「ミステリ十二か月」 ミステリの鬼

エッセイ(ミステリ)「ミステリ十二か月」2004年 北村薫著 中央公論新社 2004年10月25日初版発行
2010年3月12日(金)購入 BOOK・OFF梅島駅前店 価格500円
2010年6月8日(火)読了

ミステリに関するエッセイ・評論・対談(二つ)で構成された4部形式の本。
まず第1部は、読売新聞に連載された「北村薫のミステリーの小部屋」を改題した「ミステリ十二か月」と言うエッセイである。エッセイの趣旨は、「過去の名作を紹介するコーナー、つまり、<ミステリを読み始めた若い読者のための道案内>」(139ページ)なので非常にやさしくわかりやすい言葉でミステリの魅力が語られ、面白くためになった。
ちなみに取り上げられているのは50作で数えてみたら23作読んでいた。約半分か、もっと読まないといけないな。そんな気にさせるように北村薫は実に楽しそうに書いていてこちらも気分が良くなり、「ミステリっていいな」という感情が湧きあがる。もっとも、北村薫に全面的に賛同するわけではない。例えば、「幻の女」や「シンデレラの罠」はそれほどの傑作とは思えないし、逆に「ホッグ連続殺人」はもっと高く評価してもいいのではないかとか色々思うところはある。そういう思いを引き出してくれるのもこのエッセイのいいところである。
第2部は、「絵解き謎解き対談」と題して、この本の凝った挿絵を担当した大野隆司とのなごやかな対談で主に挿絵作りの裏話。(この本のために新規に収録)

第3部は書き下ろし。第1部で取り上げられたミステリとそこからさらに広げた様々なミステリについての評論である。語り口は、第1部同様やさしくわかりやすいが、「ミステリの鬼」と呼びたいような厳しさや辛辣さも時おり覗かせる。北村薫は正真正銘のミステリマニアなのだと思う。
第4部は、「「全身本格」対談」と題して、ミステリ作家・有栖川有栖との対談を新規に収録。これが面白い。ある程度、気心の知れた相手のせいか結構言いたい放題で盛り上がる。うーん、北村薫って案外毒舌家なんだな。「ホッグ連続殺人」を一言、「だめじゃん」と一刀両断し、瀬戸川猛資にもダメだしするのが最高に可笑しい。僕なんかも瀬戸川猛資に煽られて「ホッグ連続殺人」を読んだくちなのだが、こうも見事に論破されるとグーのねも出ない。瀬戸川猛資が生きていたらどう反論しただろうか。
北村薫は、瀬戸川猛資を貶すばかりではなくその愛すべき部分も語っているので嫌な後味にならない。それはこの本全体にも言えることで、僕と意見が違うことがあっても別に腹も立たず、むしろその違いが面白く後味がいい。
ミステリに対する愛を優れた技巧で表現した良く出来た本である。

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