「少女」 因果の果て

小説(ミステリ)「少女」2009年 湊かなえ著 早川書房 2009年1月25日初版発行 2010年2月14日(日)購入 高田書店(古本屋) 価格100円
2010年5月30日(日)読了

「告白」の湊かなえの作品。「告白」は粗が目立ちどうにも好きになれない作品だったが、登場人物がみんな嫌な奴で何とも言えない不快感が読後に残るところはなかなかのものと思った。何も面白く楽しいばかりがいいわけじゃあるまい。不快感や嫌悪感を読者に与えるのが目的の小説があってもいい。そういうところに関しては見事に成功していた。
今回の「少女」もまた予想通りというべきか嫌な人間ばかり出て来る。主人公は二人の女子高生なのだが、その心理描写がなんというかこちらの気持ちを逆撫でするような嫌らしさなのである。こういうところはとても男性作家には書けない。女子高生に対する男のやわな幻想など吹っ飛ばしてしまうような身も蓋もなさが随所にうかがえる。そこには湊かなえの人間観察力の鋭さが発揮されている。
案外、湊かなえって自分の書く登場人物とは正反対の純粋無垢な女性なのかもしれない。自分が接してきた嫌な奴をよーく観察して作品に仕立てているような気がしてならない。

二人の女子高生、由紀と敦子は転校生の紫織に聞いた自殺した少女の話に触発され、ある思いにとらわれる。
「人が死ぬ瞬間が見たい」
由紀は小児科病棟のボランティアに赴き、敦子は老人ホームの雑用を手伝いながら死を目撃するのを心待ちにする。
というのがこの小説の導入部である。もっと幼い子供じゃなくて高校生が「死を見たい」なんて思うかなあ、という疑問も抱くし、二人が全く別々に同じ思いに達するというのはなんだかなあ、と思う。でも、このくらいで驚いてはいられない。湊かなえは偶然とか不自然とか指摘されそうなのも意に介さず、アッと驚くストーリー展開を繰り広げるのだ。
取り立てて大事件が起きるわけでもないのに読み始めたらやめられない上手さがある。「告白」より上手くなったんじゃないか。

湊かなえはもしかすると歌舞伎好きかもしれない。クライマックスの人間関係のまとめ方を読んでそう感じた。そんなに多くもない主要登場人物を因果の糸で結びつける技は卓抜な物がある。リアリティーという点から言うと話にならないが、作り物と割り切ればこれはこれでなかなかの珍味である。
初めはどうにも嫌な感じを受けた二人の女子高生もラストあたりでは少し好感を持てたりして、どうやら僕も湊かなえの術中に嵌ったらしい。



少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)
早川書房
湊 かなえ

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思春期独特の頭でっか ...
告白を超えれなかった ...
ただの青春小説ならよ ...

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