完璧な卵

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zoom RSS 『美しい星』 覚醒せよ、地球人よ。

<<   作成日時 : 2017/06/03 11:02   >>

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映画『美しい星』原作:三島由紀夫 監督・脚本:吉田大八 脚本:甲斐聖太郎 出演:リリー・フランキー 亀梨和也 橋本愛 中嶋朋子 羽場裕一 春田純一 友利恵 若葉竜也 佐々木蔵之介 上映時間127分 カラー シネマスコープ
2017年5月26日(金)公開
2017年5月28日(日)鑑賞 TOHOシネマズ西新井スクリーン4 9時30分の回 座席Bー13 入場料1800円 パンフレット720円

(注意!)ネタバレあり。

三島由紀夫の小説『美しい星』の映画化作品。原作は、遠い昔に読んだことがあるが、今となっては、その当時どんな感想を抱いたかの記憶もないし、内容も細かいところは大部分忘れてしまった。
つまり、この映画を観るには実に理想的な条件が整ったと言えよう。原作と比較してああだこうだ言えないのはとても気持ちいい。まっさらで観る映画は気持ちいい。

テレビでお天気キャスターをやっているが、当たらないので有名な気象予報士大杉重一郎(リリー・フランキー)から話は始まる。名前には、「重」が入っているのと対照的に至って軽い感じの男。ただ、それがコミカルに流れないでどこか不気味に見えるのは、リリー・フランキーが演じているからだろう。何となく気持ち悪い、そんな気分にさせられる。その辺は、さすがリリー・フランキーと言ったところか。ああ、長い上映時間こいつに付き合うのか、と実に嫌な気分。だが、そこがいい。ただヘラヘラしているだけかと思いきや、若い女子アナ(友利恵)を愛人にしてエネルギッシュなセックスも決める憎い奴。
家族はてんでんばらばらなのも頷ける。冒頭でレストランで家族4人で食事シーンでそのことが明示される。妻も娘も息子もどこか歪なものを抱えているのが分かる。何となく、喪黒福造が現れてドーンとやりそうな、「心の隙間を持った」「寂しい人ばかり」。さすがに喪黒は出て来ないが、別の形で家族4人が4人ともドーンと覚醒する。
夫は、自分が火星人であると覚醒し、妻(中嶋朋子)は、如何にも胡散臭げな天然水販売に熱中し、娘(橋本愛)は、一人の男と出会い、自分が金星人であることに目覚め、息子(亀梨和也)は代議士と秘書に出会い、自分が水星人であると目覚める。それまでのとても充実して生きているとは言えない怠惰な日常生活の描写から一転、相当に怪しげな出来事次々起きてくる。そのギャップが面白い。
この映画のテーマが家族なんだと分かってくる。

父は、地球温暖化による地球の危機を憂い、番組でもそれをどんどん訴えるようになる。通常の天気予報そっちのけのその行動が問題になるかと思いきや、「面白い」と評判になり、むしろ視聴率は上がり、周囲の評価も高くなる意外な展開もユニークで面白い。要するに世間は、「惑星連合」を名乗る重一郎のキャラとその言動を面白がっているだけで彼の主張の中身が世間に何かインパクトを与えるわけではない。また、その主張にしたところでただひたすら危機を訴えるだけで、では具体的にどうすればいいのかという方策を持ち合わせているわけではない。それに何しろリリー・フランキーだから、どんなに熱弁をふるっても説得力がない。その空回りの様子が面白い。
一方、彼に対峙するのは、弁護士秘書の黒木(佐々木蔵之介)で、彼もどうやら宇宙人らしい。彼の主張は、地球温暖化はそのままにしておいてそれで人類が滅びるのならそれも良しという考えのようだ。彼は重一郎に言う。
「私はあなたよりも人類を信頼しています」
と。
クライマックスは、重一郎、黒木、そして重一郎の息子一雄の三者に討論のシーンである。ここは非常に重要なシーンではあるけれど、映画としてはどうだろうか。文学や演劇の領域であって映画として盛り上がるシーンではないと思う。

重一郎の娘暁子を演じた橋本愛が美しい。それもどんどん美しくなっていく。孤独な女子大学生が、「出会い」を経て、自分が金星人だと自覚して、ついには処女でありながら妊娠するという過程で美しさは加速度的に増していく。現代の「歪んだ美」を正すために自分が美の見本を示すという志でミスコンに出場する。そのミスコンのウェディング・ドレス姿が超絶綺麗。

ラストは、末期癌を患って余命いくばくもない重一郎を家族3人が支えて、重一郎を迎えに来る空飛ぶ円盤が着陸する場所まで連れて行くシーン。最初の方のレストランのバラバラな家族の有様と凄く好対称で面白い。あえて、最初と最後にこういうシーンを持ってくる構成の妙。
橋本愛が言う「来てるよ!」は映画史に残る名セリフ。いつか、本当にそれが来ることを願わざるを得ない。

結局、最後まで何も解決していない。重一郎が主張したことがどれだけ真剣に受け止められたかも疑問だし、人類は破滅の道に進んでいくだけなのか、も不明。
一雄が、作中で言っていたように、本当の彼が政治家になって世界を変えるかもしれない。暁子は、悪い人間の男に騙されて中出しされたのではなく、本当はやっぱり男は金星人で、これから生まれてくる子どももやっぱり金星人で、これからの世界を変えるかもしれない。そんなことを思ったりもした。

映像的には、ラストの空飛ぶ円盤の中から見た景色が圧巻。地球から遠ざかる空飛ぶ円盤。そこに乗っているのは重一郎。彼が円盤の窓から地上を見下ろすとそこには彼の家族3人と彼自身がいた。そこがとても良い。円盤の彼は魂であり、地上の彼は肉体の抜け殻なのだろうか。ここは撮り方が上手いので非常に印象に残る。

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