「ジェーン・エア」 文芸映画を楽しく観る方法

DVD(映画)「ジェーン・エア」JANE EYRE 1944年 アメリカ 20世紀フォックス 原作:シャーロット・ブロンテ 監督・脚本:ロバート・スティーヴンソン 脚本:オルダス・ハクスレイ ジョン・ハウスマン 出演:オーソン・ウェルズ ジョーン・フォンテイン マーガッレット・オブライエン ペギー・アン・ガーナー エリザベス・テイラー ジョン・サットン
音楽:バーナード・ハーマン 上映時間96分 モノクロ DVD発売:ファーストミュージック
2010年7月25日(日)購入 ヨドバシカメラAKIBA店 定価450円
2010年7月26日(月)鑑賞

原作の「ジェーン・エア」を読んで大変感動したので映画版も観てみることにした。パブリックドメインのDVDを450円で買った。画質が心配だったが、観るに堪えないレベルではなくまずまずである。ただ、モノクロで夜のシーンが多いので画面が暗く観づらいところもいくらか目立つ。もともとそうなのかもしれないが・・・。

原作は文庫本で1000ページ余のヴォリュームのある長編なので96分の上映時間に収めようというのはそもそも無理がある。どうしても原作のダイジェストにならざるを得ない。それは十分承知の上で、「脚本家のお手並み拝見」という気持ちで観た。ちなみにクレジットされているこの映画の脚本家は3人。監督のロバート・スティーヴンソンとオルダス・ハクスレイ(イギリスの高名な小説家)とジョン・ハウスマン(後年、俳優としてアカデミー賞受賞)という顔ぶれだ。
これは、いくつか問題はあるがなかなか良くまとまった脚本である。原作のポイントとなる事件はほぼ押さえてあるし、セリフもかなり原作に忠実なものもあり、ニヤリとさせられる。少女時代も20分程かけて描いている。なかなかバランスのいい分かりやすい脚本だ。ただ、問題は原作における重要人物であるセント・ジョン・リヴァーズ牧師がこの映画には存在しないことである。従って彼にまつわるエピソードは何もないので、当然ながら親戚からジェーン・エアに残された遺産の件もなかったことになっている。これはなんという大胆な脚本だろう。シャーロット・ブロンテが観たら怒るに違いない。宗教的なメッセージがなくなってしまったのだから。
リヴァーズ牧師の代わりにリヴァーズ医師というのが出て来るのも噴飯もの。この人が、少女時代のジェーン・エアを励ましたりするのだから失笑してしまう。誰なんだ、あなたは。
あと、ジプシーの老婆のくだりもカットしてある。原作を読んだとき、このくだりの意味がよく分からなかったが、いざなくなってみると重要だったんだと思い知らされる。ここがないからロチェスターはブランシュ・イングラムに面と向かって別れの言葉(しかも辛口)を言わねばならなくなる。ここは原作のニュアンスが台無しだ。

出演者について。ジェーン・エアが、ジョーン・フォンテインというのはあまりに綺麗すぎないか。原作では不美人を強調しているのに彼女では真逆である。美貌を抜きにしてもこのジェーン・エアが何考えてるか良く分からないのは困りもの。原作の魅力の一つである心理描写が映画では表現しづらいのは分かるが、ただ綺麗なだけじゃしょうがない。
一方、ロチェスター役のオーソン・ウェルズはなかなかいい。原作にある「武骨さ」がよく出ているし、秘密を抱えた暗い表情演技もうまい。ロマンチックさはあまりないが、そのほうが感じが出ている。ちゃんと原作を読んで役作りしているようだ。ただ、なんとなく顔がおっかないので少し怪奇映画みたいにも思えてしまう。もう一歩でピーター・ローレという感じ。
1940年代の子役3人の共演も面白い。ジェーン・エアの少女時代はペギー・アン・ガーナーで、親友ヘレンにエリズべス・テーラー。ロチェスターの養女アデルにマーガレット・オブライエンである。ペギー・アン・ガーナーが一番達者で、エリザベス・テイラーはチョイ役、マーガレット・オブライエンはこまっしゃくれた役なので好感持てず。唯一、オーソン・ウェルズの顔真似するところが可笑しい。(注1)

音楽が、バーナード・ハーマンというのもミスマッチ。のちにヒッチコックとのコンビで知られるハーマンはここでもどういうわけかおどろおどろしく煽り盛り上げることに専念する。サスペンス映画もしくは怪奇映画のノリである。なんか間違っているよなあ。(注2)

ロチェスターの屋敷が古色蒼然たる城で、そこにそびえる塔に幽閉された●●がいるというのも怪奇映画的。

色々書いてきたが、作品の出来はともかくとして久しぶりに隅から隅まで楽しく観ることができた映画である。つい最近読んだ原作と一々比較検討しながら観るのがこんなに楽しいとは夢にも思わなかった。こういう映画の楽しみ方があってもいい。

(注1)アレグザンダー・ウォーカーの「エリザベス・テイラー」(朝日新聞社)によれば、「(MGM専属の)エリザベスは二十世紀フォックスに週に百五十ドルで「貸し出され」た。(中略)エリザベスの名前はタイトルのクレジットにも載らなかった。」そうである。確かに僕の観たDVDでもクレジットに彼女の名前はない。でも見りゃすぐ彼女と分かるけれど。

(注2)双葉十三郎の「僕の採点表Ⅰ」(トパーズプレス)の「ジェーン・エア」評にもこんな風に書かれている。「そのかみは有名な文学作品をスクリーンにのせて、文芸映画と称したものである。その例に従えば、これもまた文芸映画であるはずだが、実体はどうやらスリラーに近い。(後略)」


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