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zoom RSS 『地球の静止する日』 未来は変えられるだろうか?

<<   作成日時 : 2017/06/03 22:34   >>

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SF(アンソロジー)『地球の静止する日』ハリー・ベイツ他 南山宏・尾之上浩司訳 角川文庫 2008年11月25日初版発行
2017年5月27日(土)読了

(注意!)ネタバレあり

テレビドラマ、映画などで映像化されたSF短編小説9編を収録したアンソロジー。なかなか充実の内容で非常に面白く読んだ。他では滅多に読めない作品もあり、お買得の一冊。
以下、個々の作品に関して感想を書いておく。

「地球の静止する日」ハリー・ベイツ
ロバート・ワイズ監督の名作映画『地球の静止する日』の原作。て、言うか、原案と言うのが正しいような。異星人クラトゥとロボット・ゴート(ここでの名前はグナット)が突然、地球にやってくる(映画では宇宙から宇宙船で飛来する、こちらはただ宇宙船が空間に出現する)というアイデアのみ共通なだけで、あとは登場人物もストーリー展開も全くの別物。映画の感動を期待するとこっぴどく失望する羽目になる。今回初めて読んだのだが、いやあビックリした、こんな小説だったんだ。映画の持つメッセージ性なんて微塵も存在しない。
いま、初めて読んだ、と書いたが、にもかかわらず、この小説のオチは知っていた。今までに映画と共に引き合いに出されてさんざん書かれてきたからだ。曰く、「小説では、異星人は実は主人ではなく、ロボットが主人だった」というオチ。確かにその落ちで間違いないのだが、何故そうなのかという説明はなく、ラスト一行で示されるだけ。これも何だかなあ、である。人間側の登場人物も小説はプロでフリーの写真記者が主人公。映画における戦争未亡人と息子なんて出て来ない。そもそも地球は静止しない。ゴリラが出て来てロボットと戦うなんて珍場面はあるが、これ、いるかなあ。よくぞ、これからああいう傑作映画が生まれたものである。

「デス・レース」イブ・メルキオー
毎度お馴染みロジャー・コーマン先生の『デス・レース2000年』の原作。これも人を殺すと得点が加算されるロードレースという点だけが映画と同じであとは別物。映画の方は、一種の怪作になっていて面白かったが、原作の方は意外に真面目。主人公であるカーレーサーが良心に目覚め、今まで人を殺してきたことを後悔して苦悩するというのが内容。今頃、気づくってあまりに遅いなあ。そもそも殺人カーレースなんて荒唐無稽なものにこういうシリアス要素をぶち込んで主人公の精神的葛藤を描くっていうのがどうもなあ、という感じ。能天気でブラックユーモア溢れる映画の方に軍配を挙げたい。

「廃墟」リン・A・ヴェナブル
テレビドラマ『ミステリーゾーン』の傑作「廃墟」の原作。核戦争でたった一人生き残った男の悲喜劇。これは、原作とドラマがほぼ同じストーリー、登場人物であり、オチも同じ。となると、比較してみて、主人公を演じるバージェス・メレディスの好演が光る『ミステリーゾーン』の方が良かったなあ、となる。小説で読むと意外に地味で感動も薄い。

「幻の砂丘」ロッド・サーリング&ウォルター・B・ギブソン
同じく『ミステリーゾーン』からロッド・サーリングの脚本をウォルター・B・ギブソンが小説化したもの。19世紀から20世紀にタイムスリップした男の話。話の展開はほぼ同じ。これも映像の印象が強いのでドラマ版の方が良かった気がする。小説にはもう少しプラスアルファが欲しい気がする。

「アンテオン遊星への道」ジェリイ・ソール
以下の5作品は、テレビの『アウター・リミッツ』で映像化されている。
3000人の人間を乗せた星間移民ロケットは、アンテオン遊星に向って宇宙飛行を続けていた。その中で突然として、盗難、暴行、殺人といった事件が頻発する。船内に妨害者がいるのだろうか?
オチをばらすと、実はそれらの事件は全て上層部が仕組んだフェイクであり、逮捕され死刑になった犯人もお芝居していたに過ぎない。何でそんなことをしたかと言えば、長い宇宙旅行で乗客たちの抱える鬱積した気持ちを一人の犯人を仕立てることでそこに集中させ、解消するためだと説明される。まあ、そんなにうまくいくもんか、とは思うけれど、オチとしては面白い。

「異星獣を追え!」クリフォード・D・シマック
奇怪な異星獣が逃亡しているなかで、ヘンダースン・ジェイムズは、異星獣を探しだし、見事に殺すことに成功する。だが、断末魔の異星獣のテレパシーで彼は意外な真実に気付く。自分は人間ではなく、異星獣を殺すという使命を帯びた複製人間に過ぎないということを。
自分は本物なのか、偽物なのか、というのはディックが好んで扱った設定だが、シマックがこういうものを書いていたとは知らなかった。面白い。

「見えざる敵」ジェリイ・ソール
ある惑星に探査に行った宇宙船の乗務員たちが消息を絶つ。その原因を探るために軍隊が送り込まれ、異変が起きた惑星の砂漠に降り立つのだが、彼を待っていたものは・・・。
面白い。訳者の尾之上浩司は、解説で「のちのSFテレビドラマや映画に大きな影響を与えているように感じる」として例として『エイリアン2』を挙げている。全く同感だが、それにプラスして『トレマーズ』や『プレデター』なんかにも影響を感じる。

「38世紀から来た兵士」ハーラン・エリスン
未来の戦場から現代の世界にタイムスリップした男の話。これはもう、ジェームズ・キャメロンの『ターミネーター』に絶大なる影響を与えた作品としか言いようがない。タイムスリップもそうだけど、未来戦の凄惨な有様なんか、モロに『ターミネーター』が真似したと思える内容。ただし、今作の後半部は、この未来戦士を反戦の語り部に祭り上げて未来戦を阻止しようという機運になるという展開でこれは意外な話の進行だ。戦争の語り部って普通は過去の戦争を語るのだが、これはまだ起きていない戦争を体験した兵士がその悲惨さを語るところに面白さがある。未来は変えられるだろうか?でも、それで未来戦が起きないようになるとは到底思えないのがミソ。

「闘技場」フレドリック・ブラウン
SF短編の名作の一つ。ぼくも確か中学生の時にブラウンの短編集で読んで興奮・感激したのを覚えている。今読んでもやっぱりこれはちっとも色褪せない傑作。凄くシンプルな話なのだが、そのシンプルさゆえに今でもちゃんと楽しめる。そもそもこういう1対1のバトルものって、読んでいると血湧き肉躍る性分なもので。それも単なる体力勝負ではなく、頭脳を使って敵を倒すというところがいい。

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