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zoom RSS 『美女と野獣』 美人は飽きる、醜い男は慣れる。

<<   作成日時 : 2017/05/03 07:26   >>

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童話(昔話)『美女と野獣』ボーモン夫人著 村松潔訳 新潮文庫 2017年3月1日発行 
2017年5月2日(火)読了
 
(注意!)ネタバレあり
先日、ディズニーによる実写映画版『美女と野獣』を観て、久々に原作が読みたくなったので今年3月に出たばかりの新訳版を買って読んでみた。忘れている部分も多々あり、興味深く読むことができた。

収録されている昔話は13編。訳者の解説に依れば、
「ボーモン夫人は、どの昔話についても出典を記してはいませんが、前書きのなかで、他人の著作物のなかでも利用できるものはすべて拝借して、自分流に書きなおした(当時は著作権という考えはまだ一般に広まっていませんでした)と言っている」
そうである。
ボーモン夫人は教育者として名を馳せ、特に女子教育に尽力し、その一環でこの昔話も道徳教育という意味合いが強いものと思われる。時として反道徳だったり、グロだったりエロだったりもするシャルル・ペローやグリムとはだいぶ違う。勧善懲悪が徹底していて、不品行な者は不幸になり、心正しき者は幸福になるというパターン。それにいやに顔の美醜にこだわった話が多い。それはボーモン夫人が女性で読者対象も少女だったから、ということなのだろうか。そして勿論、顔の美しさよりも内面の美しさの方が素晴らしい、というのがお定まりの結論である。
いくつかの作品の感想を記しておく。

「シェリー王子の物語」
尊大で、傲慢で、頑迷な性格の王子が、仙女によって野獣に代えられてしまう話。「美女と野獣」と同じネタなんだが、こちらは人間時代から王子を描いているところに違いがある。しかも、反省し、善い行いをすると野獣から小犬に、さらに小鳩に変身させられる。そのあとで魔法が解け、王子に戻って愛する娘と結婚するのだが、やはり「美女と野獣」の方がインパクトが強い。小鳩⇒王子よりも野獣⇒王子の方が。

「美女と野獣」
こちらは人里離れた城に一人住む野獣の元に一人の若い女性が行かなければいけなくなる話。野獣の正体を伏せて置いて、ヒロイン・ベル(美女という意味)に感情移入させるのがいい。これを読むと、ディズニーのアニメも実写映画もこの短い原作を思いきり膨らませて、随所にアレンジを加えて見事な作品に作り替えたんだな、ということがよく分かる。日用品にされた使用人なんてのは全く出て来ない。恋敵のガストンも出て来ない。その代り、ベルに意地悪する姉が二人出てくる。ディズニー版では、この二人はいない。「シンデレラ」と似てきちゃうからか。ちなみにこのオハナシのラストでは、仙女によって姉二人は王女となった妹の宮殿の入り口の石像になってしまう。「ただし、石の中に埋もれても意識は保ったままになり・・・」
シンデレラの姉二人は鳥に目玉をえぐられたし、意地悪な姉の扱われ方は非道で鬼畜である。

「三つの願いの物語」
貧しい夫婦の前に仙女が現れ、「あなたたちの三つの願いごとをかなえてあげましょう」と言った。夫婦は、何を願おうかと思案して悩んでいたのだが・・・。
タイトル通り「三つの願い」を題材した作品。ストーリー展開もオチもいつか読んだような話なのはまあ仕方がない。それにしても18世紀に既にこのパターンの話があったというのが驚き。これってオリジナルはどこまで遡れるのだろうか。『千夜一夜物語』あたりとかかな。
これも教訓的なオハナシと言えるけれど、悪行の報いで残酷な罰を受けるというのではなく、ユーモラスにオチが附くのでホッとする。

「ジョリエット」
ジョリエットは仙女によって、生まれてから20歳まで話すことができない魔法を掛けられた。従って意思疎通は身振り手振りと筆談のみ。だが彼女は、いつの間にか人の話を立ち聞きしたりして得た情報を他の人に漏らしたりする「告げ口屋」になってしまった。その告げ口で町中に揉め事を起こし、ついには人が死ぬことも・・・。
人を陥れようとする悪意などは全くないのだが、何の考えもなしに他人の話を検証もせずに自分流にアレンジして拡散させる人間って18世紀だけじゃなく12世紀のネットの中でもいるわな。
結局、そのせいで最愛の夫は死に自分も後追い自殺をするという悲惨な結末。改心してハッピーエンドというわけにはいかない。

「寡婦とふたりの娘の寓話」
ある日、未亡人とふたりの娘の前に仙女が現れ、「長女は王妃になり、次女は農婦になるでしょう」と告げる。その言葉通り、長女ブランシュは王様に見初められて結婚、次女ヴェルメイユは農夫と結婚した。
王妃になったブランシュは幸福も束の間、王様は早くも妻に飽きて愛人を何人も作り、妻は放置状態。それから3年。鬱になったブランシュは、田舎に住む妹のところに行くことにした。そこでブランシュは自分がいるべき場所を見つけた。
王子様もしくは王様と結婚してメデタシめでたしは昔話の王道だが、これはその先を描いた話。子ども向けなのに「愛人」とかいいのかな。でもなかなかユニーク。ただ、「高望みするな、分相応の生活をしろ」という説教にも思える話。

「スピリチュエル王子」
悪い仙女によって、生まれてすぐにこの世に二つとない醜い顔にされたスピリチュアル王子の話。王子は美しいがこの世にまたとないほど愚かなアストル王女に出会い、恋に落ちるのだが・・・。
王女は良い仙女のお蔭で賢くなり、スピリチュアル王子の素晴らしさに目覚める。で。仙女が王子の醜い顔を美しくするのかと思ったら、それはなしで醜いまま。慣れてしまえば、顔の醜さなどなんてことはないというオハナシ。「美人は三日で飽きる」というが、その逆で「ブ男は慣れる」か。

「きれいな娘と醜い娘」
非常に美しい姉べロットと非常に醜い妹レードロネットの話。ボーモン夫人の美醜への拘りは生半可じゃないのがよく分かる。で、結局、顔が美しくても中身が空っぽで知性がないと、誰からも相手にされませんよという教訓話。これは珍しくも仙女が登場しない。従って、べロットは愚かさゆえに夫に去られた自分を反省し、自ら知性を身に着ける努力をしなければならない。そこが面白いところ。
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