完璧な卵

アクセスカウンタ

zoom RSS 『モアナと伝説の海』 「刺青の男」あるいは、「少女の貝殻」

<<   作成日時 : 2017/03/25 00:03   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

アニメ(映画)『モアナと伝説の海』

(注意!)ネタバレあり

マウイは、半神半人と云う存在。パンフレットに掲載された後藤明氏(文化人類学者・考古学者)の文章によれば、「ポリネシアではもっとも人気のある神」だという。そして、「全身入れ墨をしていたと言われる」。その伝説をもとにこのキャラが作られているようだ。極めて陽気で自由奔放、傲慢とも思える自信家、だが人間的な魅力にあふれている。なるほど、これなら「人気のある神」なのもよく分かる。
だが、アニメにするには、「全身入れ墨」というのがネックにならなかったのだろうか。日本だとこういう主要キャラに「全身入れ墨」男を配置するなんて考えられない。特にこういう明らかにファミリー向けアニメでは、教育上よろしくない、という声が出るのは必至だろう。
一応、マウイの入れ墨は、マウイの言によれば彫ったのではなく、自然に浮かび上がってきたということになっている。しかも、その絵柄は過去の出来事を表している。要するに「物語」になっている。どことなくレイ・ブラッドベリの『刺青の男』を思い出す。あれは確か、刺青が未来の出来事を物語るという筋立てだった。
マウイの場合は、さらにミニ・マウイと呼ばれる絵が描かれていて、それがマウイ本人と色々やり取りをするという設定である。モノローグとは違う、ボケと突っ込みを一人でやるというコミカルさ。
ディズニーアニメの特徴は、伝統的に人間のキャラは5本指、人間以外(動物、怪物、人形、ロボットなど)のキャラは4本指に描くということであるが、今回のマウイは5本指。半神半人でも人間の範疇に入れられたんだなと思うと面白い。

マウイを探し出したモアナは、マウイと一緒に、かつてマウイが盗んだ命の女神テ・フィティの「心」を返しに行く旅に出る。冒険譚において「宝探し」パターンは多いが、これはその変種だろう、「宝返し」というのは。返すことによって世界の秩序は回復し、侵攻してきた「闇」が消え去るのだ。
マウイとしては海底に沈んだ自分の大切な大きな「釣り針」を捜すという目的もある。
モアナとマウイの旅は海の旅。そこがこのアニメの一番の特徴。観ていて凄く爽快感のある海の描写である。そして、海そのものがまるで一つの生物のように見える描写も目立つ。スピリチュアルなものへの接近と言おうか。もう一歩踏み込むと、そこでお説教が始まるような気もする。自然賛美というありがたいお説教が。
ただ、そういう方向性にはならない。モアナにとって自然は日常だから、取り立ててそれを賛美する必要もなく、ただ享受すればいいものだから。

冒険譚なので当然ながらさまざまな苦難がモアナとマウイを待ち受けている。一番面白いのは、二人を襲う海賊の大集団。見た目は小さくて可愛いのに極悪非道というのがいい。ちょっと、いやかなり『マッド・マックス』にインスパイアされた感じなのが愉快痛快。
他には、マウイの釣り針を手に入れた巨大カニのタマトア。こっちは凶暴というより、コメディリリーフみたいな感じ。エンドクレジットの後で再登場するが、引っくり返ったままで起き上がれない。そこで一言、
「俺がお姫様のペットの赤いカニで、名前がセバスチャンだったら助けて貰えたのになあ」
何故、セバスチャン?

クライマックスのラスボスは、溶岩のモンスター。どことなく、『風の谷のナウシカ』に出てきた巨神兵を思い出させるキャラ。そういえば、ナウシカと巨神兵って戦ったわけではないのだな。こっちのモンスターはモアナ、マウイと死闘を繰り広げる。
で、モンスターにテ・フィティの「心」を与えると、急激な変化が見られる。何と緑に覆われた島になってしまう。そしてそれが、テ・フィティなのである。何とも不思議な展開。「心」が戻り秩序が回復した途端にがらッと変わってしまうのは確かに意外だが、妙に拍子抜けしてしまった。結局、絶対悪みたいな存在は出て来ない。

そして恋愛要素も皆無。モアナとマウイがくっつくような展開はナシ。あくまで自由に生き束縛されず、自分は行きたい場所に行くマウイ、村長(むらおさ)の娘という立場で、島の人々のリーダーとして生きねばならないモアナは目指すものがまるで違う。
島では、代々のリーダーは山に一つの証しとして自分を表す石を積み上げてきた。新しいリーダーモアナは、その石の一番上に貝殻を置いた。これがもう何というか分かりやすすぎる暗喩である。どうしてもこの貝殻の形状を見ると、女性器に見えてしまうのだ。一番てっぺんに女性器が鎮座しているという構図は、実に興味深い。




ジ・アート・オブ モアナと伝説の海: THE ART OF MOANA (CHRONICLE BOOKS)
CLASSIX MEDIA
ジェシカ ジュリアス

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ジ・アート・オブ モアナと伝説の海: THE ART OF MOANA (CHRONICLE BOOKS) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『モアナと伝説の海』 「刺青の男」あるいは、「少女の貝殻」 完璧な卵/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる