「フェリーニのローマ」 ルビコン川をまたいで渡る

DVD(映画)「フェリーニのローマ」FELLINI ROMA 1972年 配給:ユナイト 監督・原案・脚本:フェデリコ・フェリーニ 原案・脚本:ベルソルディーノ・ザッポーニ 音楽:ニーノ・ロータ 出演:ピーター・ゴンザレス ブリッタ・バーンズ ビアーデ・ドーゼス フィオナ・フローレンス フェデリコ・フェリーニ アンナ・マニャーニ ゴア・ヴィダル 上映時間119分 カラー 日本語字幕版 DVD発売:20世紀フォックス ホーム エンターテインメント ジャパン
2010年5月5日(水)鑑賞

初めて観たけれどすごく面白かった。僕の観たフェリーニの作品の中でも特に好きになった。不満なところもあるが、とにかく実に愛すべき傑作である。

まずルビコン川を渡る。まさかあの有名なルビコン川が子どもでもまたいで渡れそうな小川だとは知らなかった。シーザー(カエサル?)もびっくりだ。

この映画は、とりたててストーリーはない。ドラマ性もない。1938年ごろのローマと現代(といっても映画製作時の1971年ごろ)のローマのエピソードというかスケッチというかそんなものが交互に描かれていく。とりわけ過去の部分がメチャクチャに面白くて感動するし、興奮する。

1938年、ひとりの若者がローマにやってくる。フェリーニ監督の若き日の姿ということなのかな。とにかく若者は一軒の大家族の家に間借りして生活を始める。
若者はその家族と一緒に屋外のレストランに食事に行く。もうここからが筆舌に尽くしがたい面白さなのである。屋外というと聞こえがいいが、実のところ、すぐそばを路面電車が通り過ぎる路上レストランであり、そこにさまざまな人々が集まり、食事をしたりお喋りしたりする。まずこの喧騒にやられてしまう。なんというエネルギッシュなパワーだ。凄まじいの一言に尽きる。しまいにはこの喧騒に刺激を受けたのか、幼い女の子が何とも卑猥な唄を大声で歌いだす。フェリーニは子どもの描き方も上手い。興奮してはしゃぐ子どもというのをよくとらえている。
こんなのは序の口で、このあともさまざまな場所に集まったさまざまな人々の姿が描かれていく。例えば、映画館であり、ボードビルの芝居小屋である。
もうなんというか、マナーなんて言葉が虚しくなるような人々の傍若無人ぶりがたっぷり描かれる。映画館でタバコは当たり前、お喋りし放題、そのうえ、座席で幼児におしっこさせる母親まで居る始末。芝居小屋では、品性下劣なヤジが芸人に浴びせられ、客同士の喧嘩もあり、しっちゃかめっちゃかである。昔のローマ人、本当にロクなもんじゃない。映画で観ている分には抜群に面白いが、絶対にお近づきになりたくない人々だ。
だけどフェリーニがこの下品極まりない人々をこよなく愛しているのが強烈に伝わってくる。なんという凄まじい愛だろう。ノスタルジーなのだろうか。普通ノスタルジーというともっと甘くて感傷的なものだが、ここではまるで違う。

さらに圧巻は娼館のくだり。ご丁寧に普通の娼館とやや高級な娼館と二か所見せてくれる。もう本当にしつこくてうんざりするほどの女たちの饗宴が楽しめる。
娼館に客としてやってきた男たちの前に女たちが顔見世する。男たちは品定めして女を選ぶという仕組みである。ここで次々に現れる女たちの顔触れが実に多彩だ。美しい女もいるが、むしろ醜い女、太った女、年老いた女、痩せた女、気持ち悪い女、頭のおかしな女、といった女の方が目を引く。よくもまあ、ここまで揃えたものだ。根本敬ふうにいえば、「いい顔」のオンパレードだ。フェリーニらしいピュアな悪趣味である。

というように過去のパートはメチャクチャ面白いのだが、誠に残念なことに現代のパートがまるで面白くないのだ。フェリーニ自身が登場し(ダンディー!)なんとなくフェイクドキュメンタリー風のものを狙っているようなのだが、作為が見え見えでつまらない。道路上で遭遇する交通事故が本物でも演出でもどっちでもいいという気にさせるし、地下で発見されたフレスコ画が外気に当たり見る間に消滅するシーンもユニークだが面白くない。教会のファッションショーというのも奇をてらっただけに思えるし、ラストのバイク群のローマ暴走も何の衝撃もない。

フェリーニも現代のローマには何の興味もないのだろう。過去のパートと比較するとそれがよくわかる。
そんなわけで現代のところは駄目だが、それでも全体的にはこれはすごい傑作である。



フェリーニのローマ [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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