「借りぐらしのアリエッティ」 私たちは、そう簡単に滅びたりしないわ!

映画(アニメ)「借りぐらしのアリエッティ」2010年 配給:東宝 制作:スタジオジブリ 監督:米林宏昌 企画・脚本:宮崎駿 プロデューサー:鈴木敏夫 原作:メアリー・ノートン 脚本:丹羽圭子 音楽:セシル・コルベル 声の出演:志田未来 神木隆之介 大竹しのぶ 竹下景子 藤原竜也 三浦友和 樹木希林 上映時間94分 
2010年7月17日(土)公開
2010年8月7日(土)鑑賞 TOHOシネマズ西新井スクリーン10 14時30分の回 座席F-7 入場料1300円(前売り券) プログラム600円

「君たちは滅びゆく種族なんだよ。・・・・・・君はこの世界にどのくらいの人間がいるか知ってる?
67億人だよ。」(少年・翔のセリフ)

原作は未読。

何だかとても怖くて残酷な作品であった。そこがすごく気に入った。爽快感や楽しさはないが、どこか心にしこりとして残りそうな忘れがたいものが残るそんな作品。

舞台は東京の郊外。時代は現代。病気療養のため、古い屋敷にやってきた少年・翔は、そこで小人のアリエッティという少女に出会う。その出会いが、アリエッティとその両親の運命を変えてしまう。

人間たちは日本人なのになぜ小人は洋風なのかと突っ込みたいところだが、これはそういうファンタジーなのだと思うことにしよう。ファンタジーの設定にいちいちいちゃもんをつけるのも意味のない話だ。

ファンタジーではあるが、小人たちはなにか特別な魔法が使えるわけではない。ただ、体が小さいというだけでどうやら能力的には人間とあまり変わらないようだ。そこがこの作品のユニークなところだ。
身長10センチメートル程のアリエッティが、屋敷や庭を歩きまわるのは実は危険と隣り合わせなのだ。その辺をもっと強調して緊迫感を醸し出すかと思ったが、割に控えめに描かれていてこれはこれで良いのではないか。それでも、小人と人間の対比にはやはりどこか怖さがあり心に残った。
昔、読んだリチャード・マシスンの「縮みゆく人間」を思い出した。(今年、新訳が出るという情報あり)

翔という少年のキャラが面白いと思った。重い心臓病で近々手術を控えていて、すっかり心も弱くなっている少年というのはスタジオジブリらしからぬキャラである。アリエッティに対する発言もペシミスティックで傲慢にも聞こえる。良かれと思ってした行動が、アリエッティ一家を危機に陥れるくだりなども皮肉で残酷である。前向きなアリエッティとは実に好対称だ。そこが良かった。
翔は手術もむなしく死んでしまうのではないか、と予感させるような儚さも秘めている。何となく、小川未明の童話に通じる儚さ。

描き込み方はさすがジブリと言いたくなるくらい凄いのだが、アニメ本来の動きの面白さで魅せるというのがあまりなく、そこが最大の不満である。ジブリの前作「崖の上のポニョ」は、賛否両論の作品だが、それでもあの「ポニョ来る!」のシーンの凄さは否定できないだろう。今回は、それに類するシーンが見当たらない。そこが物足りない。
ちなみに「ポニョ来る!」のシーンのアニメーターは、今回の監督である米林宏昌だそうである。今回はあえて動きを抑えたのだろうか。題材的にできなかったのか。
物足りないのだが、イコール駄目とは言わない。これも一つのやり方である。

家政婦のハルさんひとりを「悪役」的に描いているのも結構大胆に思える。翔の家庭が崩壊しているようなニュアンスで描かれているのも異色に見えるし、アリエッティの母親もややヒステリックに感じる。こういうところもジブリらしからぬというべきか。というか、僕のなかにジブリとはこういうものだという固定観念があることに今更ながら気づく。変な感じ。この感じは僕だけじゃなくて、この映画を観る多くの観客が持つものだと思う。ジブリや宮崎駿に対する過大な固定観念があるなかでの作品制作はさぞや大変だったに違いないと、米林宏昌監督に同情したくなる。でも、とにもかくにも独自色は出ているし、多少の不満はあってもよく出来た作品だと思う。

結末が割合、呆気ないのでなんだか長いシリーズの発端部分を見せられた気持ちになる。アリエッティ一家があのあとどうなったか大いに気になるではないか。原作を読んでみるか。で、早速買った。

アリエッティが、「ソルト」のダニエル・オルブリスキーと同じような仕込み靴を履いていたのには笑った。そう、つま先から刃物が飛び出す靴だ。「ロシアから愛をこめて」でロッテ・レーニャが履いていたのが元祖かな。アリエッティは実は、シークレットエージェントだったりして・・・。

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