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zoom RSS 『そして誰もいなくなった』&『そして誰もいなくなった』 この世でいちばん罪深い殺人者

<<   作成日時 : 2017/03/31 05:49   >>

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小説(ミステリ)『そして誰もいなくなった』AND THEN THERE WERE NONE 1939年 イギリス アガサ・クリスティー著 青木久惠訳 ハヤカワ クリスティー文庫 2010年11月15日発行 2015年4月25日13刷
2017年3月28日(火)読了

テレビドラマ『そして誰もいなくなった』原作:アガサ・クリスティー 脚本:長坂秀佳 監督:和泉聖治 出演:仲間由紀恵 沢村一樹 向井理 大地真央 柳葉敏郎 藤真利子 荒川良々 でんでん 夏菜 國村隼 余貴美子 橋爪功 津川雅彦 渡瀬恒彦 ナレーション:石坂浩二
2017年3月25日(土)、26日(日)放送 テレビ朝日

(注意!)ネタバレあり。

日本では初のテレビドラマ化だという『そして誰もいなくなった』を二夜連続で見て、面白くもあり、不満や疑問もありで、久々に原作を読みたくなったので、早速読んでみた。
久々、と書いたが、今まで読んできたのは清水俊二が訳した版であり、今回読んだのは、2010年に出版された青木久惠による新訳で、これは初めて読む。
以下、まずは原作小説の感想を中心に記しながら、ドラマについても触れて行きたい。

今回、まず目を惹いたのが、ここに登場する島が、従来の「インディアン島」ではなく、「兵隊島」であり、数え歌は「小さなインディアン」ではなく、「小さな兵隊さん」であることである。ドラマでもそのようになっていたので、「ああ、ドラマでは変えて来たのだなあ」と思ったが、そもそも原書からして改変したようで、訳書はそれに従ったものらしい。ま、今の御時勢で、インディアンは使えないよなあ。そもそもインディアンの前は「ニガー」だったようなので、それはもっと使えない。
あいにく、今、手元に清水俊二訳の版を持っていないので比較はできないが、他にも例えば「きちがい」などという言葉が変えられているように思う。これもまた仕方のないことか。
そういうところを別にして、青木久惠訳は非常に読みやすい。ま、文庫の文字が大きくなってぼくのような年寄りにも親切ということもあるが、ひらがなが多く、スラスラと読める。会話文も柔らかく自然でスンナリ頭に入って来る。ただ、その分、軽快すぎて重さというか、緊迫感に欠けるきらいがある気がする。
清水俊二訳をもう一度読んでみて比較してみたい。

原作を読むと、今回のドラマはかなり原作に忠実にストーリーを作っていることが分かる。もっとも、ドラマの後半で天才刑事が出てきて捜査するパートはドラマオリジナル展開であって、そこがどうにも上手くないのでガッカリする。そもそも、原作では、捜査に当たった警察が、全く謎を解けずにお手上げ状態で終わり、そのあとで犯人が書いた瓶入りの告白文で真相が明らかになるという展開なのであり、あえて「名探偵」を出さずに真犯人の勝利で終わるところが、一番大事なところなのに。
そういう致命的に駄目な部分もありながらも、ドラマは部分的には原作よりも良く出来ているのも事実で、ドラマを見ることで、原作の弱点に気付くことになる。

まず気になるのが、真犯人が書いた招待状。過去の友人や知人を装って誘い出すのだが、インターネットもない時代にこれだけ交遊関係を調べ出すのは大変だったろうな、と思う。て、言うか無理だろう。ここは前に読んだときも気になったが、ドラマ版の方が、割と常識的に処理出来ていたのでこちらの不自然さが目立つ。
もっとも、不自然と言い出すと、きりがない。そもそも、9人の罪深き者を探し出し、過去の所業を暴く作業だって相当難しい。そう都合よく行くか、という気がする。
その辺を結構大胆に力技で強引に押し切ってしまった感が強い。雑と言えば、雑。ただ、この絵空事のような話は、実に魅力的なのである。緻密さなど求めない。パワーに引き込まれ、有無を言わさず読まされてしまう。
アガサ・クリスティー全作品の中でも影響力という点ではピカイチだろう。
閉ざされた場所に少人数の男女が集められ恐るべき殺人ゲームが行われる。なんと素晴らしいシチュエーションであることか。

それにしても、これは理不尽な話だ。真犯人は9人の人間を「過去に殺人を犯し、裁きを逃れた者」として、島に集め次々に殺していくわけだが、実のところ、9人で実際に殺意を持ち自ら手を下して人を殺した者はいないのである。自動車で人を撥ねて殺した男にしたって、普通に考えれば事故に過ぎないので殺されるほどの大罪と思えない。
警察官が裁判で偽証したことによって刑務所に送られた男がそこで病死したからといって、偽証した男が殺したことになるか?
老婦人が使用人の若い独身女が妊娠したのを厳しく叱責したら、自殺した。それは老婦人が自業自得で罰を受けるべきなのか。
他の人も同じ。どう考えても、死刑に値する案件は一つもない。そこがこの小説の一番恐ろしく、そして素晴らしい所である。歪んだ正義感を持った真犯人の眼から見れば、それらは許されざる犯罪なのである。だが、到底、この真犯人に共感することはできない。極めて自己顕示欲が強く、自己中心的で、自らを神のように思っているこの人物を1939年という昔に作り上げたのにはひたすら感心する。まさにこれはサイコパスによる連続殺人を描いたすぐれた作品なのである。

真犯人は、9人の中でも「罪のもっとも軽いものは最初に死ぬべきだと、私は考えた。血も涙もない冷酷な犯罪者ほど、恐怖を長く味わって精神的に苦しむべきだ」(373ページ)と告白文の中で言っている。罪のもっとも軽いのは、交通事故で人を死なせた男であり、逆にもっとも罪が重いのは、まだ幼い少年が死ぬように仕組んだ女性なのである。この辺に真犯人の、あるいは、クリスティーの心境がよく出ているように思える。
この世でもっとも冷酷な犯罪は、子どもを殺すこと、という。
(つづく)
そして誰もいなくなった (クリスティー文庫)
早川書房
2012-08-01
アガサ・クリスティー

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