「探偵物語」 罪を許す

DVD(映画)「探偵物語」Detective Story 1951年 配給:パラマウント  アメリカ 原作戯曲:シドニー・キングスリー 監督・脚本:ロバート・ワイラー 脚本:フィリップ・ヨーダン 出演:カーク・ダグラス エリノア・パーカー ウィリアム・ベンデックス リー・グラント ジョセフ・ワイズマン キャシー・オドネル 上映時間103分 DVD発売:パラマウントジャパン
2010年2月6日(土)購入 ヨドバシカメラAKIBA店 価格1000円
2010年3月16日(火)鑑賞

初見。傑作である。久々に十分堪能できる映画だった。
成功の一因は、刑事部屋に舞台を限定して、ほとんどのストーリーをそこで展開させる構成が実に上手くいっていることにある。いかにも演劇向きの構成なのだが、映画としての魅力もあり、全く飽きさせない。
ただ、「探偵物語」という邦題は誤訳臭い。むしろ「推理小説」とした方が、Detective Storyの訳としては合っているようだ。もっとも、実際はこれは反語であり、推理とか謎解きの要素はかなり少ない。刑事部屋を舞台にしているもののミステリではなく、むしろ様々な人々を描く群像劇なのである。いや、もっと正確にいえば、様々な人々を描くように見せて実は一人の主人公を執拗に描いた人間ドラマなのである。

主人公に刑事マクラウドを演じるのがカーク・ダグラスである。DVDのパッケージに「鬼気迫る演技」と書いてあるのが誇張でも何でもないのが珍しい。同じ年(1951年)に公開された「地獄の英雄」同様に極めて強烈なキャラクターの登場人物を文字通り熱演している。いささか遅まきながら、「カーク・ダグラスってこんなすごい役者だったんだ。」と再認識できた。

マクラウドは、強すぎる正義感の持ち主で犯罪を憎み、犯罪者を絶対許さない。傍から見れば常軌を逸していると思えるほどだ。彼が、そうなったのは一生涯、彼の母を苦しめ続けた父への反発心からだった。「あんな男には絶対にならない。」という強固な信念が常にあった。だが、そんなマクラウドに突然、耐えがたい真実が突きつけられる。

マクラウドの妻(エリナー・パーカー)の過去の出来事を知り、マクラウドは動揺する。結婚前のことにそこまでこだわるのはおかしい、と僕なんかは思うのだが、こういうのは理屈じゃないからどうしてもダメという気持ちもわかる。何となく「幸福の黄色いハンカチ」の主人公を思い出した。あれも妻の過去にこだわったことにより、殺人を犯してしまった男の話だった。
ただ、今このようなテーマで映画化したらどうだろう。おそらく古臭い倫理観として一蹴されてしまうのではないか。というか、今のアメリカ映画じゃこういう映画は作れない。

その辺はさておき、父親のドメスティック・バイオレンスを見て育った子供がそんな人間にはなるまいと決心したのに結局、父親と同じ道を歩んでしまうというのは今観ると先駆的だと思う。

この映画のラストには少し不満がある。なんだか「地獄の英雄」と同じような決着の付け方が納得いかない。確かにドラマティックではあるのだが、主人公の「退場」のさせ方としては安易ではないか。
それにしても、人生の最期になって、「俺の生き方は間違っていたんだ。」と悟りながら死んで行くっていうのは最悪だ。作り手の悪意が感じられる。極めてシニカル。

カーク・ダグラス、エリナー・パーカーはもちろん好演。脇役では、リー・グラントとジョセフ・ワイズマンがいい。この二人はこの映画の元の舞台でも出演していたらしい。(カーク・ダグラスも一部の公演で出演。)手慣れたものだと思うが、特にいかれた犯罪常習者を演じたワイズマンの演技が面白い。どこかゲイっぽいし、神妙かと思えば、突然感情を爆発させたり、変幻自在でいい。その対比で出したのだろうが初犯の青年(クレイグ・ヒル)とその恋人の妹(キャシー・オドネル)のカップルはあまり生きていない。
若いころのリー・グラントというのも初めて観た。緊張感を緩和する大事な役。上手い。

狭い刑事部屋という限られた空間で役者を動かして全くだれずに見せるウィリアム・ワイラーの名人芸をたっぷり味わえた。





探偵物語 [DVD]
パラマウント ジャパン

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