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zoom RSS 「ランド 世界を支配した研究所」 私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

<<   作成日時 : 2011/10/30 23:00   >>

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ノンフィクション「ランド 世界を支配した研究所」SOLDIERS OF REASON THE RAND CORPORATION AND THE RISE OF THE AMERICAN EMPIRE 2008年 アメリカ アレックス・アベラ著 牧野洋訳 文藝春秋 2008年10月30日第1刷
2011年10月30日(日)読了

第二次世界大戦終結後の1946年3月1日、ランド研究所は誕生した。アメリカ空軍の肝入りで創られたランドは、米ソ冷戦下という状況下における戦争戦略を担う極めて重要な組織に成長していく。

非常に面白いノンフィクションである。私がランドという組織について全く無知だったのでなおさら面白かったと言えよう。もっとも無知とはいってもランドの業績については知らず知らずのうちに耳にしていたし、ランドに関わりのある人々の名も何人かは知っていたが、これもランドの仕業だったのか、この人もランドの人だったのかという再認識をした。

ランドの創設に尽力した一人にルメイ陸軍将軍がいる。日本人にとっては東京大空襲の指揮官として悪名高い人物だが、戦後にこういうことをやっていたのか、初めて知った。また彼が、スタンリー・キューブリック監督の映画「博士の異常な愛情」(1964年)に出て来る将軍のモデルだということもこの本で教えられた。

核兵器というものが登場してそれまでの戦争の概念がガラッと変わった。全人類を滅ぼしかねないこの兵器をいかに有益に活用し、アメリカに勝利をもたらし、敵国ソ連をやっつけるか、ランドの頭脳集団はその方策を考える。
この本の中で一番面白かったのはこのくだりである。冷戦下の核戦略についてのさまざまな考えが披露されていてまことにスリリングで面白い。

ランド研究所の軍事歴史家、バーナード・ブロディー。核兵器保有によって戦争を抑止する「核抑止」の概念を編み出した男。
従来は軍事体制が掲げる最大の目的は戦争に勝つことだった。これからは戦争を回避することが最大の目的になる。それ以外に有益な目的はほとんど見当たらない(61ページ)

核戦略家、アルバート・ウォルステッター。核攻撃における新しい概念「フェイルセーフ」(多重安全装置)を考案した。フェイル・セーフはこれまでにいくつかの局面で核の大惨事から世界を救ったかもしれない、といわれている。(119ページ)
著者は彼を重要視していてかなりのページを割いて彼について触れている。

軍事理論家、ハーマン・カーン。これまたキューブリックの「博士の異常な愛情」におけるドクター・ストレンジラブのモデル。カーンは彼の著作からあまりに多くをくすねたとしてキューブリックに使用料を要求し、拒絶される。
カーンの理論は、民間防衛に関するもの。ソ連が核攻撃してきてもアメリカ人が大規模な核シェルターに逃げ込めばかなりの数が助かる。国を再建できる!絶望的な人類絶滅論とは真逆なところが面白い。ストレンジラブのモデルになっただけあって本人もかなり奇矯な人物だったようだ。

ほかにもソ連に対する先制核攻撃論であるとか、「カウンターフォース(対兵力攻撃)」のような限定核戦争を行いどう勝利するか、などとにかく色々な戦略が紹介され、興味が尽きない。60年以上もこういったことを考え、研究してきた組織があることにとにかく驚く。日本にはこういう研究機関はあるのだろうか。

核戦略について以外にも面白い話はいっぱいあり、ランドが単に陸軍だけではなく歴代政治に深くかかわり、アメリカの世界戦略の裏面を支えてきたことが良く分かる。(「世界を支配した研究所」と言う邦題はちょっと大げさだが。)
一つの例としてソ連によるアフガニスタン侵攻の際にアフガニスタンゲリラへの支援をアメリカ政府に働きかけたのもウォルステッターらのランド関係者だった、というのもある。

仇敵ソ連が崩壊し、冷戦が終結したが、新たなるテロの時代が始まった。まだランドの役目は終わったわけではないようだが、著者はウォルステッターやカーンのような人物がいないことを指摘し、ランドの行く末に危惧を示す。
結局、どのような組織も人間があってこそだということか。

 




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