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zoom RSS 『メアリと魔女の花』 魔法なんかいらない

<<   作成日時 : 2017/07/17 14:28  

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映画(アニメ)『メアリと魔女の花』制作:スタジオポノック 配給:東宝 原作:メアリー・スチュアート プロデューサー:西村義明 監督・脚本:米林宏昌 脚本:坂口理子 作画監督:稲村武志 美術監督:久保友孝 声の出演:杉咲花 神木隆之介 天海裕希 小日向文世 松島ひかり 佐藤二朗 遠藤憲一 渡辺えり 大竹しのぶ 上映時間103分 

(注意!)ネタバレあり。メアリー・スチュアートの原作のネタバレもあり。

『借りぐらしのアリエッティー』『思い出のマーニー』の米林宏昌監督の新作アニメ。今回も含めて3作とも原作はイギリスの児童文学である。前の2作も傑作ではあるけれど、原作を上手く昇華しきれていないきらいがあった。そもそも両作とも原作はイギリスが舞台なのにアニメ化に当たって日本の話に翻案してしまったことによる無理が目立ってしまった。その反省からか、今回は、日本の話にしたりしない。もっとも、原作通りイギリスが舞台かというとそれも微妙で、敢えて特定せずに何処か西洋の国(英語を使う国)という感じ。そのせいか、メアリー・スチュアートのイギリス・ジョークであるハロッズネタがバッサリとカットされている。

冒頭、いきなりアクションシーンから始まるのも意表を突く。原作を読んだ者からすると、クライマックスシーンを先に持ってきたのかと、その大胆さに驚く。ただアクションの主役はどうやらメアリではなく、別の女性らしい。ここで原作に出てくるもう一人の魔女を持ってきたわけね。最初からこれってネタバレじゃないかしら。ま、原作を読んでない人には何が何だか状態だろうが。
シドニー・ルメット監督の映画『オリエント急行殺人事件』で冒頭にいきなり誘拐事件の話を持ってきたのを思い出した。

基本的なプロットは、原作と同じ。ただ、原作自体が短い(翻訳して文庫本で190ページ)ので、色々と継ぎ足してはいるし、変更している部分も多い。それがかなり上手くいっている。シンプルすぎる原作より面白いくらいだ。
もっとも、原作にあったシニカルさみたいなものは影を潜めているのも確かだけど。
主人公の女の子メアリ・スミスを普通の女の子に設定してあるのも原作通り。最初から魔法が使えるわけでもない。それが、ほんの偶然から魔法の花「夜間飛行」を見つけたことによって、魔法が使えるようになる。と言っても、箒に乗って空を飛ぶという魔女の基本中の基本しかできないのだが。その箒に導かれて到着したのが異世界の魔法大学。そこにいたのは、校長のマダム・マンブルチューク。ここで観客は『ハリー・ポッター』みたいにメアリが大学に入学してそこでさまざまな冒険がという期待を抱くのだが、そこはアッサリ外される。時代はさかさまだけどアンチ『ハリー・ポッター』なのだ。大学なんてろくなもんじゃない、魔法なんていかがわしいという原作のテーマは見事に踏襲されている。メアリー・スチュアートも相当の天邪鬼だと思うが、この原作を選んだ米林宏昌も天邪鬼だ。

原作と大いに違うのは、ポール少年の出番を増やしていること。かなり初めの方からメアリと出会うシーンがあり、関わりを作っている。そして、ポールは異世界の魔法大学で拉致監禁され、それをメアリが救出に行くというシークエンスは原作には全くないものだ。魔女に拉致監禁された少年を少女が単身救出に行くというのは、アンデルセンの不朽の名作『雪の女王』を思い起こさせる。あの作品の少女ゲルダもこのメアリも普通の少女であるというところに共通点がある。ま、徒手空拳で恐ろしい魔女から少年を奪還する少女が普通かというと疑問もあるが。
原作だと、メアリが再び魔法大学に行くのは、拉致監禁された猫のティブを救出すためとなっていて、原作を読んだとき、「これではメアリの動機が弱いな」と思ったのだが、米林宏昌もそう思っただろう、少年の救出というのを付け加えたのは、ナイスなアイデアだと思う。(『キネマ旬報7月下旬号』に米林宏昌インタビューがあり、その辺が詳しく載っている。)

原作では、、ドクター・デイの魔法の変身実験では、動物は他の動物になるだけだが、このアニメだと、何やら得体の知れない生き物に変身させられる。ここが実は一番の見所か。米林宏昌のフリーク趣味全開という感じでグロテスクでおぞましい。だが、そこがいい。さらに、これは全く原作にはないのだが、人間の少年ピーターを使って人体実験をやろうとするのが怖い。なるほど、動物実験を繰り返した末には、人体実験をやりたくなるのが理の当然か。この辺は、原作の先を言っている気がする。
クライマックスのアクションシークエンスも米林宏昌の本領発揮みたいな悪夢のようなシーンの連続で面白い。何やらぐにょぐにょしたものが空を飛んで襲ってくるとか、米林宏昌が作画を担当した『崖の上のポニョ』を彷彿とさせる恐ろしさ。ドクター・デイが使う体に大きな穴の開いた生き物(機械?)というのも異様としか言いようがない。
原作だと過去のもうひとりの魔女は別の人間なのだが、ここではシャーロットおばさまに変えているのも上手い。
さらに原作だと悪役マダム・マンブルチュークは墜落死するのだが、こちらでは生き延びる。その辺は米林宏昌の優しさと言っていいかもしれない。ぼくの好みとしては悪役は無残に死んだ方がいいが。
もうひとつ、原作だと、全ての魔法が解ける呪文によって、メアリの冒険もポールとのことも一切合財、記憶が消滅してしまうのだが、こちらはそういうことはない。どちらのラストがイイかは、これも好みだけど、少女の成長物語として見るならばやっぱりこちらの方がイイだろう。
全てをなかったことにしてしまうメアリー・スチュアートの力技はそれはそれで凄いと思うのだが。

「結局、やりたいカットしか描いてないんですよ」という米林宏昌(『キネマ旬報7月下旬号』より)の面目躍如の傑作。



メアリと魔女の花 ビジュアルガイド
KADOKAWA
2017-07-22

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