「二十世紀から出てきたところだけれども、なんだか似たような気分」 SFへのラブレター

エッセイ「二十世紀から出てきたところだけども、なんだか似たような気分」鏡明著 本の雑誌社 2010年3月15日初版第1刷発行
2010年8月7日(土)購入 BOOK・OFFパサージオ西新井店 価格1950円
2010年8月8日(日)読了

本書は「本の雑誌」第13号~2001年3月号(第213号)掲載の「連続的SF話」から厳選して、加筆訂正、改題したものです。(本書10ページより)

連載時にほとんどすべて読んでいたのだが、こうして一冊の本になったものを読むとまた違った感銘を受ける。ちなみに「本の雑誌」第13号というのは1979年発行だそうで、ということはなんと22年にわたる連載ということになる。歴史の重みを感じる、と言いたいところだが、さにあらず。妙な堅苦しさはない。鏡明の文章は今も昔も変わらず非常に読みやすく、分かりやすく、軽やかで楽しい。二段組みの単行本400ページ余をスルスルっと一気に読んでしまった。

ただ、この本は面白おかしいだけではない。連載時のタイトル(「連続的SF話」)が示す通り、これは基本的にはSFに関する本である。旅の話やミステリやウエスタン小説に触れられるところもあるが、やっぱり結局はSFに話題は帰ってくる。掲載時未訳であったSFの紹介などは実に面白そうだし、ところどころ見受けられるSFへの辛口の批判も興味深い。だが、この本を読んで一番感じられるのは、鏡明がいかにSFを愛しているかということである。その思いの強さには圧倒される。高いところから客観的にモノ申すという姿勢とはまるで無縁である。
これは、鏡明からSFへのラブレターなのである。

この本がユニークなのは、昔の文章に加えて「2010年の追記」という文章がかなりの分量で載せられている。これもまた実に読み応えがある。過去と現在の対比が面白い。思惑外れ、挫折、進化、成長、変貌等々。
一冊の本を作るのにも手間暇かけているというのが好印象である。(考えてみれば手間暇かけるのは当然のような気もする。やってない方がおかしいのだ、本来は。)

未訳のSFは、結局未訳で終わっていたりするのが残念。どうせなら鏡明が翻訳すればいいのに。鏡明がセレクトしたSF(とミステリとウエスタン)を出版する鏡明翻訳全集なんて企画はいいと思う。ついでと言っては何だが、田中小実昌翻訳全集もどこかで出してほしい。もう一つついでに付け加えておくと、「アメリカの夢の機械」を是非、お願いしたい。鏡明は今世紀中と言っているが、今世紀も既に十分の一過ぎようとしている。僕が死ぬまでにお願いしたい。鏡明の小説も是非読みたい。・・・何だか最後は要望ばかりの文章になってしまった。



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東京創元社
鏡 明

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