「巨人と少年 黒澤明の女性たち」

映画本(評論)「巨人と少年 黒澤明の女性たち」1992年 尾形敏朗著 文藝春秋 1992年11月25日第1刷
2010年1月13日(水)読了 読書時間200分

「かつて黒澤明は<天皇>と呼ばれた。男性的な映画監督とも言われている。だから、まるで女が描けないという。しかし、それは本当だろうか?」(1ページ目 扉の文章)

上記の問い掛けに大いに興味を持ち読んでみた。非常に面白かった。実に読みごたえがある。黒澤明の映画において女性とはどんな意味を持つのかを解き明かしていく過程がスリリングであり、謎解きの面白さもあり、まるですぐれたミステリを読んでいるような気分になる。またひとりの少年が巨人へと成長していく姿を追った伝記としても読める。そして、何よりも黒澤明の映画を観たくさせる映画本としても当然のことながらすぐれている。

それにしてもこうやって黒澤明の映画を第1作から順にたどって行くことで見えてくるものがたくさんあるのは実に驚きである。映画監督も時代を経て、変化し成長していくものなのだと再認識できる。
初期作に見られる少女たちの意味を探り、男を破滅に追いやる女とは何なのかを解明していく著者の筆致は冴えている。非常に教えられることが多かった。

もちろん著者の意見をすべて肯定するものではない。個々の作品の評価などは僕んの評価とは違うものも見受けられる。例えば著者は、「デルス・ウザーラ」(1975年)を「いちばん僕が感動した黒澤映画」(305ページ)と書いているが、僕は全く感動できなかった。それどころか映画館(池袋の文芸坐)で観ていて少し居眠りしてしまったくらい退屈だった記憶しかない。まあ、35年前に一度観たきりなのでもう一度観直してみるか。そう思わせるところがこの本の魅力のひとつである。

著者の尾形敏朗は1955年生まれ。僕より二つ年上だ。年が近くても作品の好みは違うのは当然か。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック