和2年・1927年)
タイトル通りの作品。イギリスで起きた有名なクリップン事件と似た事件が日本でも起きていた、という話。ただ、谷崎潤一郎としてはミステリ的興味で書いているわけではない、と思う。むしろ興味の焦点は、マゾヒストの心理にあり、事件そのものではないようだ。マゾヒストについて言及することは谷崎自らを言及することである。
谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 (集英社文庫)
集英社
2010-09-17
谷崎 潤一郎

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