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zoom RSS 『ジュスチーヌまたは美徳の不幸』 美徳が高くつくことはよくある話だ

<<   作成日時 : 2017/08/01 07:27   >>

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小説『ジュスチーヌまたは美徳の不幸』1791年 フランス マルキ・ド・サド著 植田祐次訳 岩波文庫 2001年1月16日第1刷発行
2017年7月30日(日)読了

(注意)ネタバレあり

表紙に、本邦初訳とあったので、「あれ、そうするとぼくが高校時代に読んだ澁澤龍彦訳の『美徳の不幸』っていうのは何だったんだろう?」という疑問が湧き、即購入。早速解説を読んでみると、澁澤訳の『美徳の不幸』は実は『美徳の不運』というタイトルの本で、ヒロインジュスチーヌを描いた三部作の第1作に当たるのだという。そして、今回読んだのが第2作で、第3作は『新ジュスチーヌまたは美徳の不幸』である。もっとも三部作と言っても続き物ではなく、独立した作品だし、内容的にも似通っていると思しい。
それにしても、お堅いイメージの岩波文庫から、あのサドの小説が出ているとは、ちっとも知らなかった。表紙には思想小説とあるので、そういう風なつもりで読んでほしいということなのか。勿論、思想小説(て、何?)としても読めるし、猥褻極まりないポルノグラフィーとしても楽しめるし、芸術であると同時に娯楽作品でもある。公序良俗を乱すトンデモナイ内容だ、と怒ることもできるし、小説は何を書いてもいいのだという爽快感も味わうのも自由。
ぼくは非常に面白く読んだ。

オハナシは、毎度お馴染みジュリエットとジュスチーヌという姉妹のうち、ジュリエットは悪徳にまみれ、それなりの社会的地位を得るが、ジュスチーヌはその美徳ゆえに信じられないような苦難の道を歩む羽目になるというもの。ちょっと仕掛けとして面白いのは、ジュリエットの前でこの異常な体験を語るのは、テレーズという名の娘。「あれ、ジュスチーヌはどうしたの?」と思いつつ読んで行って、ラスト近くで実はテレーズ=ジュスチーヌだと分かる。それまで、ずっとテレーズの話だと思って読んでいた。で、そこで初めて姉妹は互いを確認して涙の再会となるわけだ。そのあと、トンデモないことになるのだが。

テレーズ(ジュスチーヌ)は、孤児ではあるけれど若くて美しい処女。美徳の心を常に忘れず、信仰心も篤い。そんな彼女が出会うのは、ことごとく鬼畜の如き極悪人ばかり。彼らによって、テレーズは凌辱され、鞭打たれ、さまざまな虐待を受けて行く。この小説は、その悪逆非道な暴行シーンの連続で構成されているようなもの。一人の極悪人の元から何とかテレーズが逃げ出しても、また別の極悪人に捕まり拉致監禁されて暴行というパターン。全く同じことの繰り返しで、その執拗さに驚くというか、呆れる。これを読んでいると、この世は極悪非道の人間ばかりという気がしてくる。ここまで酷いとむしろギャグのように思える。しかもその極悪人どものほとんどが社会的地位のある人間ばかりなのだ。大富豪、医師、貴族、修道士、裁判官等々。その地位をむしろ隠れ蓑にやりたい放題し放題。その内容も強姦、近親相姦、男色、暴行、そして殺人とくる。夥しい数の女性たちが性的暴行を加えられ、殺されてる。しかも、それをやる男どもは、一片の良心の呵責もない、反省も後悔もない。むしろ、誇らしげに自分たちの悪行を語る、語る。さまざまな性的暴行や殺人が如何に快楽であるかを。この小説が、ポルノを越え、「思想小説」となっているのはそれがあるからだ。饒舌極まる極悪人どもが、自ら語る悪の美学、悪の哲学は極めて反道徳的だが、むしろそれゆえに道徳教育に役立つ気もする。もちろん、反面教師としての役割だが。
女性憎悪、女性嫌悪、女性蔑視も凄まじい。異常な性欲を持つ男たちは、女性を犯すが、ヴァギナよりもむしろアナルを責める。ヴァギナ(という言葉は具体的は使われてはいないが、そういうニュアンスは読めばわかる)に対する憎悪、嫌悪は女性を貶める。この小説は、1791年刊行ということだが、226年経った今でもこの女性に対する姿勢だけでも十分問題作である。

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