「天来の美酒/消えちゃった」 天国の鐘を鳴らせ

小説「天来の美酒/消えちゃった」1921年~1944年 A・E・コッパード著 南條竹則訳 光文社古典新訳文庫 2009年12月20日初版第1刷発行 2010年1月15日購入 東武ブックス梅島店 価格680円
2010年5月16日(日)読了

11編収録の短編集。表題作の「天来の美酒」と「消えちゃった」が特に面白く、他はつまらないというか面白さの分からない作品が多い。ちょっと期待外れの短編集であった。
そもそもコッパードの作品を怪奇小説のアンソロジーで読んでいたので、てっきり怪奇と幻想の作家と勝手に思い込んでいたこちらに責任があるのかもしれない。確かにこの短篇集を読むとその手の作品もあるにはあるが、他は宗教がらみの作品が目立つ。宗教特にこの場合はキリスト教なのだが、知識もなく理解も及ばない僕には非常に難物だった。どのように解釈したらいいのか判断に困った。
例をあげると、「レイヴン牧師」という作品。「審判の日」がやってきて、信徒とともに「楽園」へ渡る橋までやってきた牧師はある決断を迫られるというストーリーだが、これがよく分からない。特にオチ。これはどういう意図のもとに書かれたのだろう。牧師の行動をシニカルに見ているというのは分かるが、結局何が言いたいのかが分からない。正直であれ、ということなのか。魂の消滅というのもよく分からない。
他にも「マーティンじいさん」「暦博士」「天国の鐘を鳴らせ」などの宗教がらみの作品がいずれも隔靴掻痒という感じで理解できなかった。

結局、面白く読んだのは宗教色のない(または薄い)作品であった。

「消えちゃった」を読むのは3度目。ちょうど40年前、SFマガジンで読んで面白かった(荒俣宏訳)。僕は中学1年生だった。40年経っても読書傾向が変わらないのはいかがなものかと少し思う。
去年、平井呈一の訳で再読し、つまらないと思った。で、今回の南條竹則訳である。今回は面白いと思った。すっとボケたユーモアもいいし、不吉な前兆を思わせる出来事の描写がとりわけ上手い。フレドリック・ブラウンの「終列車」を思い出した。

「天来の美酒」は初読。これもユーモアがあるし、怪異の扱いもこれ見よがしでないし、オチもいい。話の肝をワインでなくビールに設定したのも微笑ましい。

「おそろしい料理人」も初読。上の2作よりは落ちるがそれでも楽しく読める。怪異とは無縁のユーモラスな家庭小説だが、先が読めない展開がいい。「おそろしい」というタイトルに引っかけられた。(原題にもDevilという単語が入っている)



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