「平ら山を越えて」 それでもてっぺんまで登るのかい?

SF(短編集)「平ら山を越えて」1990年~2004年 アメリカ テリー・ビッスン著 中村融編訳 奇想コレクション 河出書房新社 2010年7月30日初版発行
2011年4月2日(土)読了

短編全9編収録。
テリー・ビッスンの作品を読むのは初めて。大いに期待して読んだのだが、残念ながらあまり面白くなかった。何だかどこかで読んだような作品ばかりで斬新さを感じないし、強い衝撃や深い感動もない。そこそこの出来栄えの作品はあるのだが、ずば抜けたものがない。
とりあえず個々の作品について簡単に感想を記録しておく。

「平ら山を越えて」
地殻変動によってとてつもなく隆起した「平ら山」を登って行くトラックの話。いかにもSFらしい奇想が楽しいが、状況設定のユニークさのみで話の中身はあまりない。あっさり味でかなり物足りない。

「ジョージ」
背中に翼をつけた赤ん坊の話。これも短くあっさりしたストーリーだが、この作品ではそれが良い効果を生み出している。何気に「いい話」なのである。ラストの一行もうまい。

「ちょっだけちがう故郷」
偶然発見した飛行機に乗った子どもたちがパラレルワールドに行ってしまう話。これも「いい話」でハートウォーミングである。でも大感動とまではいかない。ちょっとあざとい感じが残る。

「ザ・ジョー・ショウ」
ここまでの3編が割合「いい話」だったのでテリー・ビッスンってそういう作家かと思っていたら、これにはやられた。バカエロSFである。宇宙的スケールのセクハラというか、ファースト・コンタクト詐欺というか。とにかく下世話であり、割と好みだ。昔懐かしのフレドリック・ブラウンの短編をふと思い出したりした。SFにはこういう安っぽさも必要だと思う。

「スカウトの名誉」
凝った作りの作品だが面白さが分からない。ネアンデルタール人を扱った作品だったら、アイザック・アシモフの「停滞空間」の方を押す。古すぎるか。テリー・ビッスンも「停滞空間」を意識しているように思えるのだが。孤独な女性、ネアンデルタール人の子供、というキャラが共通している。

「光を見た」
月にピラミッドっていう設定が何とも「今さら」である。でも別にパロディじゃないようだし。もう一度、アーサー・C・クラークの「前哨」と「2001年宇宙の旅」を読み直してみたくなった。

「マックたち」
殺人囚のクローンを創って、被害者遺族たちに処刑させるというかなりえげつない話。確かにアイデアはユニークだが、こういう題材をこういう風に描くということにやっぱり疑問を持つ。単純に面白がれない。

「カールの園芸と造園」
何が言いたいのかよく分からない作品。

「謹啓」
ある年齢以上の人間は「処分」されてしまう管理社会を舞台にしたディストピアものSF。これも今までさんざん読んだり観たりしてきた種類の作品で「今さら」感が半端じゃない。まあ割と長めの話でストーリー展開もそれなりに面白いのでそんなには腹も立たない。反体制側のレジスタンスも批判的に描いているところが気に入った。

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