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zoom RSS 『怪人カリガリ博士』 現実とは何か 私とは誰か

<<   作成日時 : 2016/07/30 06:54   >>

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映画『怪人カリガリ博士』THE CABINET OF CALIGARI 1962年 アメリカ 20世紀フォックス配給 製作・監督:ロジャー・ケイ 脚本:ロバート・ブロック 撮影:ジョン・ラッセル 出演:グリニス・ジョンズ ダン・オハーリヒー リチャード・ダヴァロス コンスタンス・フォード 上映時間106分 モノクロ 日本語字幕スーパー版 字幕翻訳:田中武人
2016年7月29日(金)DVD鑑賞

(注意!)ネタバレ、オチバレあり。『カリガリ博士』と『サイコ』のネタバレもあり。

初見。ロバート・ブロック脚本というところに惹かれて観てみた。
若い女性ジェーンが、ドライブ中に自動車がパンクして立ち往生。仕方なく、助けを求めて道路を歩いて行くと、人里離れた場所に一軒の大きな屋敷を発見し、そこを訪ねる。その屋敷の主は、カリガリと名乗る男でどこか怪しげな雰囲気のある人物だった、ジェーンは、その男の世話になり、屋敷に泊まるのだが、やがて次々に奇妙な出来事が・・・。

同じブロック原作の映画『サイコ』(1960年)に似ている。若い女性が、ドライブの末に辿り着いた場所でトンデモナイことに遭遇するというシチュエーションがまずそっくり。ブロックお気に入りのパターンなのだろうか。オハナシだけではなく撮影も『サイコ』のジョン・ラッセルが担当しているので映像的にも随分雰囲気が似ている。
発端部を観て、「これは面白くなるぞ」と思ったのだが、意外に話が弾んで行かない。どうも地味な展開なのである。『サイコ』のようにショッキングなシーン連発で、それにヒッチコックの外連が発揮される作品と比べるとかなり見劣りする。
カリガリと彼の使用人、屋敷のお客などの人々がいかにもいわくありげで怪しさ満点なのはいいとしても、そういう思わせぶりなところだけで引っ張って行くのは無理がある。狭い空間での会話劇も結構なのだが、映画としてのハッタリが不足している。舞台で演劇として観たら面白いんじゃないかとも思った。
屋敷から出られなくなる、というジェーンの切羽詰まった焦燥感も今一つ伝わってこない。他の人物もどこか変だが、このジェーンというヒロインも相当に変。
彼女が目撃した「女性が殺される」シーンも現実味がないし、カリガリが彼女にあるカードを見せたら、「卑猥だわ」と拒否するのもよく分からない。

(再度、注意。というか警告)クライマックスからラストにかけての部分をネタバレします。

全てはジェーンの見た幻想だった。実は彼女は精神病の患者でカリガリは精神科医、彼の屋敷は彼が院長を務める精神病院だった。今まで描かれてきた話も映像も現実逃避したジェーンの心が作り出したものであり、カリガリが行ったのはジェーンに対するショック療法であった。
絶叫しながら殺された女性は生きていた、彼女が電気ショック療法の際に悲鳴を上げたのを聞いたジェーンが妄想で「女性が殺される」シーンに作り替えた。カリガリが見せたカードは、ロールシャッハカードでそれを卑猥なカードだと決めつけたのはジェーンの思い込み。
そして最大のショック。ジェーンが若い女性と見えたのも実は彼女の妄想で、現実には彼女は中年もしくは初老の女性であったことが分かる。前半に出てきた若い男が実は彼女の息子だということも明らかにされる。
この映画の中でここが一番面白かった。カリガリのおかげで現実逃避の幻想から正気に戻ったとき、鏡に映った自分の顔は年老いていた。この残酷な一瞬。ここだけでもこの映画を高く評価したくなる。
この映画って実は『サイコ』の裏返しなんじゃないだろうか。『サイコ』の主人公は自らの精神が生み出した別人格に乗っ取られ、本来の自分を喪失してしまうが、こちらのヒロインは自分をとり戻す。
もっとも、正気になって現実の自分を見出して、それで幸福かどうかは分かない。そもそも自分って何?私って誰?

『怪人カリガリ博士』というタイトル自体がネタバレのような気がする。ちなみに原題にもCARIGALIと入っている。
カリガリと云えば、ドイツ表現主義の映画『カリガリ博士』(1920年)に登場する人物なのだが、あの映画を観た人なら分かるように、謎の極悪人と見えたカリガリが実は精神病院の院長だったというのがオチだった。それまでの奇怪な話の展開は全て精神病院の患者である主人公の妄想だった、と。つまりこの映画は、それを見事に踏襲しているわけだ。もっとひねりを入れて来るかと思ったら、まんまなので驚いた。これだけあからさまなオマージュも珍しい。もっとも映像的には、『カリガリ博士』の表現主義的要素はこちらにはあまりない。歪んだドアが連なっているところくらいか。

ジェーンと息子が乗った自動車が精神病院から走り去っていくのを高い場所から眺めている精神病院の院長。その姿が妙に心に残るラストシーンだった。

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