「郵便配達は二度ベルを鳴らす」 夢の女・死の女

DVD(映画)「郵便配達は二度ベルを鳴らす」THE POSTMAN ALWAYS RINGS TWICE 1946年 アメリカ 監督:テイ・ガーネット 原作:ジェームズ・M・ケイン 出演:ジョン・ガーフィールド ラナ・ターナー レオン・エイムス ヒューム・クローニン 上映時間113分 DVD発売 DVD内容:本編+映像特典 言語:英語 日本語字幕スーパー版
2010年9月5日(日)鑑賞

初見。傑作。久々に堪能した。
ジェームズ・M・ケインの原作を読んだのは30年前だし、ボブ・ラフェルソンの映画版(1981年)も公開時に観たきりなので細部はすっかり忘れてしまったが、それが幸いしてか物凄く面白く観てしまった。

流れ者の男フランク(ジョン・ガーフィールド)は、ロサンジェルス郊外にある食堂の経営者ニック(セシル・ケラウェイ)に気に入られ、店で働くようになる。その店は、ニックとその妻コーラ(ラナ・ターナー)が切り盛りしていた。コーラに会った瞬間からフランクはコーラに魅せられ、心ひかれるようになる。

フランクとコーラが初めて会うシーンがいい。口紅がフランクの足元に転がって来る。そして、立っている女の足が映し出される。そのあとにやっと女の全身が映される。この辺の流れが何とも気持ちいいのだ。
ヒロインが初登場するシーンで、まず美脚を見せて期待を高めてから全身・顔のクローズアップに繋げるというテクニックは今見るといささか古典的だが、同時に新鮮でもある。「ラスべガス万才」のアン=マーグレットの登場のシーンもこの手法だった。
古典的と言えば、ここで小道具として使われた口紅がクライマックスでもう一度転がるシーンも古典的だ。昔のハリウッドの脚本家は本当に律儀である。セオリー通りと言うのか、最初の方のシーンのリフレインをきっちりやっている。これぞ、プロの仕事と言うべきか。

原作に忠実(だと思う)なストーリー展開にして、余計な贅肉を排除したので非常にシンプルだが骨太な映画ができた。演出・脚本もいいのだが、役者もみんなツボに嵌ってみんないい。
登場人物がみんな善人ではなくダークな色彩を持っているのが、1946年公開作としてはかなり大胆で面白い。被害者になるニックだって、金で若い女を妻にした傲慢さがあり、決して善人ではない。まあ、殺されるほど悪いことをしているわけでもないが。
主人公カップルも時と場所を違えて出会ったら決して殺人など犯さなかっただろう。善人ではないが、極悪人でもない。主人公フランクを演じるジョン・ガーフィールドは割合地味な風貌だが、この難しい役を見事に演じて役にリアリティーを与えている。いい役者である。
ヒロインのコーラ役のラナ・ターナーは、逆にリアリティーがまるでない。あんな寂れた安食堂にこんなに美人でスタイルがよくメイクばっちりで美脚あり、セックスアピールしまくりの若い女がいるわけない。まさに絵に描いたようなファム・ファタールだ。だが、そこがいい。このくらい極端な女でなければ、男がわざわざ夫を殺してまで手に入れようとは思わない。つまりラナ・ターナーは実に適役なのである。

適役と言えば、弁護士役のヒューム・クローニンもまさに適役。狡猾で権謀術策に長けた悪徳弁護士という役がぴったりである。彼のおかげで裁判がらみのシーンがすごく面白くなった。好演。
ヒューム・クローニンというと僕なんかは、「パララックス・ビュー」や「コクーン」などの老人になってからの彼しか知らなかったので、この映画を観る前は若い彼の見分けがつかないんじゃないかと少し心配していたが、全然問題なかった。こんなに顔が変わらず、役どころも変わらない人も珍しいじゃないのか。

変なところで映画を終わらせたボブ・ラフェルソン版と違い、こちらはちゃんと二度目の裁判もあるし、ラストもほぼ原作通り(だと思う)。何となく映画「陽のあたる場所」風のラストで少し甘い気もするが・・・。
やっぱり、きちんと原作を読み直さなくちゃ駄目だな、これは。

猫の使い方も上手いし、殺人のくだりでの木霊が凄い効果をあげている。鮮やか。



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