完璧な卵

アクセスカウンタ

zoom RSS 『その女アレックス』 マルグリッド・デュラスを読む女

<<   作成日時 : 2017/02/21 07:29   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

ミステリ『その女アレックス』Alex 2011年 フランス ピエール・ルメートル著 橘明美訳 文春文庫 2014年9月10日第1刷
2017年2月20日(月)読了

(警告!)ネタバレあり。この小説を未読の方は以下の文章を絶対にお読みにならないようにお願いいたします。

ベストセラーになり、作品としても評価が高いミステリ。今さらだけど読んでみた。非常に面白かった。どうもベストセラーというとと二の足を踏む傾向があるが、やはり売れるものは売れる理由があるものだ。

一人の女性(アレックス)が、突然、男に誘拐され、監禁されるところから話は始まる。アレックスは小さな木の檻に入れられ、ロープで高く吊るされて放置される。満足な食事もなく、糞尿は垂れ流しという劣悪な状態のままで彼女は衰弱していって、死を待つばかり。
第一部では、そんなアレックスの様子と誘拐事件を捜査する警部の様子が章ごとに交互に描かれていってサスペンスを盛り上げて、果たしてアレックスは無事助かるのか、という興味でひっぱっていく。

主人公の警部カミーユ・ヴェルーダンのキャラ設定が面白い。敏腕なのは当然だが、妻を誘拐殺人で亡くしているというダークな過去もある。母親が有名な画家で自分も絵の才能があり、限られた写真からアレックスの絵を描いたりする。そして何より145cmという低身長。ことあるごとにその点が強調される。
部下のルイは、いわゆる富豪刑事で、長身で高くて良い服を着て、行くのは高級レストラン。同じく部下のアルマンは、ケチで有名な男。安物の服を着て、他人から貰いタバコをして、外食といったら、人に奢られる時しか行かない。随分、極端で単純な設定だが、そこが面白い。単にギャグ要員としてではなく、ラストでは、アルマンの意外な姿を見せるのも上手い。

アレックスの悲惨な状況に読者の同情を集めて置いて、第一部の終わり近くで著者は地雷を爆発される。哀れな誘拐監禁の被害者アレックスは実は、連続殺人を行っていたのだ。被害者が別件の加害者に様変わりしてしまう鮮やかな逆転である。
第一部のラストでアレックスは、自力で監禁場所を抜け出す。

第二部は自由の身となったアレックスによるさらなる連続殺人とその捜査に当たるカミーユ警部の様子がこれまた交互に描かれる。第一部でアレックスに同情した読者は、今度は残忍な手口で次々に人を殺していく彼女に嫌悪を覚える。殺される人々が、憐れに思える。
こういう風に感情を振り回されるのは、嫌じゃない、むしろ快感。著者の手の内に入って踊らされているようで。
第二部のラストで恐るべき殺人鬼アレックスは「自殺」する。

第三部は、死んだアレックスの過去が暴かれていく。そして、彼女に殺された六人の人間の過去も。哀れな被害者と思われたこの六人も実はアレックスにとっては加害者だったのだ。無差別快楽殺人と思われたものが、実は周到に準備された復讐殺人だった。またしても、逆転である。再びアレックスは同情すべき哀れな女に見えて来る。そして、まさかこれが、ミッシング・リングもののミステリとは思わなかった。
ただ、非常に面白いのは確かだが、カミーユ警部の謎解きの説明には些か納得できないところもある。一番肝心な人物がいまひとつ描けいない気する。彼がいわば「真犯人」なのだが、何故そんなことをしたのか、本当は何があったのかがちょっと分かりにくい。もやもやする。

アレックスが逃亡の際、残していった所持品のなかに、作家マルグリッド・デュラスのほぼ全作品があったというシーンが心に残った。デュラスを読む女ってどういうイメージだろう。デュラスって読んだことないが、シナリオを書いた『二十四時間の情事』や『去年マリエンバードで』から受けるのは「芸術的」って感じなのだが。
その女アレックス (文春文庫)
文藝春秋
2014-09-02
ピエール ルメートル

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by その女アレックス (文春文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『その女アレックス』 マルグリッド・デュラスを読む女 完璧な卵/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる