「シネマ大吟醸」

映画本「シネマ大吟醸」1994年ー2009年 太田和彦著 小学館文庫 2009年3月11日初版第一刷発行
2009年3月28日読了

昭和初期から戦後まで。日本映画が誇る「クラシック」の魅力を紹介。(帯より)

著者の太田和彦の本は、居酒屋関係の本を一冊読んだことがあるが、映画本は初めてだ。居酒屋本と同じ軽妙なタッチで映画について語っている。肩の凝らない気楽に読める映画エッセイだ。
ただ著者の志は高い。

「そうして発言したいのは、映画史に記載されている作品以外にも古い日本映画にはまことに豊穣な世界があり、日本映画固有の表現が特化しているということだ。」(436ページ)
「そうして受ける感銘のうち、もっとも貴いものは映画に残る古い日本ではないだろうか。今は失われた懐かしい街並、風俗、山河。貧乏でも家族の信頼や希望のあった頃、生きることに自信を持てた時代、大切と信じて守り通してきた価値、忘れそうになっていた自分がそこにあるのは、自分自身の人生の肯定につながる。古い映画の価値はそこにある。」(439ページ)

上記の文章は「あとがきにかえて」という巻末の文章だが、本文のほうではさほど声高な主張は抑えられ、楽しく読むことができる。何よりも優れた映画本に必須な「読んでるうちにその映画が観たくなる」文章が満載である。丸根賛太郎、清水宏、島津保次郎といった監督の作品が観たくて堪らなくなる。そして著者が、
「念願の石田民三作品を初めて見てすばらしさに圧倒された。」(191ページ)
と書くほど熱を入れて紹介している石田民三の作品をぜひ観てみたい。



シネマ大吟醸 (小学館文庫)
小学館
太田 和彦

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