「世界100物語1 おしゃべりな小説」 犬の名はウルフ

アンソロジー「世界100物語1 おしゃべりな小説」1939年 TELLERS OF TALES イギリス サマセット・モーム編 河出書房新社 1996年10月25日初版発行
2010年7月29日(木)購入 BOOK・OFFパサージオ西新井店 価格105円
2010年9月23日(木)読了

サマセット・モームが、19世紀前半から1930年代までの欧米の短編小説の中からお気に入りの作品100編を選んで収録した大アンソロジーである。日本版では、全8巻という構成になっている。
まずはその第1巻目。モームの解題と10編の作品を収録している。

「二人の牛追い商人」イギリス ウォルター・スコット
友人同士だったスコットランド人とイングランド人の男が、些細なことからトラブルになり、やがて双方にとって悲劇的結末を迎える。という話で作者としてはスコットランド人とイングランド人の気質の違いを描きたかったのだろうが、日本人の僕には今一つピンとこない作品だった。

「リップ・ヴァン・ウィンクル」アメリカ ワシントン・アーヴィング
小学生の頃に読んだ記憶があるので40年振りの再読。西洋版「浦島太郎」的表現をされているのでてっきり民間伝承の話かと思ったら、ワシントン・アーヴィングという作家の純然たる創作なのである。歴史の浅いアメリカ合衆国に民間伝承などあるわけないか。ネイティヴ・アメリカンは別として。
この本の巻末の作者紹介を読むとワシントン・アーヴィングについて、「アメリカ合衆国の生んだ最初の文学者」とあって、これも知らなかったので驚いた。
肝心の作品だが非常に面白く読んだ。お伽噺風のストーリーもいいのだが、風刺も効いているし結構シニカルでもある。基本的にはほんわかとしたユーモアのセンスが全体的に漂っているのがいい。何しろ飼い犬の名前が「ウルフ」というのだから憎めないじゃないか。

「でっぷり肥った紳士」アメリカ ワシントン・アーヴィング
これもアーヴィング作だが、お伽噺風の「リップ・ヴァン・ウィンクル」とはがらりと違った作品である。宿屋の上の階に宿泊しているでっぷり肥った紳士はいったい何者なのか、と階下の男があれこれ想像を巡らしていく過程を面白可笑しく描いている。こういう日常の些事に着目して話を作って行くというのも嫌いじゃない。楽しめる。ワシントン・アーヴィングの他の作品も読んでみたくなった。

「ラ・グランド・ブルテッシュ」フランス オノレ・ド・バルザック
先日読んだ「グランド・ブルテーシュ奇譚」と同じ話。ただ、最初と最後に語り手のビャンション医師が姿を見せる部分が付け加えられている別ヴァージョン版。内容については先日触れたので今回は省略。

「老闘士」アメリカ ナサニエル・ホーソーン
古色蒼然たる作品でどうにも楽しめず。ゴースト・ストーリーなのだがこの手の話には非常に違和感がある。

「深紅のカーテン」フランス バルベイ=ドールヴィリー
これも古臭く硬い文章に馴染めなかったが、読み進むうちに面白くなってきた。17歳の士官学校出立ての若い軍人が出会った18歳の若い女との奇妙な愛の顛末を描いているのだが、男の部屋に夜這いにやってくるこの若い女アルベルトが最初から最後まで謎めいているのがいい。本当は彼女は何を考えていたのだろうか。男を愛していたのか、肉欲を満たすためにやってきただけなのか。ラストにはゴースト・ストーリー風の暗示もあり、なかなかよく出来た作品である。

「黄金虫」アメリカ エドガー・アラン・ポー
これも40年振り位の再読。今読むと、とにかく黒人の描き方がひどすぎると感じる。本当に無知蒙昧の輩としか受け取れないような実に差別的な表現が目立つ。19世紀前半のアメリカ南部の白人の考え方ってこんなものなのか。ポーのような天才といえどもその時代の潮流に流されているものなのだなあ、と思う。
作品としても面白くなかった。一体、暗号小説ってどこが面白いのかさっぱり分からない。作者自身が作った暗号を作者自身が解いて何が楽しいのだろうか。

「純な心」フランス フローベール
傑作。短編小説というか中編小説位の分量で語られるある女中の生涯のドラマ。泣かせどころをきっちり抑えておるのが実に感動的。人は生涯の間に様々な人の死に遭遇し、そして最後には自分も死ぬ。その当たり前のことを淡々と描いているのが何とも上手い。ラストの鸚鵡の使い方も素晴らしい。

「クラムバムブリ」オーストリア E=エッシェンバッハ
クラムバムブリという名の犬の話。犬をめぐる二人の男の悲劇の結末。小品だが、心に残る作品。

「ポーカー・フラットの流罪人たち」アメリカ ブレット・ハート
ポーカー・フラットという町から追放された男女が辿る過酷な運命。映画「駅馬車」にも通じるような世界である。主人公の賭博師はジョン・キャラダイン、いかがわしい商売をしている(らしい)女はクレア・トレヴァーとなぞらえて読んでいくと結構楽しめた。




ワシントン・アーヴィングとその時代
本の友社
斉藤 昇

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