「相棒 SEASON9 第8話 ボーダーライン」 この世の地獄

テレビドラマ「相棒 SEASON9 第8話 ボーダーライン」脚本:櫻井武晴 演出:橋本一 出演:水谷豊 及川光博 六角精児 川原和久 大谷亮介 山中祟史 山西惇 山本浩司 林田麻里 中野英樹
2010年12月15日(水)21時~21時54分放映・鑑賞 テレビ朝日系

「相棒」は、初期のころから結構観ているが、正直言って玉石混交で、面白い回とつまらない回の落差が結構大きい。ここ一、二シーズンは全般的につまらない回が目立ち、もう潮時かな、という気がしていた。ところがこの秋から始まった新シーズンが意外に当たり回が多く、ヴァラエティー豊かで楽しめる。盛り返してきた、という感じ。今夜の「第8話 ボーダーライン」も面白く、傑作だった。

ビルから転落死した36歳の男・柴田(山本浩司)の過去を追っていくと浮かび上がってくるのは現代社会のさまざまな歪みであった。
労働をめぐる色々な問題をとにかくいっぱい詰め込んで見せてくれる。ちょっとやり過ぎなんじゃないかと思うほどである。柴田の転落人生に関わった人々を次々に登場させて、興味を持続させていく脚本が上手い。多かれ少なかれ「悪い」やつらなのだが、法に抵触する者もいれば、単に意地悪な言葉を投げかけただけの者もいる。そのいずれもが結果的に柴田を追い詰めてしまう。その恐ろしさ。
柴田の生活保護申請をさせなかった役所の男も試食する柴田に一言チクリと言ったパン屋の女店員も取り立てて「悪意」はない。だが、それでも一人の男の背中を押したのである。
これこそが現代の不条理だ。

今回は、主役の水谷豊と及川光博のコンビはいわば狂言回しで、真の主役は回想シーンだけで登場する山本浩司である。彼の出た映画は何作か観ているがそれほど印象に残っていない。だが、今回のドラマで強烈に印象付けられた。これほどの適役というのはない、というくらいの名演だ。いや、ドラマティックな演技をするわけではない。むしろ目立たない鬱屈した演技である。それが何とも言えないリアリティーがあり、観ているものをいたたまれない気持ちにさせる。クライマックスのシーンは、特に観るに耐えないくらい痛い。

これだけ痛切で悲しいストーリー展開なのに杉下右京(水谷豊)の反応があくまでクールなのがいかにも「相棒」らしい。「残念ですね」と片づけるぐらいでおしまいなのである。凡百の刑事ドラマだったら柴田に感情移入して、いかに今の社会が間違っていて彼が犠牲者なのかを刑事自らが朗々と訴えるところだが、それがない。そこがいい。

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