「原爆下のアメリカ」 あるいは私はなぜ心配するのをやめて原爆を愛するようになったのか

DVD(映画)「原爆下のアメリカ」INVASION,U.S.A.1952年 監督:アルフレッド・E・グリーン 製作・原案・脚本:ロバート・スミス 出演:ジェラルド・シーモア ペギー・キャッスル ダン・オハーリーヒー 上映時間73分 モノクロ 日本語字幕版 DVD発売:TCメディア  
2010年4月24日(土)購入 紀伊国屋書店新宿本店 定価1350円
2010年4月29日(木)鑑賞

愚作。映画の出来からすれば全くお話にならないレベルの作品である。ただ扱っている題材が非常に興味深いので最後まで退屈はしなかった。時間も73分と短いのがいい。この辺は良心的だ。

ニューヨークのバーに居合わせた6人の男女は、テレビの臨時ニュースに釘づけになる。なんと突然、敵国がアラスカに侵攻してきたというではないか。その後も次々と恐るべきニュースが飛び込んでくる。この人々の運命、またアメリカ合衆国の運命はどうなって行くのか。
冒頭のバーで人々が会話しているシーンからして、「これはまずい」という予感がした。いかにも予算がないのでバーのセット作ってそこで説明的台詞を喋らせています、と言うのが見え見えでテンションが下がる。テレビのニュースキャスター、議員、トラクター製造会社の社長といった登場人物の設定も類型的。最初から共産主義者は嫌い、でも軍事費に税金使うのはいやとかの会話があり、先が読めてしまう。
肝心の敵国(ソ連だよね、どう見ても)の軍事行動、およびそれに対抗するアメリカ軍の反撃のシーンはほとんど記録映像などの既存のものを流用している。これが実に噴飯もの。画質が違う映像を平気で編集していてちぐはぐもいいところ。昼も夜もごちゃまぜで地理的にもおかしかったりで観ていて何が何やらの状態である。もう少し上手くだましてくれないものなのだろうか。あまりにもひどすぎる。
たまにセットを使ってのシーンが挿入されるが、これがまた演出・演技ともにお粗末すぎて話にならない。そのうえ特撮技術もへたくそで編集もダメである。ダムが決壊して自動車が水没するシーンの技術的なダメぶりは画期的だ。この映画は1952年の作品だが、1941年の「海外特派員」(アルフレッド・ヒッチコック監督)の旅客機墜落シーンと比べてみよ。差は歴然としている。まあ、比較されたらヒッチコックも怒るだろうが。

邦題の「原爆下のアメリカ」というのは随分思い切ったタイトルだな、と観る前は思ったのだが、観たら看板に偽りなしだったので驚いた。それにしてもアメリカに何発原爆が落ちたのだろうか。この映画の作り手は原爆というものを軽く考えているんじゃないのか。
ニューヨークにまで原爆が落とされ摩天楼が崩壊するのだが、このシーンもあまりにチャチすぎてガックリする。ただこのシーンは9.11のテロを50年も前に予見していることになるのではないか。そう考えてみると凄いかもしれない。
後世への影響としては、すぐ思ったのがジョン・ミリアス監督の「若き勇者たち」(1984年)である。ある日突然、敵国の落下傘部隊がアメリカ本土の降下し、街を占拠するという映画だったが、この映画でも数千の落下傘部隊がワシントンに降下して侵攻するシーンがある。ミリアスは明らかに影響を受けている。
それにしても多数の原爆により本土が破壊され、落下傘部隊の兵隊により議員たちが殺されるというこの自虐的ストーリーはどこから出てきたものなのだろうか。まあ最終的には、「ここうなっちゃいけないから軍事費は減らさないで国防をしっかりやって共産主義者に対抗しよう。」というメッセージを効果的にするためにあえて自虐的にしたんだろうが、なんか元ネタがあるのだろうか。

作り手がどれだけ反共や原爆についてまじめに考えていたかは知らない。ただ出来あがったものを観ると真摯な姿勢はとてもうかがえず、ただ時局に便乗した商売っ気のみ感じられる。まあ、娯楽商品としても落第なのだが。
1952年に既にテレビのニュース番組というものに着目した点は先駆的と思う。だからといって作品の評価があがるわけではない。

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