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zoom RSS 『映画評論・入門!』 いやあ、映画って素晴らしいものですね。

<<   作成日時 : 2017/05/23 07:24   >>

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映画本『映画評論・入門! 観る、読む、書く』モルモット吉田著 洋泉社 2017年5月24日初版発行
2017年5月21日(日)読了

(注意!)内容に詳しく触れているので未読の方は自己責任でよろしく。

気鋭の映画評論家によるユニークな本。
「映画がなくなったら困るが、映画評論がなくても困らない。」
これがこの本の冒頭の一行。確かにその通りである。今のようなインターネット時代には、ちょっとネットを覗けば、映画に関するさまざまな感想・評論・批評が溢れかえっている。プロもアマも有名も無名も一緒くたの正にカオスな状態。そんな中で映画評論家の権威の失墜が甚だしいと感じる。いや、そもそも、権威なんかあったのだろうか。
著者は、そもそも映画評論とは何かということから始めていくのだが、
「結局のところ、感想・評論・批評・レビューの違いに頭を悩ませているヒマがあるなら、感想をどんどん深化、発展させて評論・批評になるような文章をいかにして書くかを実践する方が早いということになる。」(15ページより引用)
そこで、かなり具体的に映画評論の書き方のレクチャーになる。そこがいかにも今風で面白い。まず準備として書こうとする映画のDVDなりブルーレイを買って観る。自分の感想をメモにする。そこから資料収集。最初はウィキペディアでいい。そこからブルーレイなどの映像特典のチェック、紙媒体の参考資料(パンフレット、原作本など)の収集と進め、それらを下地にして自分の評論を書くという手順。実に分かりやすい。ネットも紙媒体もどちらも駆使して上手く利用する柔軟さがいい。当たり前のことを書いているようにも見えるが、当たり前をきちんとやることを教えて貰った感じ。

ここまでが、「第1章 映画評論を見る」「第2章 映画評論を書く」の部分。続く第3章は、「映画監督VS映画評論家」と題して、両者の間に起きた映画論争について幾つか取り上げている。ぼくなども断片的には知っていることではあるが、著者は当時の資料を小まめに当たって検証し、面白くてためになる文章に仕上げている。これも先ほどの映画評論の書き方の実践・応用編といったところか。
ちなみに取り上げられているのは、「市川崑VS映画評論家 『処刑の部屋』論争」「『壁の中の秘事』国辱事件」「『東京オリンピック』と高峰秀子の〈実践的〉映画批評」「北野武の映画論争」。いずれも非常に興味深い。
せっかくだから、映画評論家VS映画評論家論争みたいなのも読みたかった。「竹中労VS山田和夫」「南部圭之助VS山田宏一」「小林信彦VS花田清輝」とか。

「第4章 ベストテンとは何か」映画評論家の「踏み絵」となった日活ロマンポルノと『仁義なき戦い』についての章。このあたりは、ぼくもリアルタイムで観ているので面白い。あれ、でも著者は1978年生まれの39歳なので、1971年開始の日活ロマンポルノも1973年公開の『仁義なき戦い』も生まれる前で当然リアルタイムで観ていない。それでいて、こんなに当時の空気を捉えた文章が書けることに感心する。と、同時にリアルタイムで体験したことをつい自慢したがるぼく自身を顧みて、些か反省。

「第5章 リアルタイム映画批評REMIX」リアルタイムで映画は批評されたかを当時の雑誌・新聞・書籍を当たって検証する章。実はここが一番面白かった。こういう本が出ないかと夢見ていたのだ。当時の批評だけを集めた本、もしくはインターネットのサイトって今のところ見当たらないから。ネットで検索しても高々10年くらいの時評しか出て来ない。『キネ旬』のサイトでも映画のあらすじは見ることはできるが、批評はない。著作権が絡むせいだろうか。
ここでは、
『七人の侍』
『ゴジラ』
『世界残酷物語』
『2001年宇宙の旅』
『仁義なき戦い』
『犬神家の一族』
『太陽を盗んだ男』
の7本が取り上げられている。いずれも名作・傑作・問題作の誉れ高い映画ばかりで、それらが公開当時にどう評価されたか一望できるのが誠にありがたいし、面白い。作品の賛否は色々だけど、これだけハイレベルの作品だけに批評も結構熱の入ったものが多い。『七人の侍』が意外に評価が低いとか、『ゴジラ』もその良さと問題点が論じられていたんだなあというのが分かる。『太陽を盗んだ男』の大黒東洋士の問題提起も頷ける。て、言うか当時はぼくも『太陽を盗んだ男』ってそんなに傑作か?と疑問を持っていた方なので。
『ゴジラ』より『ゴジラの逆襲』の方が出来がいい、という双葉十三郎の意見がやっぱり今でもユニーク。あと、『犬神家の一族』に対する作家金井美恵子の酷評は、当時も読んで面白かったが、今でも面白い。罵倒が芸になっているのだ、彼女の場合。もっとも、これを読んでも『犬神家の一族』は傑作だとぼくは思うけれど。

「第6章 映画と犯罪、映画評論と犯罪、映画評論家と犯罪」映画評論家・増田貴光の名前を久々に見た。そして、彼の犯した事件の詳細も知ることができた。でも、何だか悲しくなるような事件だな。遠い昔、毎週、テレビの彼を顔を見ていただけにそう思う。

全体的に文章が平易で分かりやすく読みやすい。何より面白い。この本を読んで映画評論家になろうと思う人がいるかどうか知らないが、刺激になることは確か。いい加減ロートルの映画ファンのぼくも改めていろいろ楽しく勉強になった
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