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zoom RSS 『伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ』

<<   作成日時 : 2017/01/22 13:43   >>

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SF(アンソロジー)『伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ』ルイス・パジェット・他著 高橋良平編 伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫SF 2016年11月15日発行
2017年1月22日(日)読了

(注意!)ネタバレあり

幻の名品を集めたSF入門書の決定版!
名翻訳家がSFマガジンに訳した160篇から厳選した7篇を収録。
(帯の惹句より)

このところどういうわけか、ハヤカワ文庫SFにおいて伊藤典夫祭りでもやっているようで、伊藤典夫の旧訳が次々に出版されている。「翻訳が古くなった」という名目で別の人による新訳がやたらに出版される現状に明らかに逆らっているのが面白い。
ハーラン・エリスンの『死の鳥』なんかは、「やっと一冊の本になったか!」と唯それだけで嬉しい。いささか、いやかなり遅いとはいえ。
今回の『ボロゴーヴはミムジイ』は、雑誌に掲載され、今では割と入手困難な短篇SFを発掘して収録しているのがミソ。惹句が謳うように「SF入門書の決定版!」というのは大げさにしても古き良きSFに触れられる良い機会であると思う。
簡単に各作品の感想を。

ルイス・パジェット「ボロゴーヴはミムジイ」1943年
この意味不明のタイトルは、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』が出典だという。作中にもチャールズおじさんという名前でルイス・キャロルが出てくるのはルイス・パジェットの遊び心か。さらに、あのアリスの物語は、チャールズおじさんが作ったのではなく、少女自身が作って話したのをおじさんが書いたのだという「新説」が楽しい。
「ボロゴーヴはミムジイ」の話自体は、時空を超えて出現した「箱」を幼い兄妹がオモチャとして遊ぶうちにとんでもないことが・・・、という内容。日常生活の中の非日常に子どもを絡ませるというのはよくある手だが面白く読める。ラストも大人から見ればバッドエンドだが、子どもからみれば未知の領域に飛び込んだのだからハッピーエンドと言えるかもしれない。

レイモンド・F・ジョーンズ「子どもの部屋」1947年
こちらも子ども絡みの話。ごく普通の両親が、ある日、自分たちの息子が、類い稀なる能力を持ったミュータントであることを知る。やがて、息子は人間の世界を離れミュータントの仲間だけが住む別世界に旅立っていく。「ボロゴーヴはミムジイ」と同じく、ラストでは子どもは去って行ってしまう。一つ違うのは、こちらでは、ミュータントたちが、代わりの子ども(ホモログ)を残していくこと。その子は、息子と全く変わらない。ただミュータントではない普通の人間だ。代わりの子どもが来てハッピーエンドっていうのは何だか凄く怖い。

フレデリック・ポール「虚影の街」1955年
これも日常的な普通の生活をする男が非日常の事態に遭遇する話。「六月十五日の朝、ガイ・バークハートは悲鳴をあげて夢から目覚めた。」これが書きだしの文章。悪夢から目覚めた彼は、恐ろしいことに気付く。六月十五日を毎日繰り返していることを。所謂リプレイもの。実は彼を始めたとした町の人々は六月十四日にみんな死んでいて、今は別の存在になって六月十五日を繰りかえしているのだ。ラストの二重のショッキングなオチが怖い。

ヘンリー・カットナー「ハッピーエンド」1948年
カットナーの超絶テクニックが楽しめる作品。冒頭に「この物語は、こうして終わった」とあって話の結末が描かれ、そのあとで「これは、物語の中間部分」が来て、最後に「物語は、こうして始まる」となる。一度読んだだけでは作者の企みが上手く伝わらないので、必ずもう一度読むべき、というか読みたくなる。
ちなみに「ボロゴーヴはミムジイ」のルイス・パジェットはカットナーが妻C・L・ムーアと合作するときのペンネーム。

フリッツ・ライバー「若くならない男」1948年
人は墓から甦り、どんどん若返っていく。インディアンと呼ばれる民族が、蜂起し、巨大な勢力に成長して行った。
文庫本で12ページほどの小品。人が若返るという現象とインディアンによる領土征服がどうつながるのかよく分からないが不思議な魅力がある。

ディヴィッド・I・マッスン「旅人の憩い」1965年
非常にユニークな発想の時間SF。やや分かりにくいが、解釈すると、地域によって時間の流れが違うという事でいいのかな。北で生活を送っている家族にとっては十年の時間が流れたが、家族と離れ南にやって来た男にとっては二十分にもならない時間。別にタイムマシンを使わなくても空間を移動しただけで時間旅行ができるという事か。現実でも国によって時差があるわけで、ぼくたちは飛行機で小規模ながら時間旅行しているとも言える。それをスケールアップしたものか。ラストのオチも面白い。

ジョン・ブラナー「思考の谺(こだま)」1959年
記憶喪失の一人の女性が主人公。だが、単純な記憶喪失ではない。彼女の心には何故かこの地球とは違う別世界の情景が度々浮かび上がるのだ。
記憶喪失を題材にしたサスペンスと思いきや、話はそれにとどまらず、とんでもない方向に進展する。何と異星からやって来た寄生生物の地球侵略のストーリーになるとは、前半までは到底想像できなかった。ビックリ。
この寄生生物、人間の体に憑りついて体のみならず精神も支配下に置いてしまうという、岩明均の『寄生獣』みたいな奴なのが面白い。こういうアイデアって手を変え、品を変え、いくらでも応用可能なんだな。
ちょっと人間側に都合がよすぎる展開ではあるけれど、先が読めない話作りは上手い。



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