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zoom RSS 『地球の静止する日』 私は地球人に警告する

<<   作成日時 : 2017/05/27 09:41   >>

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映画(DVD)『地球の静止する日』THE DAY THE EARTH STOOD STILL 1951年 アメリカ 20世紀フォックス 監督:ロバート・ワイズ 脚本:エドマンド・H・ノース 音楽:バーナード・ハーマン 出演:マイケル・レニー パトリシア・ニール ビリー・グレイ サム・ジャッフェ ヒュー・マーロウ 上映時間93分 モノクロ 日本語字幕スーパー版 字幕翻訳:金田文夫 映像特典:ロバート・ワイズ監督とニコラス・メイヤーの音声解説
2017年5月21日(日)鑑賞

(注意!)ネタバレあり。ハリー・ベイツの原作小説のネタバレもあり。

映画『メッセージ』を観たので、同じファースト・コンタクトテーマのSF映画である本作を観てみた。過去に何回か観ているはずなので大まかなストーリーは頭に入ってはいるのだが、久々に観ると、「こんな映画だったのか!」という思いが強い。やはり昔観た記憶だけで語っちゃイカンということだな。

ある日突然、アメリカのワシントンに一台の空飛ぶ円盤が飛来し、着陸する。その中から現れたのは、クラトゥと名乗る異星人とロボット・ゴートだった。彼らが地球に来た目的は何か?

まずこの映画、「友好型異星人」を扱った映画ということになっていたように記憶している。映画雑誌なんかでは、『宇宙戦争』などの「攻撃型異星人」と対にして分類されていたようだ。このDVDのパッケージにも「心優しき宇宙人が地球に救いの手をさしのべた・・・」という文言がある。
でも、実際に映画を観てみると、友好的でもないし、心優しくもない。そりゃ、『宇宙戦争』や『インディペンデンス・ディ』みたいに人類皆殺しをするわけではないけれど、ゴートは人間二人を殺して(消滅)いるし、クラトゥは短時間地球上の電力を止めて脅しをかけている。人類に対する警告なのではあるけれど、警告の意味合いが問題だ。
クラトゥは、「地球内の争いには関心がない」と言い放つ。地球人同士で殺し合い滅亡してもどうぞご自由に、というわけだ。ただ、近年、宇宙開発でロケットを飛ばすようになったのは看過できない、となったようだ。宇宙にまで侵略の手を伸ばすことになったら、宇宙の秩序を乱すから絶対許さない。容赦なしで滅亡させる。
ここでロボット・ゴートの役割が明らかになる。異星人たちは、宇宙の平和維持をロボットに一任している。ロボットは、宇宙をパトロールしていて、敵対し攻撃してくる惑星があれば、永続的に反撃して殲滅させるという。つまり究極の殺戮破壊兵器というわけだ。
このくだりは忘れていたなあ。てっきりゴートはクラトゥのボディーガード的存在と思っていたが、そんな奴だったとは。
ハリー・ベイツの原作では、実はロボットは主人でクラトゥは従者だったというオチがあるのだが、そのもののオチではないけれど、映画の方にも反映しているように思える。

作品としては、非常に良く出来ていて面白い。再見に耐えうる名作だと思う。確かに今見ると特撮は稚拙に見える。特に着ぐるみ感丸出しでロボットらしい硬質さが出ていないゴートはもうちょっとどうにかならんのか、と言いたくなる。ゴートが女性を抱きかかえて運ぶシーンであからさまにワイヤーが見えるのも何だか面白い。ロバート・ワイズの音声解説に依れば、ゴートは構造上、女性を運ぶのに適さなかったので、そこは女性をワイヤーで吊るさざるを得なかった、と。
空飛ぶ円盤は、ミニチュアではなくアニメ合成で、これはなかなか良かった。もっとも地上に着陸するとややハリボテ感がするが。
そういう特撮シーンはさほど多くないのでそんなにアラという感じがしない。全体的な作りがリアリティー重視なのだが、特撮もそんなに浮いていない。映像的にはモノクロで堅実な画面作りで、ロケを多用して臨場感がある。ただし、音声解説では、予算が足りないないため、ロケのシーンは過去の映像を使ったりしていて、ワイズ監督はワシントンでのロケ撮影はしていない模様。クラトゥと少年が、戦没者を祀るアーリントン墓地に赴くシーンもあからさまに合成と分かる。二人が町を歩くシーンも代役で後ろ姿だけ撮ったそうだ。
この映画が製作された1951年には、アメリカではテレビが登場し、その大攻勢が始まっていて、映画界も予算削減で大変だったようで、20世紀フォックスの大ボス、ダリル・F・ザナックから、「カネをかけるな」と散々言われていたとのこと。「俳優のギャラがかかるからリハーサルは何度もやるな」とか「別アングルから撮影したりするな」とかも言われたらしい。結局は、ワイズ監督が押し切った。
でも内実はともかく、映画を観る方としては、大作感があってなかなか豪華な感じ。それは、ミニチュアではなく、実際の戦車や軍の車両が出てきたり、群衆シーンの人の数の多さだったりする。そういうところに感心する。
ただ、戦車なんかは、シナリオを読んだ軍関係者が難色を示し(反戦、反原爆、反宇宙開発のメッセージが問題か?)、借りられず、結局、伝手を辿って州兵から借り受けたとのこと。
群衆シーンも実際に集めたのは¼の人間たちで、それを合成技術で多く見せているのだという。なるほどねえ。何となくこの時代はCGなんかないから全部ホンモノでやった、とつい思いがちだけど、そんなことはないのだな。映画っていうのはいつの時代も作り物をホンモノと思わせるところが真骨頂なわけで。

ストーリー自体もシンプルだが、非常に緊迫感があって飽きさせない。それを支えているのは、異星人クラトゥを演じるマイケル・レニーだろう。背が高く見栄えがするし、その表情も時に人間離れしたところも垣間見せて、実に味わい深い。まさに異星人という感じ。音声解説に依れば、ダリル・F・ザナックがヨーロッパで舞台に出ているレニーを見つけてアメリカに招いたのだという。
この役がピタリと決まっているので、彼の逃亡劇および地球人の母子の絡みという話もスンナリ受け入れられる。
中盤に出てくるサム・ジャッフェ演じるバーンハート教授もなかなか面白いキャラだ。音声解説でニコラス・メイヤーが「アインシュタインに似ている」と言い、ワイズ監督が「そのつもりの設定だ」と受けるのも興味深い。こういう如何にも天才だけど、奇矯な変人科学者(に見える)って1951年の昔からアインシュタインのイメージだったのか。
母親役のパトリシア・ニールもいい。どこか知的で上品な未亡人という感じ。ゴートに襲われそうになって、恐怖に震えながらも、ゴートを制止する言葉「クラトゥ・バラダ・ニクト」を言うシーンは映画史に残る名シーン。
ただ、ニコラス・メイヤーが指摘するように、こんな素敵な女性が、なんでヒュー・マーロウ演じる酷い性格の男を恋人にしているかが問題だ。わざわざこんな「悪役」を設定する意味はあったのか。

ワイズ監督は「意識していなかった」と言うが、ストーリーから宗教的含みが感じられるのも確か。クラトゥが人間社会に逃げ込むときに使う偽名がカーペンター(大工の意味がある)だったし、クライマックスで射殺されたクラトゥがラストで復活するのもそうだ。いずれもイエス・キリストを思わせる。
クラトゥが、「死を引き延ばしただけだ」というのも意味深。完全なる復活ではなく、しばしの猶予ということなのか。

クラトゥが最初望んだ、世界の元首クラスを集めてその全員の前で警告を発するという試みは頓挫してしまう。この辺は当時の米ソ冷戦時代を皮肉っていて面白い。国連も全体をまとめる力を持っていないことが指摘される。
「ワシントンでやらなきゃ、行かないよ」と「モスクワでやらなきゃ、行かないよ」の対立。
結局、バーンハート教授の人脈を使って世界各国から集めた科学者たちで代用しているんだが、本当はこれじゃダメだろう。政治的なリーダーたちは、こんなものは認めないに決まっている。
ラスト、クラトゥとゴートを乗せた円盤は空の彼方に消え、THE ENDになるのだが、全く何も解決していないし、進展さえしていない、ハッピーエンドともバッドエンドともいえないラスト。それが面白い。世界は平和になりました、とならない宙ぶらりんな感じがいい。復活した後のクラトゥの表情が前にも増して堅く暗く見える。

もし、続編が作られるのなら、ゴートが再び地球にやって来て殺戮と破壊の限りを尽くす、そんなオハナシが観てみたいと心から願う。

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