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zoom RSS 『長いお別れ』 不思議の国のフィリップ・マーロウ

<<   作成日時 : 2017/02/28 05:38   >>

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ミステリ『長いお別れ』THE LONG GOODBYE 1954年 アメリカ レイモンド・チャンドラー著 清水俊二訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1976年4月30日発行 2009年11月15日73刷
2017年2月27日(月)読了

(注意!)ネタバレあり。

初めて読んだ。若い頃、読もうとして読みかけたが何だかつまらないので途中で放り投げてそのままにしてしまった。それから何十年もたって、やっと全ページ読破することができた。思っていたよりも面白かった。
まあ、1954年に出た作品だから、今となっては古臭く思えるところも多いが、それも味わいだと思えば良いだろう。ただ、それにしてもこの作品はちょっと長すぎる。文庫本に翻訳して537ページもある。この話の内容、ストーリー展開にこれだけの分量が必要だったのか。別に飽きては来ないが疑問に思う。
その辺は、著者も分かっているのか、335ページ目にこんなセリフがある。作中の小説家ロジャー・ウェイドが語ったもの。

「ぼくの小説はいつも長い。読者は長篇をよろこぶんだ。ばかなものさ。ページが多いと、いいことがたくさん書いてあると思うんだ。とても読み返す気にはなれない。書いたことの半分は忘れてる。自分の書いたものを読むのが怖いんだ」

この自虐。そして読者への皮肉。実に面白い。もちろん、ウェイド=チャンドラーとは思わないが、この辺のユーモアのセンスは大いに気に入った。

オハナシは、私立探偵である「私」=フィリップ・マーロウが、一人の酔っぱらいの青年テリー・レノックスと出会ったことから始まる。二人は友人関係みたいになるが、やがてテリーはある殺人事件に巻き込まれ、警察から逃れるためにメキシコに行き、そこで自殺する。その経過に疑問を抱いたマーロウは、独自の捜査に乗り出すこととなる。そしてロサンジェルスの上流階級の人々の様々な姿が浮かび上がってくる。

今となっては割にありきたりのオハナシであり、特にユニークなものはない。上流階級の腐敗とかいってもどうもピンと来ない。ミステリ的な趣向もそれほど気が利いているわけではない。それでも結構面白く読める。
私、という一人称で語られるフィリップ・マーロウの魅力というか。彼が、自らロマンティストと名乗るシーンがあるが、加えてセンチメンタリストであり、ナルシストである。そこがいい。探偵としてはそれほどタフな感じはしないし、能力的にも疑問。現場近くにいながら殺人を防げなかったなんてこともあった。そのへんもまたいいところだ。人間らしくて。
彼が、ロサンジェルスの地獄めぐりをして、色々な人々の闇を眺めて、ああだこうだ思いに耽るのがなんだかとてもいいのである。派手なシーンはさほどないのに何だか読まされてしまう。その辺が不思議な魅力。

テリー・レノックスは、そんなに歳ではないのに白髪と云う描写がある。何となく、テリーが白うさぎで、それに誘われて不思議の国に迷い込んだマーロウがアリスって気がする。そしてアリスのように奇奇怪怪なキャラに次から次へと出会っていく。ミステリというよりファンタジーなんだな。そこが面白い。

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早川書房
レイモンド・チャンドラー

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